「『贅沢なひと時』という戦略。必要とされたかったという想い」~高級デリヘル『贅沢なひと時』浅野代表#3~

2018年09月20日

by赤星 アキラ赤星 アキラ編集部

――“みんなが本気になってくれたら”目標は達成できる――。

赤字の続いていたデリヘルを買い取り、スタッフにこう訴えた『贅沢なひと時』浅野代表。ことば通り、その後一度も四半期売上を落とさず、増益を続けている。

現在は毎年150%増までを視野に入れているが、掲げた目標を達成するための“戦略”は、どのようなものだったのだろう。

そしてその背景にある、半生をかけて捜し求めてきたものとは――。

バリュー・プロポジション(サービスの提供価値)

成功する理由って、なかなか見えづらい。現在進行形だとその時取り組んでいることが正解かなんて案外分からない。

ただ、失敗の原因は常に明確です。既に起こったこととして、結果で判断できるから。

“なんとなくやっている”、これがお店が上手くいってないことの原因だと感じました。

「赤字だ。がんばろう」「もっと一生懸命やろう」いいマインドだとは思います。でも、何をがんばるか? 何を一生懸命やるか? そこをしっかりと考えずに優先順位とテーマを決めずやみくもに動いても、時間は限られているから結果はついてこないんです。

僕はまず、バリュー・プロポジション(サービスの提供価値)を定めました。他と何が違うのか、他のデリヘルとは違う、ウチの良さとは何なのかを強く打ち出したんです。

これは価格帯にも関わることですけど“ルックスの良い子が性サービスを提供してくれる”ということだと、そういうお店はたくさんあるし、一定のレベルまでいくことが出来ても、先がありません。

結局、価格競争の潰し合いに巻き込まれるはず。ここで戦っては、ウチの浮上はないと考えました。

『贅沢なひと時』は、自分たちのバリュー・プロポジションに“人”を置きました。

こんなかわいい子が、一生懸命全力で愛情を注いでくれて、サービスをしてくれるというところ。マナーはもちろん、言葉づかいや仕草から垣間見える“内面性”、そこも含めて総合的に“おもてなし”をするということですね。

他店でこの価格帯で採用されているからとか、他者の評価ではなく、その価値基準で、キャストの採用や教育を徹底追及していく――。

ブレずに、そこにこだわって運営していこうと決めました。

心づくしの価値は、お客様が決める

ウチの価格帯は、ミドルリッチからスーパーリッチという設定にあります。

今この業界はお店の数もキャストの人数も飽和しています。ルックスの良い子が抜いてくれるというだけでは、“高い”と感じるお客様もいるでしょうし。既にそこに目新しさはありません。

しかし“こんなかわいい子がここまで自分に愛情を尽くしてくれて、さらにエッチなことまでしてくれる”となれば、その体験はプレシャス(貴重、かけがえがない)なものになる。

代わりが利かなければ、そこに料金設定は関係なくなるんです。そういった統一感を出せれば、そこに価値を見出してくれるお客様には代わりの利かないお店になれる。

女性のルックスだけではない魅力を査定するというのは、一般的な風俗店の面接とは違うかもしれませんし、人の魅力を抽出するプロとして面接官に求められる能力は高くなります。

でもそこにこだわりたかった。

価格設定も他とは違っています。ウチの価格設定は一定ではないんです。受けた“感動”を、お客様に料金として設定してもらっていて、上限を設けていません。

“設定した期間内に女の子がこれだけの本指名を受けたら、価格設定上げていきます”という形ですね。贅沢なひと時というお店の中でお客様にふさわしいと認められれば、その子の価格は、上がり続けるんです。

ぱっと見て、ルックスだけでこの価格という決め方ではないんです。

料金以上に「楽しかった、幸せだった」と思ってくだされば、お客様は価格が上がっても、シンプルにリピートしてくださる。価格帯は、お客様に決めていただくという感覚です。

明確な評価基準は女の子たちの励みにもなります。実力主義、結果に対して評価をすることは、内勤スタッフ、ドライバー含め一緒に仕事をしてくれる全ての人に対しての私の哲学です。

