「成功体験に溺れず、風俗という感覚を捨てて柔軟な頭を持つこと」~ハピネスグループ・代表 小山健二の普遍性#3

2018年03月05日

by藤原 リョウコ藤原 リョウコ編集者

――『ハピネスグループ』としてさらなる成長を目指す小山氏。風俗業界では異例ともいえる、独自の「新店舗」構想を温めているという。

新着想に至った経緯と確信とは? 時代と共に変化する風俗業界へ身を投じた小山氏に、今後の事業方針を伺う。

ハピネスグループが毎年店舗拡大できる理由


おかげさまでハピネスグループは毎年新規店舗を出店し続けられています。毎年新規出店できている理由は、社員がいてその人達の生活を預かってるわけだから、うちのグループが安定しなきゃいけない。

仮に何かがあって1店舗減った場合に、じゃあそこの売上やそこで働いてるスタッフはどうするかってなるじゃないですか。店舗展開をなるべくしておいてリスクヘッジしたいんですよね。

もちろん無いようにはしてますけど、1店舗何かがあった時にスタッフやキャストの方々を露頭に迷わせないよう店舗を増やしていかないといけないと思ったんです。

例えばコンプライアンスなんかもそうで、同じ風俗業界でもちゃんとしてるところは徹底していると思います。うちはグループ内の規則のほうが法律より1段階も2段階も厳しくしているんです。法律に乗っ取っているだけでは不十分。絶対重箱の隅をつつかれたくないのでそこに重きを置いていますね。

記事的には何で毎年出店していけるくらい順調なのかということを聞きたいんでしょうけど、順調とかじゃなくて、ただただ必死なんですよ(笑)。

新しいソープランドの提案。女性スタッフだけのお店をオープンしたい


お客さん目線に立った時に、ソープランドに来る人って接客の質を求めて来る人もいるじゃないですか。これだけお店がある中で結局は接客じゃないかというところは今改めて思っていて、そこでソープでキャリアを積んだ、女性講習員をアドバイザリーに置こうとなったんです。

本社ではほぼ毎週講習員会議をやってます。今日は各店舗で2018年の50分コースはこうしていこう、みたいなすり合わせをして、常に情報共有とかをしています。

未経験の男性にそれを教えて考えてもらおうとすると年単位でかかるんですよ(笑)。だとしたら、キャスト経験のある女性スタッフの方が教育コストを抑えられる。

なので、高いキャストマネージメントをお願い出来るという点で、男性スタッフを雇うより絶対に良い店が出来るだろうと考えています。

その中ではまったく異業種で働いていて、もうちょっとお金が欲しいという一般企業のOLさんもいるのです。つまり、女性までスタッフに考えると、人口の半分が女性なわけだから、分母が倍に広がるわけですよ。

産休を取って今復職してきてる副店長も『ハピネスグループ』にはいますから。その人はキャストをやっていて社員になった方です。

防犯の部分をクリアー出来る環境に整えて、女性スタッフだけの店というのを考えているんです。話題性もあるでしょうし、お客さんからしても興味がある面白い店になるかなっていう。女性スタッフが集まり次第やりたいです。

流行には逆行し、面倒くさいことをやる心掛け

サービス業としては目立ってなんぼですけど、出る杭は打たれる業界でもありますから(笑)。あまり目立ったことをしたくないなという本音はあります。

業界全体を見ると多様化しすぎて、一旦落ち着いてきたかなと捉えています。今後は、結局サービスや接客がしっかりしているところにお客さんが集まってくるでしょう。

風俗のお店の商品というのはキャストのサービスですから、結局は良いキャストを揃えてしっかりサービスを提供するということしかない。

素人感みたいなのが流行って久しいですし、良くも悪くもプロのサービスをしなくていいよ、みたいな店が増えてますよね。うちはそこに逆行しようと思ってます。プロの技というよりは、ちゃんとした接客ですね。

あとは他がやってない、面倒くさいことをやろうって心掛けています。講習もそうかもしれませんし、ヘアメイクを常駐させてるんですよ。キャストにヘアメイクをさせて接客に行ってもらう。

