「低価格なコスパでもハズレがあってはいけない」~ハピネスグループ・代表 小山健二の普遍性#1

2018年02月19日

by藤原 リョウコ藤原 リョウコ編集者

――コストパフォーマンスの高さと質の高いキャストで人気を博し、全国に計9店舗を展開するソープランドの大手『ハピネスグループ』。その代表取締役を務めるのが今回の主役・小山健二氏(48)だ。

大学卒業後にレンタルビデオチェーン店の店長として10年間勤務。退職後は別のヘルス店で店長を務めてノウハウをため、縁あって『ハピネスグループ』の前身となるソープランド店舗で一般社員として、新規店舗立ち上げに携わった。

2013年『ハピネスグループ』の代表へと就任した小山氏は、インタビュー中に何度も“普通の会社”と繰り返した。

だが、そこには風俗業界に捉われることなく、サービス業として必要な感性があるからこそ気づけた、経営方針やスタッフ育成の秘訣が詰まっていた。

最初から一生骨を埋める覚悟のあるやつなんて風俗業界に来ない


レンタルビデオ店を辞めた後に入社したヘルス店では、次の就職の繋ぎで入ったのでいつ辞めようかと思っていました。仕事しながら次の仕事探すって失礼な話ですけどね(笑)。

でも、接客や広報など『普通の仕事と一緒』という感覚が芽生えた瞬間に、辞める理由が無くなったんです。自分もそういう感覚だったから、来る人がすぐ辞めようっていう感覚で入ってくることは重々承知です。

最初からこの業界で一生骨をうずめようなんて人は入ってこない業態ですから。

――入社前はすぐ転職しようと考えていた小山氏。しかし、お客さんが笑顔になって帰ってくれるのはビデオ店も風俗店も同じと気づいたときに、転職を考えなくなったという。

ヘルス店で9年間勤めた小山氏は、縁あって『ハピネスグループ』の前身となるソープランドで新規出店に関わり、才覚を買われて2013年に代表となる。

裸の女が職場をウロウロしていると思われる世間からの誤解

代表になってからはもちろん仕事内容は変わっていますけど、気持ち的には一般社員の時と変わってないです。だからスタッフからすると厄介でしょうけど、今でも店舗へ行ったらスタッフと同じ仕事もしますし、なんでも自分で行っています。

世間から誤解されていますけど、この業界って我々が裸になるわけでもないし、裸の女性を見ることもない。常に半裸の女性が周りでウロウロしているなんてことはないんです。

部下に関しては、気軽に辞めようって気持ちで入ってくる人が多い。でも、一回入ってきたなら、せっかくだから私のところで面倒見てやりたいんですよね。居酒屋でも、風俗でも、きつくない仕事なんてないのに、『風俗だから』っていうのをなかなか切り離せない人が多いような気がします。

うちの会社はしっかりしてるって言われてるので、風俗だからちゃらんぽらんにやりたいって人が来ちゃった場合はもう話が通じなくなっちゃうんですよ。一日座ってテレビ観ながら働きたいって思ってる人には向いてない。最近そういう変な人は少なくなってきましたけどね。

――『普通の会社にしたい』。小山氏の想いは当初から順風満帆だったわけではなく、自身が経験した当時の過酷な労働環境から、スーツや髪形などまずは形からでもちゃんとすることで、次第に整備されていったという。

では、数あるソープランドの中から、どのように『ハピネスグループ』がお客様に支持されていくようになったのだろうか。

ヘルスからヒントを得てソープへ。行政改革がさらなる追い風に


2009年、池袋の店舗を譲り受けて新規事業として始まった『ハピネスグループ』なんですけど、そもそも最初はソープランドって何?っていう状態でした。

今でもそうなんですけどソープ業界って長時間・高価格帯でやっていたところが多いですよね。80年代から短時間・低価格帯のファッションヘルスが流行り始めていて、私自身ヘルス店をずっとやっていましたので、だったら短時間・低価格帯にしたら勝負できるんじゃないかって考えたんです。

うちでは都内で50分コースというのをメインに展開しているんですけど、そこでソープなのに1万円台で遊べるというコストパフォーマンスの高さがウリです。ただ、50分で1万円台だったら結構ひどいのが出てくるっていうイメージを変えて、ハズレがないのを目標にしているんです。