感動を生む一流のサービス――『贅沢』品質の源泉とは

女の子の研修もしっかりと行います。

感動させるサービスが私たちの目標。“いたれりつくせりのおもてなし”。このスタイルを良いと思っていただき、ファンになってもらうことがウチの目標ですから。

女の子に接客において“どこを押さえるべきか”は、かなりしっかりと説明します。

さっきの“なんとなく”というところに繋がるんですけど、結局、意識すればできる細かいことを限られた時間にどれだけ詰め込めるかが肝要で、そのうえで断っていいこと、無理すべきじゃないことを伝えます。

“どこまでがんばらなければならないか”というラインがわからないと、女の子たちは働く中で理不尽な要求に徐々に心を閉ざしてしまい輝けなくなってしまう。ただのいい人でいると、この仕事はボロボロになっちゃうよって。

接客に関しては具体的なところはお客様からアンケートを取って都度伝えながらも、“ここはハズさないでね”というところは最初に時間をかけてしっかり伝えます。

キャストの頑張ろうってモチベーションのマネジメントも含めて、もしかしたら競合他社はやらないレベルで僕らは深く取り組むようにしています。

完成されたキャストを待つのではなく。自分たちで一緒に正解に寄せていく。

私達、後発のお店に出来上がったキャストはなかなか来てくれない。だからそうするしかなかった。今となってはそのノウハウはお店の武器になっています。

決して、むずかしいことではないんです。ひとつひとつは簡単なこと。でもそれをお客様との一期一会にどれだけ積み重ねるかで。感動してもらえるかが決まる。

そういった理論づくりが僕の大事な仕事だと考えてます。

スタッフが“仲間”になるプロセス。理論のレベルから僕は教える

これはスタッフの研修においても同様ですね。

判断基準や仕事の理論を伝えることが、通常業務の研修が終わった後の教育だと考えています。

その場、その場で正解を伝えたほうが短期的には生産性が高い場合が多いですが、なぜその正解にいたったのか、その考え方を伝えていけば、最終的には自分で考えて正解を導けるようになる。

遠回りにも見えますが、その都度結論が導かれる過程を伝えていけば、最終的には自分で考えて正解に辿りつけるようになる。アクションが変わる。

そしてその理論を共有出来るようになれば、一緒にバージョンアップさせたり、継承したりすることが出来る。想いが組織に浸透していく瞬間は、こんな楽しいことってなかなかないって思います。

何年もずっと、僕は仲間が欲しい、パートナーが欲しい思っていました。

もし熱意があって少し理解に時間がかかるスタッフや女の子がいても、何度でも同じことを伝えます。そこに何の苦も感じません。

「オレはこう思う。こんなおもしろいことに気づけた」と感じているのに、“伝える相手がいない”というときがあった。あのころを思えば、今は何て恵まれているんだと思います。

僕には得意なことがあります。

情報処理、分析、そこからの理論づくり。そのうえでこうやれば結果を出せるというレールを敷く(仮説を作る)ことが、僕の強みです。チームで仕事が出来るようになって、今はそこが最大限活かせられるような環境で仕事をさせてもらってます。

個で出来ることの限界に挑戦するのではなく、チームとしてどこまで結果が出せるのか、どうチームを機能させるのか、個々の人を輝かせるのか――。

これを考えていく、実行していくっていうのは、最高に面白い仕事だと思います!

