「スタッフ育成は企業理念という絶対的なルールだけ」~ハピネスグループ・代表 小山健二の普遍性#2

2018年02月26日

by藤原 リョウコ藤原 リョウコ編集者

――キャストやスタッフの口コミを誰よりも敏感に察し、『ハピネスグループ』に携わるすべての人たちに働きやすい会社経営を目指す小山氏。100名を超える巨大企業へと成長したグループでは、どのように社員教育を行っているのだろうか。

第二回では、風俗業界ではめずらしい独自の企業理念を紐解く。

企業理念という絶対的なルールに沿えばよい

企業理念というものがありまして……。風俗っぽくない話をしていいですか?

当たり前ですけど、仕事を教える時って人によって言い方や教え方が違ったりしますよね。そうすると、伝わり方が違うから受け手側も認識が変わってくるじゃないですか。

昔は東京だけだったのが今は福岡、茨城と100人近い社員数になっている。その時にみんなが分かる統一の指針が必要になって、それが一人の上司というわけにはいかない。

企業理念がないとどっちを向いていいのか分からないですよね。指針っていうのは社員が向く方向を指し示すコンパスみたいなものって言われますけど、それを作ろうってなったんです。

スタッフの教え方としては、例えば、「これはここに置いて」とか細かい話はするかもしれませんけど、それ以外はすごくざっくりしてて(基本的に)企業理念に沿えばいいよ、となっています。

例えば、なんでこれをしたのって注意した時に、『企業理念に沿ってやりました』って言われたら、そこで否定は出来ないなと。一番分かりやすいのは企業理念という絶対的なルールがあること。もちろん、あまりに的外れな場合は注意しますよ(笑)。

どうすれば『お客様が笑顔』になるかは、その人の立場になれっていうことが言いたいんです。関わるすべての人っていうのは、お客さん、キャストさん、スタッフ、例えば自販機があればそこにジュースを納品している業者の方も含めて『ハピネスグループ』を構成してると考えています。

関わるすべての人にありがとうと思えれば、結果的にうちのグループが伸びていくでしょう、ということを最初に言いたかったんです。

社訓を暗唱できれば1万円昇給!

仕事に対する心構えも見ますけど、企業理念とは別に社訓があってそれを覚えると月1万円昇給します(笑)。

ただ、それはあくまでもニンジン。きっかけ作りであって、それは覚えて欲しいからわざわざそんなことをしてるんですよね。まずは仕事をする上で同じ方向を向いてもらう。新入社員で1万円昇給するのって、嬉しいじゃないですか。

覚えて終わりではもちろん意味が無いので社訓を暗唱出来た人には、暗唱テストというのを毎月やってます。社員教育で言うと本当にそれだけですね。社訓に沿って動きなさいと。

――社訓の内容は残念ながら非公開。企業理念と社訓がある会社、ともすれば堅苦しいと思ってしまう人もいるかもしれないが、社訓の内容こそ『ハピネスグループ』の社員を育てる強みだと感じた。

そこで、企業理念とは別にどうして社訓を作る考えにいたったのかを尋ねた。

自分も転職してきたからこそ他業種のよさがわかる

社訓は僕だけで考えたわけじゃなくて、これはもっと大勢の人が関わってます。今うちはホールディングみたいな感じでやってるので、実際はグループじゃないんですけど、飲食やアパレル、建築関係とかいろいろな事業を展開しているんですね。そういうのをやってる社長連中が集まって作ったので、作る時は何日もかかりましたね。

結局これを読んでいただくと、悟りの境地みたいな話で風俗と全然関係ないんですよ。だから風俗だからっていうことをまずは外すことが大事だと考えています。

もちろんキャストのサービスにおいては風俗なんですけど、スタッフがする仕事において風俗だからってことは多分一つも無いんじゃないかなって。

それは私がたまたま他業種からの転職だったからすんなりくるんですよね。逆に風俗だからって、これでいいの? ってことの方が多かったんです。

だから、普通にしていこうっていうと。大それたことはしてないんですけどね。

――スタッフ教育という、企業における永遠の課題。しかし、『ハピネスグループ』では、企業理念と社訓という絶対的なルールをあえて設定することで、さらなる拡大を目指す。

社会人になってから26年間無遅刻無欠勤が唯一の自慢です


2018年3月に福岡にソープランド2店舗目を展開します。実はすでに福岡にもう1店舗別業態の店舗型で出しているんですよ。

その店舗の出店の時は現場のスタッフを押しのけて一日中受付とかしてました(笑)。どこでもそうなんですけど、やってみないと、わからないじゃないですか。自分がやってみないと人に教えられないから、しばらく2ヶ月くらい土日は私が朝から晩まで絶対受付やるって言って。

感じが分かれば、今福岡にいるスタッフに電話で「どうなの?」とか言えるんですけど、知らないくせに言われるのって嫌だろうし、こっちも想像だけで言えないじゃないですか。

吉原に出店した時も、半年間は毎日朝必ず行って、朝一のお客さんは全部受付して。吉原が初めてだったので車の送迎というのがどんなのか分からなかったので、それも180日間皆勤でやりましたよ(笑)。

これは前職からで唯一の自慢なんですけど、私は社会人になってから26年間、無遅刻無欠勤なんです。自分は器用でもないですし、いろんなことが上手じゃない。だから人よりも時間がかかる。なんですけど、英語で言うとすごく格好良いんですけど、そこにいることが大事だと思ってて。『Be there』ですね。

だから遅刻もしないし休みもしないんですよ、私は必ず“そこにいる”。それで信用を得るしかないって思ってるんです。

特別なことが出来ないけど、絶対いる。自分が人に対して遅刻するなとか休むなというからには自分がやったらアウトなので。偉そうなことは言わないけど、自分がやって見本を見せています。

―福岡店のエピソードを伺ったとき、小山氏が接客をしてるところを直に見たスタッフは、言葉以外で教わる部分がすごく多くて、自分との差に気付かされるという。

対面接客が好きなだけという小山氏だが、サービス業の真髄を知り尽くして代表にまで上り詰めた秘訣がそこにあるのかもしれない。第三弾では、現在の風俗業界が小山氏の目にはどのように映っているのかを交えながら、女性スタッフの活躍にかける思いや今後の経営方針を伺う。
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「成功体験に溺れず、風俗という感覚を捨てて柔軟な頭を持つこと」~ハピネスグループ・代表 小山健二の普遍性#3

小山健二(こやま けんじ)

東京都出身。風俗業界歴は16年。レンタルビデオチェーン店の店長10年を経て、ヘルス店で9年間店長を務め、『ハピネスグループ』へ。2013年よりグループ代表に就任。好きな言葉は『率先垂範』。尊敬する人物はジャッキー・チェン。一時期は映画館で年間230本程を見るほどの映画通。好きな映画は『パルプフィクション』。

執筆者プロフィール

藤原 リョウコ

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元ゲーム雑誌編集者。生粋のオタク気質を活かしてエンタメ系ライターとして活動する中、趣味で日本語ラップにどハマり。HIPHOP精神あふれる風俗業界で働く男たちの姿を知り、FENIXJOB編集部へ。趣味はスニーカー集めとBリーグ観戦。

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