“紙”と“ウェブ” 風俗情報媒体をつくる男たちの熱量 ~『俺の旅』生駒 明×『kaku-butsu』岩清水 大河 編集長対談#1~

2017年08月24日

by赤星 アキラ赤星 アキラ編集者

――実体験をもとに男の本能に向き合う紙媒体『俺の旅』

覆面調査によるリアルな調査レポートを公開するウェブ媒体『kaku-butsu』。

Fenixzineでは今回、風俗業界のリアルを紙とウェブから発信し、異彩を放つ両媒体の編集長をお迎えし、風俗情報媒体のこれまでとこれからをテーマに、特別対談をお届けする。

第1回の今回は、両媒体のターゲットとコンセプト、特徴について、それぞれ紹介頂く。

紙面という限られた制約の中で、魂を込めて作る風俗情報誌『俺の旅』

赤星:Fenixzineの赤星です。早速ですが対談を始めさせていただきます。最初に媒体紹介ということで、それぞれの媒体のターゲット、コンセプト、特徴などを簡単に教えてください

生駒:『俺の旅』は実体験をもとにした風俗情報誌です。風俗で遊ぶ人にとっての理想の雑誌を目指しているんですね。遊ぶときに役立ち、便利で使い勝手がいい。なおかつ、読み物としても面白いというコンセプトです。

赤星:ターゲットとしては、どんなユーザーをイメージしていますか?

生駒:風俗が好きでたまらないコアなファンをターゲットにしています。年齢層は30代後半から、40代、50代、60代。最近は高齢層の方が多いですね。

赤星:やっぱり紙媒体の性質もあるんですかね。ウェブの媒体がどんどん出てきている中で、紙媒体のよさを教えてください。

生駒:読者層の高齢化は紙媒体という点が間違いなく関係しています。紙のよさは情報がぎゅっと詰まっているところ。紙面の制約があるからいいんですよ。厳選された情報ということですね。

赤星:2017年の今年は、編集長に就任されて10周年ですね。『俺の旅』が他媒体やウェブに負けないという点を教えてください。

生駒:一言でいうと「魂」なんですね。愛といってもいいし、スピリッツ。ソウルといってもいい。なかなか言葉で表せないんですね、これは。大火事になりそう。

岩清水:その熱は普通に読者として読んでいても伝わりますよ! 僕にはとても伝わっています。

赤星:やっぱり生駒さんがひとりのユーザーとして風俗を本当に愛していて、理想の雑誌を作っているという。

生駒:そうですね。読み手にとって一番いいものを作ろうと。自分が読者だったらどういうものを読みたいのか、あったらいいなを現実化したんですね。うちの雑誌は、一般の風俗の好きな人を見ています。そこが長く続いている原因だと思いますね。

「いいものは栄えて、悪いものは滅びる」が『kaku-butsu』の精神


赤星:なるほどですね。ありがとうございます。では、『kaku-butsu』の媒体紹介というところで、まず、ターゲットとコンセプトなどをお話しいただけますか。

岩清水:ターゲットはどちらかというと初心者に向けています。コアなファンの方も多いんですけど、我々としてはやっぱり風俗初心者の方に入ってもらいたいんです。

風俗遊びって、コアな方はネットの口コミ掲示板、雑誌も含めいろんな方法で情報収集をしていると思うんですよ。

だけど、初心者の人ってうっかり何も調べずに入ってしまって、あまり楽しむことができない子が来るというパターンが多いと思うんです。

それで風俗嫌いになっちゃうという、僕もそのパターンでした(笑)。ちゃんと『俺の旅』とか読んでいる人だったら、そんなところに行かなかっただろうに……(笑)。

いまだにぼったくりの店は存在するわけで、そういう点を正していく目的で『kaku-butsu』は生まれました。

『kaku-butsu』の精神は「いいものは栄えて、悪いものは滅びる」です。いいお店はちゃんといいと書いて、悪いお店は悪いと書く。これがなかなかできないですよね。

『kaku-butsu』がこだわる調査レポートの裏側

赤星:『kaku-butsu』は最近有料会員を集めていますが、そこもビギナーの方が多いんですか?

