「風俗の未来予想図」#1 仮想現実が変えて行く風俗と身体と愛のリアリティ

2018年02月20日

byにしやまにしやま『かりんと池袋』代表

はじめに

“風俗業界”は、好きですか?

冒頭から何を言っているんだ?と思われた方も、「大好きです!」という方も、「え?“風俗”じゃなくて?」という方も、中には嫌悪感を抱かれている方もいらっしゃるかもしれませんね。

こんにちは。かりんとグループのにしやまです。

今回コラム連載初挑戦ということで少しドキドキしています。普段は東京でオナクラ(オナニークラブの略※)という風俗業種の経営者をしています。

僕は“風俗業界”が好きです。人と人との繋がりで商売が成り立っていて、毎日様々な感情が動き、人間の良いところも、悪いところも詰まったようなそんな風俗業界が。自分が一度事業で失敗したときに、風俗でお仕事が得られたからこそ、今こうして生きているという恩義もあるかもしれません。

そんな風俗業界の最近のニュースは、多くが暗いものばかりです。法律違反による運営者の逮捕。規制の変化により消えるかつての歓楽街。少子化と所得格差による競争の激化と下がる賃金。これから風俗業界はどうなってしまうのでしょうか。やはり“グレーゾーン”を脱せず、社会的評価も低いままなのでしょうか。

今風俗業界は大きな転換期を迎えているのではないかと感じています。5.7兆円とも言われる市場規模があり、働いている人数推計は40万人。一昔前の怖く、悪いイメージで経営されていた歴史から、風営法の改正により上場企業のサラリーマン出身者をオーナーとした新しい形態の組織が誕生したり、クリーンな経営が当たり前となりつつあります。

世界にも新しい時代の波が押し寄せています。新しいテクノロジー、社会制度、働き方が求められていきます。そんな時代の風俗経営者の一人として、これからの風俗業界がどうなっていくのか、知識と経験による推測をフルに活用して、想像してみたい。風俗業界の未来がより面白いものになるように、多くの方とアイディアを共有してみたい。そんな連載です。

未来予測はもちろん正確なものではなく、ほとんどが僕の妄想です。現在得られている情報からの理由付けはありますが、文量の関係上、浅く見える部分や深めきれない部分はご容赦ください。

一生懸命考えてみますので、お付き合いよろしくお願い致します。

仮想現実が変えて行く風俗と身体と愛のリアリティ

第一回のテーマは「仮想現実(VR)」です。近年風俗業界に限らず、何かと話題のVR。まだ馴染みが無い方はぜひこの機会にネット検索をしてみてください。

今回はVR(仮想現実)だけでなく、周辺領域であるAR(拡張現実)、そして組み合わせたMR(仮想現実、拡張現実等の技術の組み合わせ)の技術が今後の風俗業界に与えていく影響を改めて考えてみたいと思います。


▲没入感の高いVR映像はアダルト業界とも相性抜群

そもそもVRとは立体視や360度映像といった新しい映像や3Dの技術を使い、あたかもそこに自分がいて仮想空間を現実のように没入して体験できることを目指した概念や技術です。VRは360度映像のことだと勘違いされがちですが、それだけではなく、立体視映像などもあります。

すごさの“核”になっているところは自分の視線移動に合わせて映像が動くことによって、その映像の中にいるような没入体験ができることだと思います。

2018年2月現在の風俗業界でのVR利用といえば「マンゾクVR」、「人妻城VR店」に代表されるプレイイメージやキャストをより臨場感をもって紹介するための“紹介動画型”と、「回春性感×VR」や手前味噌ですが「かりんとVR」に代表される“プレイ補助・拡張型”に分類されます。今後“紹介動画型”はもちろん、“プレイ補助・拡張型” のお店も確実に増えていくでしょう。

紹介動画型はイメージしやすいので、今回は“プレイ補助・拡張型”を少し掘って考えていきたいと思います。技術が進歩し、風俗業界での「xR(VR系の何か)」利用が増えて来たときにメインとなるのはこちらです。ざっくり簡単に一言で言うと「リアルに感じられるバーチャル映像を見ながら、現実世界でキャストさんにプレイを手伝ってもらう」という新しい風俗プレイです。まぁ、誰もが(?)思いつきやすい使い方ですね。

この使い方はもともとVRに足りなかった “映像には没入感があるのに感触がないから身体性が伴わない”、もっと単純にいうと「映像に現実感があっても触れないから気持ちよくない」という現状の問題である触覚を現実のキャストさんが補完することでよりバーチャル映像を現実に近づけるということを可能にしています。

また現在VR業界でもバーチャル映像を“触れる”ようになるための技術開発が進んでいるので、今後はセルフプレイでも感触が伴うようになり、それに合わせて風俗店も「オナニープレイ」をいかに充実させるかという発想のコンセプトを持った店が出てくるかもしれません。さらに、風俗店はビデオボックスの業種と近づいていく可能性もありますね。