それはお金もかかりますし面倒と言えば面倒なんですけど、そういう他所がやってない面倒くさいことをやっていくことが、3年後、5年後に今以上が保てる絶対条件なのかなと思っています。

格好つけてるわけじゃないんですけど、今の売上が1年後にあるというのは思えないんです。たまたまがずっと6、7年続いているという感覚ですね、本当にそうなんです。

それは周りの10何年前に栄えてたグループが今名前を聞かなくなっているというのを目の当たりにしてますので。

――現状に甘んじず、さらに高みを目指す小山氏。そんな成長企業で活躍できるのはどのような人材なのか、ヒントを伺った。

即戦力はマクドナルドの店長かディズニーランドの従業員!

グループに必要な人材は、簡単に言うと気配りが出来て、相手の立場になれる人です。仕事の出来とかスキルは時間がかかる人もいるし、人それぞれ。仕事の能力よりも人間力がある人じゃないと。これは風俗に限った話ではないですけどね。

即戦力と言うと、例えばマクドナルドで店長やっていた人とか興味があります。マクドナルドの店長は、いかに土日にバイトを集めるかじゃないですか。うちで言うと、どうやってキャストの出勤を取るか、みたいなところに通じる部分がありますよね。あとは、ディズニーランドで働いている方なんかいいですよね。

結局はサービス業であるということが理解出来たり、好きだったりする人に活躍して欲しいですね。

あとは、風営法や東京オリンピックに向けて業界が変わってくるので、去年までスタンダードだったことが今年はもう通用しないってことがある。変化に対応出来るっていう頭を持っていないとダメで、10年前の成功体験を言ってても通用しないんです。

そういう意味では時代の変化に対応出来るということは大事かもしれないですね。

スタッフの面接もたまにするんですけど、風俗だからっていう感覚を捨てればうまくいくよって(笑)。それは例えば、風俗だから給料が1年で倍になるんじゃないかみたいなイメージを持ってくる人が今でも多いんですよ。

給料が1年で倍になることってあんまり無いと思う。でも5年後とか10年後に給料が倍になれば全然良いじゃないですか。極端に「風俗だから」みたいなものがある人は結局辞めてしまう人が多いですね。

普通の感覚をもっていればいいんです。成り上がりたいって人が多い業界なのでそういうのはあっても良いと思うんですけど。当たり前のことを当たり前にやることが大事。だから、本当に取材して面白いグループじゃないんですよ、別に破天荒でも無いですし、普通なんです(笑)

――代表になった今も店舗に立ち続け、率先して部下に接客の模範を示し続ける小山氏。

何度も「普通」と繰り返した小山氏の普遍性は風俗業界にとどまらず、シゴトの本質をつく言葉に感じられた。

取材を通して、『ハピネスグループ』の強みは、そんな小山氏の企業理念としてスタッフたちに伝わり、大手にあぐらをかかず、時代の変化に対応し続ける謙虚な姿勢にあるのではないだろうか。

未来の構想のひとつである、女性スタッフ専門の風俗店が立ち上がった際は、ぜひ取材に伺いたい。
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「低価格なコスパでもハズレがあってはいけない」~ハピネスグループ・代表 小山健二の普遍性#1

小山健二(こやま けんじ)

東京都出身。風俗業界歴は16年。レンタルビデオチェーン店の店長10年を経て、ヘルス店で9年間店長を務め、『ハピネスグループ』へ。2013年よりグループ代表に就任。好きな言葉は『率先垂範』。尊敬する人物はジャッキー・チェン。一時期は映画館で年間230本程を見るほどの映画通。好きな映画は『パルプフィクション』。

執筆者プロフィール

藤原 リョウコ

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元ゲーム雑誌編集者。生粋のオタク気質を活かしてエンタメ系ライターとして活動する中、趣味で日本語ラップにどハマり。HIPHOP精神あふれる風俗業界で働く男たちの姿を知り、FENIXJOB編集部へ。趣味はスニーカー集めとBリーグ観戦。

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