岩清水:そこはコアな方が多いですね。うちのプレミアム会員は1カ月1万円で、それなりに高額なサービスなんです。

だけど、たとえば、3万円で家電を買おうと思ったら吟味しますよね。3万円のカメラを買うのに、適当にお店で選んだりはしないですよね。

でも風俗だと、下調べもせずに利用してお目当ての子とぜんぜん違う子が来て3万円損したことになるなんて、よくある話ですよね。そういったリスクを減らせるなら1万円を払う価値はある、というニーズはたくさんあるんです。

赤星:通常の風俗情報サイトと比較すると、きちんとした基準に則ってガチで評価をして、詳細なレポートを上げていくという新しい形態が『kaku-butsu』だと思います。なぜそういう形態になったんですか?

岩清水:普通の口コミサイトも参考になると思うんですけど、サクラもいたりで、どこまで信用できるのか。そこは未知数ですよね。

でも、『kaku-butsu』のレポートはすべてしっかりと講習をつんだ調査団員たちが執筆しています。

調査団員になるとプレイ代とホテル代、1回3万円ぐらいですね、それが無料なんです。毎週のように調査している人もいるので、年間にすると100万円から200万円ぐらい、風俗代で払うんですね。

レポートは書くけど風俗に行きまくれるということで、男の夢ですよね。おかげさまでものすごいたくさんの応募をいただいています。

採用基準は厳選してコアな人を採っています。ある程度、風俗歴があっていろいろ経験してきた方に評価してもらいたいんです。

倍率が大体100倍ぐらいで、8時間の講習を必ず受けてもらいます。

赤星:かなりみっちり育成をされるんですね。お店が気にしていると思うのは、本当にフェアに評価しているのかの基準だと思うんです。

岩清水:ここはもう本当にフェアにやっています。たまに、お店から評価を変えてほしいと要望がきますが、全部お断りしています。

評価基準についてはまだまだ議論中です。喫煙やリストカットは減点にするのかどうかなど、難しいデリケートな点もありますね。

リストカットがいっぱいあったら減点になると、女の子が傷ついちゃうとか。「リストカットあります」という情報を書くのか。でも、お客さんは書いてほしい。そういう点も含めて、どう表現するか。そこはかなり細かくやっています。

そういった部分で議論はしますが、プレイ内容についてのレビューは絶対に変えません。そこは徹底していますね。

赤星:調査対象のお店はどのように選んでいるんですか? あと、お店がお金を払って高いスコアのレポート上げているという疑惑についてクリアにしたいですね。

岩清水:最初は本当にこっちがランダムに調査対象のお店を決めていました。もちろん、お店から一切お金はもらわずに。初期はとにかく調査しまくるスタンスだったから、お店ともケンカが絶えなかった(笑)。

その方法を続けていると、いいお店はいいとわかるし、悪いお店は悪いということがわかるんです。そのスタンスが好きだった人もいたとは思いますが、悪いお店のレポートというのは面白いけれど、お客さんは足を運ばないんですよね。普通に考えれば、いいお店のレポートを知りたいですよね、皆さん。

いいお店を探すには我々が当てずっぽうに調査していると精度が上がらないんです。だから、「お店からおすすめの女の子を教えてもらおう」ということになったんですね。

そこから、お店から調査依頼ができるという設計がはじまりました。調査依頼だからいい点数が出るとは限りません。けれども、お店として悪い点数が出たら、そのレポートを基に、女の子を教育してあげた方がいいじゃないですか。

赤星:たとえば、お店から5本調査依頼があって4本点数が低かったとしたら、掲載されるのはいい点数のレポートになるんですか?