MRによって“現実”が置き換わっていく

次にAR(拡張現実)と、VRの技術も組み合わせたMRのお話を少ししたいと思います。ARといえばゲームアプリ「Pokémon GO」が有名ですね。現実の風景にCGで情報を付加して見せる技術のことです。(この場合はスマホを通じて現実風景に“ポケモン”のCGを表示していますね)
このARは2010年代以後多くの開発が進んでいるメガネ型デバイス、例えばGoogle GlassやマイクロソフトHoloLensなどの進化と普及によってより、自然に日常で味わえるようになります。スマホに変わる情報端末としてメガネをかければ空中にパソコン画面が起動するような状態です。これの直接の風俗活用は難しいです。今の所は……目の前のキャストの“戦闘力”が分かるみたいな……冗談みたいですね(笑)

実際のARの風俗(アダルト領域)活用としてはアダルトゲームの複数人数プレイ、あとはVRと両方体験できるメガネ型端末が出た時に、モードを切り替えて手軽にVRと映像を合わせた体験を提供する使い方だと思います。つまり目の前の現実のキャストがボタン一つであるキャラクターに変化したり、今いる部屋から背景がチェンジしてシチュエーションが変わったりという世界です。他にも触感を持つバーチャルキャラクターと現実のキャスト2人とのプレイなども考えられます。芸能人や風景などを3D化して映像に取り込むことができる3Dスキャン技術とも相性は良いですね。


▲2次元の世界も現実のように入り込める(「かりんとVR」実際のプレイ画像)

既に鋭い方はご理解いただいているかもしれませんが、風俗プレイの構成要素を分解すると「キャラクター(キャスト)」「背景(シチュエーション)」「触覚(リアリティ)」に分かれます。VR的な技術のすごいところは現実味をもって目の前の視覚情報「キャラクター」と「背景」を自在に低コストでチェンジできることです。現在はそれに「触覚」をどう加えるかという研究が世界で行われているわけですが、元から触覚を補完するように考えられたVR風俗は人間科学の分野でも得られる事例としてはかなり先端にいると思います。

実際、かりんとのVRプレイを体験された方でも没入度の違いにより「VR最高!」という方、「技術が高まってきたら(映像の質が高いなら)面白いと思う」という方、「やはり現実の方が良いからVRはいらない」という方がいらっしゃいます。割合はそれぞれ均等に3割強ぐらい、既に体感の差が事例として得られています。

映像と身体感覚を合わせることで現実では到底得られない感覚にプレイを拡張するということもできるかもしれません。見ている映像に身体の感覚が伴ってくるわけですから、精度が上がるほど“現実との錯覚”が起こりやすくなります。もし、この錯覚が起こった時、見ている映像が「あり得ないシチュエーション」だったり、「2次元(アニメ)キャラクター」だったりしたらどこに“現実”があるのか分からなくなりませんか?

風俗だからこそ見つけられるテクノロジーのその先

実はこれが社会をも変えていく可能性があります。例えば最近でも話題のバーチャルYoutuberなど2次元キャラクターが風俗コンテンツに登場することが、現実社会で大ニュースになるという現象が起こるのです。もう何が現実か分かりませんね(笑)

VR技術の進化によってバーチャル映像の質感と触覚がより現実感覚に近づいた時、「キャラクター」と「背景」が自在に変えられるというのはすごいことです。技術が進むと、「今自分はどこにいるのか」「目の前の人は本当は誰なのか」「今自分は誰に触られているのか」といった感覚が曖昧になり、バーチャルと現実の境界がわかりにくくなってきます。そうすると「身体とは何か?」という根源的な問いにもたどり着きます。また、バーチャルなキャラクターに本気の恋をする方も現れるかもしれません。いや、恐らく現れるでしょう。

特にVR風俗プレイでは「愛の正体」についても理解を深めると思っています。現実感や触覚が限りなく近づいていく。そのとき人間とバーチャルの差は何なのでしょうか。僕も好きなSF作品『攻殻機動隊』では、身体が機械化・電脳化した未来で残っている人間的意識を「ゴースト」と呼んでいました。今ここでいう愛はゴーストに近いかもしれません。身体の感覚も、見た目も全て置き換え可能になった時に、最後に残る要素。それが人間が接客する上での強みや“最後に残るもの”になってくるでしょう。そしてそれは、果たして人間だけが持つものなのでしょうか。

様々な未体験プレイも可能にするエンターテイメント性だけでなく、現状の風俗から残る、優れている点を見つめることでさらにサービスを進化させる可能性を秘めたVR。IT業界とも協業が必要なので、現在電気自動車をITメーカーが作っているように、風俗もIT事業者が台頭してくることも考えられます。本格的に面白くなるのは2022年ぐらいになりそうですが、その先にあるのはどんな風俗の、人間の変化・進化なのか。楽しみです。

次回は同じIT技術でもプレイではなくお店の運営を変えていく「AI」について書きたいと思います。

ぜひお付き合いください。

執筆者プロフィール

にしやま

にしやま『かりんと池袋』代表記事一覧

1985年、福島県出身。大学卒業後、大手一部上場企業に就職。1年でベンチャー企業に転職した後、自身で会社を起業した経験も持つ。2012年より風俗業界入りし、いくつかの店舗を経験する中で現オーナーの誘いから創業メンバーの3人として『かりんと』グループを立ち上げる。“その先”に寄り添う、ユニークで優しいフーゾクカンパニーを目指す。

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