「デリヘルの代表を選んだのは、“ひとの可能性”を信じたから」~高級デリヘル『贅沢なひと時』浅野代表#2~

2018年08月30日

by赤星 アキラ赤星 アキラ編集部

――人の真価と器量は、危機の際にこそわかるという。スタッフが去った20代の苦い経験を思い出しながら、「悔い改めた」と語ることのできる『贅沢なひと時』浅野代表――。

“赤字続き”のデリヘルを買い取り、自ら代表となったとき、彼はこの経験をどのように活かしたのだろうか。そして選んだある決断とは――。

キーワードは“本気”と“目標”という、シンプルなことばだった。

「こんな良いメンバーなのに、惜しい」

『贅沢なひと時』はもともと、友達に誘われて出店したデリヘルだったんです。出資だけしていたんですが、これが1年ちょっとぐらい凄まじい赤字を出し続けたんですね。

僕はその時点で私立の医学部の学費も払えた上に、それなりに貯蓄もしていたんですが、それがぜんぶ溶けてしまうぐらいでした。空っぽになった金庫ってシュールでしたね(笑)。

当時、ちょうどできちゃった婚をして、家族ができて……。嫁も働いていたのですが、やっぱり生活の基盤は自分でしっかりと作りたかった。

元々の事業もしつつ、できる範囲で店舗にも出ていたのですが、大学との両立が自分のキャパだとできなくなってしまったんですね。

結果大学を留年してしまって、このペースで赤字が出続けたら、生活もままならないなって。今後自分はどうしていくべきか、とても迷いました。

ずっと商売をしているときに感じていた疎外感があって。それは一緒に働いている人達から「どうせあなたは医者になるんでしょ? あなたとはずっと一緒にはいれないんでしょ」的な無言の諦めみたいなものを感じていて。

そこに対しては「医師免許を取ったら、一度事業が形になるまでは一緒にいるから」って言ってたし、本気でそう思っていたんですが、やっぱり比較的早い段階で去ることにはなります。そこに対しては「申し訳ないな」っていう気持ちもあって、いつも悩んでいました。

赤字だし、「潰すか」とも思ったんですが、以前の、自分がピンチのときに人が離れてしまったときの辛い気持ちが蘇って。自分が離れるかどうか選択する状況になったときに、今度は人のために踏ん張ってみようと思ったんです。

店に対して、ポテンシャルもすごく感じていました。一生懸命なスタッフ、魅力的なキャストがいた。「こんな良いメンバーがいるのに惜しいな」と、この気持ちを形にしたい、この魅力をを認知させたい。そう思わずにはいられませんでした。

他事業で儲かっているお金で赤字の事業を補填するという形では、がんばっているスタッフの待遇を上げることはできません。根本的に黒字化してそのがんばりに報いれなければ、それこそハッピーエンドがつくれませんよね。

利益が出る仕組みをちゃんとつくろう、形にしよう、代表になろうと思ったんです。今の自分のキャパだと両立はできないなって、医学部はその時点で1年休学することにしました。

営利団体の赤字は“無意味”という覚悟

ここで僕がすごく恵まれていたのは、アドバイスしてくださる方がいたということ。神奈川県に有名な、老舗のソープランドのグループがあるんですけど、そこで当時、Oさんという方が統轄をされていたんです。。

昔からの仕事の繋がりで、ずっとよくしていただいていました。本当に悩んだときは、人格者で優秀なその先輩に、ご相談していたんです。

その頃お会いしたときに、先輩の管轄するグループに流行ってないように見えた店舗があったんで、率直に聞いたんですよ。「あそこって赤字なんじゃないですか?」って。そしたら、Oさんはこう言ったんです。

「赤字だったらウチは潰します。利益はそんなに出ていないけど、赤字じゃないですよ。営利団体である以上、赤字で運営するこには全く意味がないですね」

その言葉がけっこう、胸に刺さったんです。スカウト会社での人が離れた経験、今店舗で働くスタッフの一生懸命な姿、そういうものが相まって、自分は休学までして代表になる決意をしたわけですけど、甘いと思い知らされました。

ナルシシズムで商売なんてやれない。従業員を思う優しい気持ちで利益が上がるわけじゃない。相当覚悟しないとできないと思いましたし、人に任せるのではなく自分が代表を務めて結果が出なかったら、「潰そう」と決意した瞬間です。退路を断ちました。

目標の前提にあるのは“みんなの本気”

ここでの覚悟というのは、具体的なハードな達成目標を決めて、結果を出すということです。はじまりから“最初の1年は赤字ゼロ”なんてゆるい目標を立てることはせず、そのときの売上からしたら難しいことを、年間の目標に掲げたんです。

「今年でこれ達成します。達成できなかったらお店を潰します。絶対に結果を出すのでみなさんの力を貸してください」と、覚悟を伝えました。

当時一緒に働いている方はスタッフもドライバーさんも全員歳上でした。仕事のパートナーとして認めていただくためにも、目標を達成する有言実行の姿が大事だと思ったんです。

赤字の店舗を、赤字のままにしていたい従業員なんていないでしょう。結果が待遇や査定に関わる以上お店が流行った方が良いのは、みんな一緒です。覚悟を決めて仕事に取り組む自分の背中を見せて、目標のために共に頑張ること。それはメッセージであり、コミュニケーションでもありました。

