全国展開を目指す風俗店経営者のビジョン「人と組織と業界」 ~『熟年カップル』代表 伊藤氏#3~

2017年09月28日

by赤坂 五郎赤坂 五郎編集者

待機中の女性と直接電話ができる“生電話”を引っ提げて、全国展開を目指す『熟年カップル』代表、伊藤氏。

連載最後となる本稿では、同氏がプロデューサー、経営者という立場から見た「人」「組織」「風俗業界」について語っていただく。

かつて大手グループで頂に立ち、独立によって奈落に堕ちた伊藤氏の言葉から、風俗業界で働くヒントと気付きを得ていただければ幸いである。

志を同じくするエンジニアの存在と信頼関係

――「めっちゃ悩んで生まれる」伊藤氏のアイディアは、店舗展開やサービスだけでなく、お店のオフィシャルサイトにも随所に生かされている。しかし、それを具現化できるのは、片腕と言うべき信頼できるエンジニアがいるからだ。

細かいことは嫌いじゃないので、それこそ、「ここはこの色、この字、この位置じゃないと駄目ダメ。

見にくい、押しにくい」とか、ずっとエンジニアと話しながら、『熟年カップル』のオフィシャルサイトを作ってますね。開設当初と比べると、だいぶ変わりました。

自分がお客さんの立場なら、ホームページを見て「Aちゃんをお願いします」と電話したら、受付から「申し訳ありません。○時からです。Bちゃんどうですか?」と言われ、またホームページ見て電話するって、すごいストレスなんですよね。

それに、「ダミーがない」「ごまかしがない」ということをお客さんに一番アピールしたいので、オフィシャルサイトでは、女の子の勤務時間と予約ができる時間帯がクリアになるよう、エンジニアにお願いして作ってもらいました。

彼が入社してくれたのは、知人からの紹介でたまたまですが、今となっては僕にとって一番必要な「人財」です。

こればっかりは、「これをやりたいから、こういう人が欲しい」と思っても、なかなか出会えるものではないですよね。

何かアイディアを思いついても僕は形にできないですし、いかに早くやれるかが重要なので、彼の存在は、めちゃくちゃ大事ですし、重宝しています。

外部スタッフにお願いするということも考えられるでしょうが、1個直していくらみたない関係では、とてもじゃないですけど、やっていられませんよ。

彼は僕と同じように、「どこかにあるものをまねして」というよりも、「誰もやったことがないことをやって結果が出る仕事」に面白味を感じてくれているんじゃないかな。

だから、お互いに気が合いますし、信頼関係を築けていると思うんですよね。

いい人材を集めるために、高収入を訴える時代ではない

――大手風俗グループで役員を経験し、独立して6年。伊藤氏は、その長年の採用面接で、求職者の求めるものに変化を感じると言う。

「風俗だから高収入」「月収100万円も稼げる」とうたって人を採用するというのは、今の時代に合っていないと感じるんです。

中には、そういうのを求めて面接に来る人もいますけど、数としては少ないです。「そんなに稼ぎたいなら、サポートしてあげるので独立したら?」と言ってしまいますね。

それよりも週休2日で残業があまりない、きちんと手当も社会保険もあって、楽しく風俗の仕事をしたいという人を集める方向にもっていかないと、組織としてうまくいかない。たぶん、時代の潮目かなと思います。

運営を任せる店長には歩合を付けますが、高収入と引き換えに消耗してしまい、辞められてしまっては強いお店は作れません。

だから、店舗スタッフと同様に、長く続けられるよう、「休みを増やす」「残業がない」といったことや「福利厚生」を重視しています。そうしないと、今の時代、本当の意味でのいい人材というのは集まらないと思うんです。

大きな組織よりも小さな組織で盛り上げたほうがうまくいく

――『熟年カップル』の全国展開を画策する伊藤氏。その実現のために目指す組織作りは、かつて属していた大手風俗グループとはまったく違う。それは、組織の末端からトップまでを経験したからこその反面教師なのかもしれない。

大きいピラピッドを作って本部が統括する、各店は本部にいちいちお伺いを立てて、指示されるなんてことになると、多分つまらないと思う層が出てくるはずなんですよ。

それよりも都道府県や市の単位で小さいピラミッドを何個も作っていく。トップに店長、その下に数人のスタッフがいるという規模のほうが面白いだろうし、うまくいくと思います。実際に電話に出て、お店を回すスタッフたちが、チームワークを考え、意見を出し合い盛り上がっていく。そうして店を作っていく環境が大事だと思うんですよね。