今一番楽しみなことは、自分一人じゃ絶対に達成できないまだ見ぬ景色を、仲間と一緒に見ることです。

“旬”を気にかけながら、“王道”を貫いていく

これからについてですが、向こう3年は、年間売上30%増を続けていくつもりですし、別のコンセプト店へのチャレンジも考えています。

そこで大切にしているのは“旬と王道”ですね。

最近だと“レズコース”や“合コンコース”なんかをメニューに取り入れました。そういったニーズがあるなら、やってみようって。

特にレズコースは、高級店で女性のお客様主体のレズコースを用意しているお店が少なくて。在籍キャストに聞いてみたら女性のお客様も大丈夫ですよって子が案外多く、違いがつくれるな、これは面白そうだなって、はじめました。

旬やトレンドを意識して、運営も変化することを受け入れていかないと、お客様に飽きられてしまいます。

成功体験がすぐに“古いもの”になってしまう業界にいることを忘れてはいけない。そのとき実現できる新しいエロ・エンターテイメントを追求し続けないといけない。そう思って、日々取り組んでいます。

そして、そのうえでの王道なんです。

例えば、“好きな人に会いたい”というのは、時代がどんなに変わったとしても変わらない人の感情です。これが王道です。

ただ、例えばコミュニケーションの取り方は手紙、電話、メール、携帯、SNSと変化してきました。王道への“アプローチ”は変わっていくんですね。

レズや合コンも1つのメニューとしてあるけれど、女の子たちの“おもてなし”の本質は、変わらないんです。

今もこれからも『贅沢なひと時』の運営の王道は、“お客様に今までで一番楽しかったと感じてもらえるおもてなしをチーム一丸となって提供すること”です。これは不変です。

必要とされたかった。だから“常勝チーム”でいたい

色々失った時に僕は、人に必要とされたいと強く思いました。

働くこと、人生において、確固たる哲学と美学を持って、結果にこだわって仕事が出来れば、一緒に働いてくれる人達、仲間に報いることが出来る。普段はあまり出しませんが、実のところはただの寂しがり屋かもしれないです(笑)。

人からみたら“うまくいっている”という華やかな、表のところが目に付くでしょう。

でも本当は、うまくいかなかった。だから必死で努力した。こけまくった。でも、挫折や失敗の中で立ち上がり続けた。それだけなんです。

今も全然うまくいっていると僕は思わないし、納得はしていない。

いつも悔しい悔しい、オレ達まだまだこんなもんじゃないだろって(笑)。結果を出さないと、働くみんなのためにもならないから。まだまだ成長出来るって、仲間と自分を信じて、必死にやっています。

――その昔(と言っても、ほんの少し昔)、青春時代にふさわしく、自分探しに心を悩ませた少年がいた。

少年は自身の得た学歴のブランドに満足せず、人に惹かれ、人を求めて歌舞伎町で働き始め、そしてそこで挫折し、孤独を味わった。

赤字続きなのを見かねて『贅沢なひと時』の代表になったとき、彼はもう少年ではなく、大人だった。戦略的に事業を進められる頭脳と先見性に加えて、人の心がわかる“経営者”になっていた。

浅野代表の掲げるサービスが、“おもてなし”として人の心に重点を置いたのは当然の結果だったし、それはお客様と業界が求めていた新しい“スタイル”だったのだろう。

自らの居場所を定め、想いをわかちあえる仲間に出会った浅野代表。その理論と実践に、『Fenixzine』は引き続き注目していく――。

(インタビュー:赤星アキラ)

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「エリートコースを歩むことも医師になることもできた人間が、なぜ風俗業界を志したのか」~『贅沢なひと時』浅野代表の“今とこれから”#1

浅野代表

兵庫県出身。愛媛県で育つ。早大進学のため19歳で上京。学費等のためにナイトワークで働きつつ、順大医学部への進学を志す。25歳の時にナイトレジャー業界で起業。その後、投資家として共同出資していた複数店のなかの一店舗を買い取り、27歳で医学部は中退。デリヘル『贅沢なひと時』の代表に就任した。その後店舗は高級店としてV字回復を達成。3年連続で四半期売上の更新を継続中。現在4期目。34歳。

執筆者プロフィール

赤星 アキラ

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元証券マン。リーマンショックを経て、ハタラクとジンセイをひたすら考え続ける。2015年春、縁あって風俗業界に転じ、FENIXプロジェクトを企画。Fenixzineを風俗でハタラク男性のプラットフォームにしていきたい。好きな音楽はV2。福岡市出身。

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