それに、この目標は確かに高いものだけど、年間という長期的なスパンで見たら、“無理な目標”ではないんですよ。合理的な結果の出し方というのを、僕は知っていますから。

受験でも飲み屋さんでも、紆余曲折ありましたけどスカウト会社でも、結果は出してきました。流行っているお店がある以上、私たちがデリヘルだから結果を出せないという理由なんて絶対にないと思ったんです。

数字ベースの分析、確証もしっかりあって、これもみんなに伝えました。ただその確証は“みんなが本気になってくれたら”という前提に立ったものでした。とにかく、全員が一致団結して本気になることの大切さを伝え続けました。

毎日言い続けて、自分でも行動して。そしたら段々みんな本気になってくれました。結果が出ればみんな「この人の言うとおりにしたら上昇できる」って、わかってくれると実感しましたね。それがまたさらに、次の仕事の“本気”に繋がっていきました。

実際代表になってから、売上は1回も落としていません。四半期ベースの売上は、3年連続増で来てますからね。毎年150%増というところまで持っていきたい。

人にも企業にも“短期”と“長期”の目標がある

これはけっこう大切なことだと思っているのですが、今ウチのスタッフはみんな、さっきみたいな年間の長期目標と、短期目標が異なることも、わかってくれていると思うんです。前回僕の予備校生時代の話で、“薄い参考書を繰り返し解く”という話をしたでしょう?

“目の前の一問を解く”というのが、言わば短期目標ですよね。でもゴールはそこじゃない。参考書一冊を繰り返し解き続けて得られる本質的な理解、そのうえで叶う合格(≒事業の黒字化、売上増)こそがゴールなんです。

短期に無茶な目標を立てたり、目先の利益にこだわってばかりいると、組織ってもろくなっちゃうんです。一度失敗してわかってる(笑)。 本質的に強い、安定上昇の組織をつくるためには、“短期的にはたとえ損だったとしても長期的には正しい”という決断をしなければならない。

だから短期の目標も、日々の売上だけにフォーカスするのではなく、長期の目標に繋がるように設定していかないといけません。すぐには結果が出ないことに対しても、投資と努力を惜しまないことが、大きな結果に繋がるということです。それは組織だけじゃない。スタッフに対してもそうです。

当時、赤字続きだった店舗のスタッフには「簡単には結果が出せなくても、積み重ねていけば、いつかすごい花が咲く。方向性の正しい努力は報われるから」って、結果を見せながら、実感してもらえるタイミングで折々に伝えていました。

現在、入ったばかりでたくさん失敗して、仕事に自信を失いかけているスタッフにも僕は言うんです。

「大丈夫。焦らないでいいよ。初めは誰だってできるわけがない。チャレンジし続けることが大事。今は種まきだよ。すぐには芽が出なくても、こういう積み重ね方をすれば花は咲くから。今どれだけできるかよりも、日々どれだけ成長できているかを見ているから」

僕は待ちます。いくらでも。方向性の正しい努力を積み重ねる人は成長し続けるから。

事業も人も同じだと思います。一緒に仕事をしていて、今どれだけできるかよりも、限られた時間の中でどれくらい成長できるかのほうが、僕は重要だと考えています。

一緒にいてポジティブな刺激を与えてもらえるスタッフが増えました。いい職場環境は、事業も人も成長させます。困ったときに頼りになる仲間がいる。僕はもう孤独じゃありません(笑)。

少し時間がかかりそうだったので、大学は辞めました。今は自分にとって医者以上のやりがいのある生き方をつくっていくことが、テーマのひとつです。

辛いことも含め、毎日、楽しいですよ。チャレンジしたいことがたくさんあります。会社も僕も、もっと成長し続けます!

――“みんなの本気”を引き出し、代表となったデリヘルのV字回復に留まらず、利益の増大まで達成した浅野代表。スタッフが本気で取り組んだ『贅沢なひと時』の戦略は、どのようなものだったのだろう。その秘密は、第三回で明かされる。

(インタビュー:赤星アキラ)

最終回の記事を読む>>
「『贅沢なひと時』という戦略。必要とされたかったという想い」~高級デリヘル『贅沢なひと時』浅野代表#3~

第一回の記事を読む>>
「医学生と夜の両立。人に去られた僕が、向き合ったもの」~高級デリヘル『贅沢なひと時』浅野代表#1~

浅野代表

兵庫県出身。愛媛県で育つ。早大進学のため19歳で上京。学費等のためにナイトワークで働きつつ、順大医学部への進学を志す。25歳の時にナイトレジャー業界で起業。その後、投資家として共同出資していた複数店のなかの一店舗を買い取り、27歳で医学部は中退。デリヘル『贅沢なひと時』の代表に就任した。その後店舗は高級店としてV字回復を達成。3年連続で四半期売上の更新を継続中。現在4期目。34歳。

執筆者プロフィール

赤星 アキラ

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元証券マン。リーマンショックを経て、ハタラクとジンセイをひたすら考え続ける。2015年春、縁あって風俗業界に転じ、FENIXプロジェクトを企画。Fenixzineを風俗でハタラク男性のプラットフォームにしていきたい。好きな音楽はV2。福岡市出身。

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