岩清水:そうなります。そこをヤラセと思われる方もいるかもしれませんが、我々としては悪い女の子を紹介したいのではなく「どの女の子のサービスがいいのか?」ということを伝えることが目的なので。

赤星:お店から調査依頼がなくても、『kaku-butsu』編集部でこの店を調査してみよう、というケースは今もあるんですか?

岩清水:あります。『kaku-butsu』の会員の人たちと会員総会、いわゆる株主総会みたいなことをやっているんです。

その会員さんからの調査要望は引き受けています。会員総会で決まったことは、我々は変えられないので、純粋に会員が知りたいお店があればそこは調査します。

『kaku-butsu』の名の由来は、古代中国の「格物致知」から


赤星:では、『俺の旅』の由来と、『kaku-butsu』というサービス名の由来を一言ずついただけますか。

生駒:私は2代目編集長なんですよ。『俺の旅』という名前は前編集長がつけました。ちなみに『俺の旅』は『俺のイタリアン』とかが流行る前からありますから(笑)。

富山では遠い国のことを「旅」というんですね。「旅の人」というのは、遠い国の人ということです。

日本全国いろんな風俗街の情報を伝えたいんです。そこには本当にたくさんの魅力が詰まっていますから。

赤星:年代層の話もありましたけど、風俗が好きで、普通のおじちゃんが読んでいるようなイメージですね。

生駒:やっぱり読みやすくて、親近感があって。庶民の雑誌、大衆の雑誌です。普通の人が普通に読む本ですね。普通のどこにでもいる人。敷居が低い本ですね。

赤星:一方の『kaku-butsu』は「格物致知」という言葉が由来なんですよね。解説をお願いします。

岩清水:命名したのは高橋がなり(元SOD代表)です。

赤星:王陽明の「知行合一(※1)」の解説があるんですけど、「知行合一」は学校でも習いますよね。「格物致知(※2)」が出てくるのがすごいなと。

岩清水:『kaku-butsu』とは別に、まず『致知』という雑誌はあるんですよね。社会派の雑誌です。『致知』を作っている方々に申しわけないですけど(笑)。当時は、高橋さんと毎週土曜日に、8時間とか10時間とか会議していたんですよね。そのときに高橋さんが「この名前にしようと思うんだ」と言って、『kaku-butsu』という言葉が出てきました。

(※1)本当の知は実践を伴うもの、すなわち知識と行為は一体であるということ。
(※2)物事の道理や本質を追求して、知識や学問を深めること。読みは「かくぶつちち」。

――風俗情報媒体として、2人の編集長は熱意を持って、読者やユーザーに有益な情報を発信し続けている。ターゲットや表現の方法は違えど、その熱量は変わることがない。

次回は、『俺の旅』生駒編集長に、高度成長期から現代まで、時代による風俗の変遷をレクチャーしてもらう。

生駒明

生駒 明

1973年生まれ。新潟大学人文学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、ミリオン出版入社。編集長として10年以上『俺の旅』をトップレベルの情報誌として世に出し続ける。近年は業界活動も積極化させており、2016年3月には「セックスワークサミット」にも登壇した。
編集長ブログを連日更新中 『俺の旅web』こちらも是非。

岩清水

岩清水 大河

1978年生まれ。毎日、首都圏の風俗店を巡り、記者が厳選した新人情報などをお届けしている「日刊kaku-butsuニュース」をまとめている。もともと風俗ノンユーザーであったが、今ではkaku-butsuの会員と一緒に風俗店に行く企画を主催するほどのヘビーユーザーに。SODでは「ブラファイル」や「手マン養成ギプス」を発明。『kaku-butsu』

執筆者プロフィール

赤星 アキラ

赤星 アキラ編集者記事一覧

元証券マン。リーマンショックを経て、ハタラクとジンセイをひたすら考え続ける。2015年春、縁あって風俗業界に転じ、FENIXプロジェクトを企画。Fenixzineを風俗でハタラク男性のプラットフォームにしていきたい。好きな音楽はV2。福岡市出身。

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