お店の女性の採用基準に関しては、見た目もそうですけど性格が大事。今までどこの風俗店で働いていたかは正直どうでもよくて、接客とかサービス業に向いてるかが非常に重要でそこに着目しています。

これは今も答えはなくて感覚にはなるんですけど、自分がお客さんだったらこのキャストにお金払えるのかっていう感覚ですよね。人それぞれ好みがあるから大当たり、当たりの差があるにしても、ハズレがあっちゃいけない。

短時間・低価格帯っていうコースはうちだけじゃなくて他のグループさんでもやられてるところもあるんだけど、うちはキャストの採用基準の線引きというのはさせていただいています。なので、質とコスパ、手軽さがお客様から支持していただけている理由かなと思っています。

それと当時、背中を押してくれたのが石原慎太郎元都知事の一連の動きで、当時、いわゆる無許可と言われていた店舗型ヘルスがすべて根絶されたんです。

昔は町を歩けばヘルスがあったけど、今は見当たらなくなった。そうすると遊び方がよく分からない人たちには、立地もよくて明朗会計で遊べるうちみたいな店舗型はわかりやすく、一つのメリットがあると思います。だから別に私たちの努力ではなく、時代にマッチしただけなんです。

――時代の流れのおかげと語る小山氏。だが、新規のソープランド店立ち上げ当初は、キャストをめぐり相当な苦労があったそうだ。

キャストもスタッフも口コミを重視

前進のソープラランドから店舗を譲り受けたときは、40~50代の御婦人がメインの店だったんです。「おばさんを悪」とみなすわけじゃないんですけど、私はヘルスから入ってるので感覚的に若いほうがいいんじゃないかと思ったんです。

キャストの入れ替えは簡単じゃなくて、1年半くらいかかりました。それこそ20年とか自分の生活をかけて働いてた人たちに辞めてもらわなきゃいけない。そこが一番気を遣いましたね。本当にデリケートな部分だったので、長く働いていた方には他のお店を一緒に探したりもしました。

集客の答えは良いキャストを集めることしかないんですよ。いかに在籍数を増やせるか。もうこの業界で16年やっていますけど、大事なことは結局口コミしかないと思っています。

「あのお店は稼げるよ」とかはもちろんなんですけど、「あそこは居心地がいい」とか、「働きやすい」とか。どんな宣伝広告より効果がありますよ(笑)。

待機室ではキャスト同士のコミュニティがあるし、非があって退店になった方や面接で不採用だった方にも好印象を残すっていうところが、在籍数を増やす上では大事ですね。

それがあったから男性スタッフに対しても同じだと思うんですよね。合う、合わないはどうしてもあるので。

辞めてしまった社員にしても会社の印象が大事。評判が落ちてしまうと取返しがつかなかったり、いくら素晴らしい求人広告があったとしてもそれを邪魔してしまうことになるので、キャストやスタッフへの対応は重要視していますね。

――低価格とコストパフォーマンス、口コミで広がる会社の好印象で拡大を続けた『ハピネスグループ』。第二回では、大手グループへと成長を続ける、独自のスタッフ育成方法に迫る。
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「スタッフ育成は企業理念という絶対的なルールだけ」~ハピネスグループ・代表 小山健二の普遍性#2

小山健二(こやま けんじ)

東京都出身。風俗業界歴は16年。レンタルビデオチェーン店の店長10年を経て、ヘルス店で9年間店長を務め、『ハピネスグループ』へ。2013年よりグループ代表に就任。好きな言葉は『率先垂範』。尊敬する人物はジャッキー・チェン。一時期は映画館で年間230本程を見るほどの映画通。好きな映画は『パルプフィクション』。

執筆者プロフィール

藤原 リョウコ

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元ゲーム雑誌編集者。生粋のオタク気質を活かしてエンタメ系ライターとして活動する中、趣味で日本語ラップにどハマり。HIPHOP精神あふれる風俗業界で働く男たちの姿を知り、FENIXJOB編集部へ。趣味はスニーカー集めとBリーグ観戦。

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