経営する側からすると、楽とは言えないし、むしろ大変です(笑)。でも、大きなピラミッドを作ると、各店の声が聞こえなくなるだろうし、曲がって伝わってしまうこともあるだろうから、その土地、その土地の責任者と僕がダイレクトで話せる環境を作っていこうと考えています。

今後の風俗業界に望むこと、あるべき姿

――伊藤氏は、十五年以上の風俗業界での経験から、業界をどう見ているのだろうか。

業界内で一時期、価格破壊がありましたよね。今もその状況は続いているんでしょうけど、あまり行き過ぎるのは誰にとっても良くないと思ってます。単純に安いだけだと、やっぱり続かないですよね。コンセプト作りにちゃんと知恵を絞って、相応の料金でやっていかないといけないと思います。

業界全体としては、正直に商売をしているところ、まじめなところしか残っていかないようになってほしいですね。例えば、営業については、これまでどおり公安局から届出確認書を発行してもらえばできるけど、広告については、媒体側でしっかり規定を設けて事前調査をする。その規定をクリアしないと広告を載せられないというふうになってほしいです。

業界団体で風俗の健全化をしていこうという動きがありますが、何をもって健全なのかを明確にしていくことも必要でしょう。

女の子の写真の加工についてもそうです。難しい意見になりますが、業界全体があまりごまかさずにやれるようになってほしいですね。

常にワクワク感を抱いて、やりがいを感じてほしい


――最後に、経営者の立場から、風俗業界で思い悩んでいるスタッフ、これから働こうと考えている方にメッセージを頂いた。

業界経験者の方が転職するのは、環境が組織化し過ぎて自分の意見が通らなくなって、モチベーションを見い出せないからなんでしょうね。人間的なトラブルもあるでしょうし、十年、十五年ぐらいの組織だと目新しいことがそれほどなくてワクワク感がなくなってしまいますから。

僕自身もワクワク感がなくなってしまったひとりです。長いこと続けて、ある程度形になって、次の何かがなくて、つまらなくなってしまった。だから、経営の立場にある者は、どれだけそういう思いやビジョンをもち続けていられるかが、今後の人材育成やお店作りに重要だと思っています。

未経験の方、異業種から転職する方は、人づてに聞いても風俗業界のことをよくわからないでしょうね。「今の職業よりは待遇がちょっといいのかな」くらいのぼんやりしたイメージだけで。実際に風俗店で働いてみて、スイッチが入る子は伸びますけど、ぼんやりしたまま面白味を見い出せない方は辞めていきますね。

これからスタッフとして風俗業界を目指すという方には、大きい会社のひとコマというよりも、必要な人材として活躍してほしいし、それにやりがいを感じてほしいですね。自分がいないとこの店は回らないくらいの気負いがあれば、きっとやりがいを見い出せると思います。

――大手グループで役員まで昇り詰めたエピソードを伊藤氏に伺うと、サラッと「初期メンバーだったので誰を抜かしたというよりも、やり続けていたら勝手になった」と返された。

いや、並々ならぬ苦労があったはずだ。だからこそ、独立後の失敗と挫折を乗り越えてきた。常に新しいアイディアを画策するその姿勢は、実にクレバーであり、ストイックである。

伊藤氏の目指す頂は、これからだ!

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失敗と挫折がスピード経営の教訓となった ~『熟年カップル』代表 伊藤氏#1~

伊藤

1982年生まれ。風俗業界歴15年。全国規模のデリヘルグループにて役員まで昇り詰め、独立。名古屋を中心に数々の風俗店をプロデュースし、全国展開を画策中。かつては、小中高と野球に明け暮れたスポーツマン。今も体を動かすのが好きでトライアスロンに参加するほど。そのトレーニングの追い込みようは、本人曰く「ちょっと変態」。

執筆者プロフィール

赤坂 五郎

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3人姉弟の長男として生まれたが、なぜか五郎と命名される。生まれながらにして、人生に疑問を抱きつつ、「all that jazz」に生きたい40代。落ち込んだときは、映画『ミニオンズ』に涙して復活。好きなキャラクターは、顔の長いケビン。

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