「終わらない旅。“普通”に挑み続けたグループの舞台は、遂に全国へ」~アインズグループ代表 北村一樹の冒険#3

2019年01月30日

by松坂 治良松坂 治良編集者

――“役者は揃った”の言葉よろしく、女の子の意識改革を終え、急成長に舵を切った『アインズグループ』。「飛ぶ鳥を落とす勢い」とも評された快進撃の裏で、だが北村代表は、1つの壁にぶつかっていたという。

「僕自身が、変わらなければいけなかった」。それはある意味で、大きな組織の上に立つ人間が、必ず直面する問題でもあった。

多様化とフランチャイズ化。“任せる”が必要になった

お話はどこまで……。そうか、ブレンダの成功、アインズグループの結成、そしてグループに立ちはだかった新たな“壁”のところで終わっていたんでしたね。

壁がどんなものだったかというのは、意外と単純なことで。というのは、前回も触れましたけど、僕がぜんぶ見ていたでしょう? 女の子の服装、髪型、化粧まで。要は見きれなくなったんですよ。

ブレンダは今でも核ですけど、他にも『Club MARIA(クラブマリア)』、『Aroma de Paris(アロマ デ パリ)』、『亭主関白』、『バカンス学園』、いちばん新しいところだと『Maria Belle Aroma(マリア ベル アロマ)』になるかな? ブランドが多種多様になりました。

ざっと見るだけでも、僕自身が“キャバ嬢”の“キレイ・かわいい”ではじめた枠が、大きく広がっていますよね。容姿には清楚もあれば、ロリータもある。それぞれのコンセプトで、尖ったお店づくりをしてもらっているんです。

業種もヘルスだけではなくエステにも広がっているし、おかげさまで「仲間に入れてください」という声も多いんですよね。フランチャイズ化にも踏み切っています。

そう、おっしゃる通り、どう考えてもぜんぶは見ようがない(笑)。旗艦店はブレちゃいけないですよ。そこが崩れると下まで崩れちゃいますから。だからそのトップのところは僕がしっかり見ますけど、他のところは“任せる”勇気と度量が、僕に必要になったわけです。

社長変わった。そうじゃない。守るために変えたんだ

大事なのは任せ方だと思いました。言われたことがあるんです。「妥協も必要やで」って。グループ展開、フランチャイズ化ってなったら、多少コンセプトがブレちゃっても仕方がない、それが“普通”だって。ぜんぶには影響力を及ぼせないからって……。

でもその“普通”で、お店ってダメになっていくんですよ。チェーン展開してダメになった企業って、いっぱいあるじゃないですか。「あのオヤジが1人でやってた時は、あそこのラーメンも旨かった」なんてね(笑)。

だから結局基本に戻るんです。いつも。

「オレたちは、何のためにここに来たんだ?」

“最高のかわいい”を届けるためだったでしょう。かわいくないのが“普通”を、壊すためだったでしょう。“まあこんなもんか”なんていうフランチャイズ展開なんかしていたら、ダメになるのはあっという間ですよ。

ほら、なかには「色んな子がいます」みたいなことを言って、“何でも屋”を標榜するところがありますね。皆さん1度入ってみたらいいですよ。そこはだいたい“何にも売れない屋”なんです。ろくなもんじゃない。

悩んだ末にね、僕は色んなことをマニュアル化・ルール化しました。

「旗艦店はオレが見る。でもその他のところも、このラインは外したらダメ」

そういう基準をつくったんですね。

僕は自由を愛する人間なんで、本音ではイヤだったんですけど(笑)。ある種規則なんか度外視して、思いつくままに情熱だけで進んでいたのが、ブレンダであり、アインズでしたしね。それが好きで馴染んでいたスタッフも、中にはいたはずですし。

「社長変わった」なんて言われて、寂しい思いをしたこともありますよ。でもそのスタッフには僕、率直に言ったんです。

「自然に変わったんじゃないんだ。変わらなきゃいけないから変えたんだ。ブレンダを変えないために、守るために、オレがオレ自身を変えたんだよ」

“任せられる社員”に。毎月の企画会議は接客にも活きた

マニュアル化・ルール化とともに、1人ひとりに“任せられるスタッフ”になってほしかった。そこではじめたのが“企画会議”です。そうそう、この写真がそうですね。当初は月2回、今でも月1回は必ず行っています。

僕自身驚いたことではあるんですけど、この会議は本当に、すぐに機能しました。

グループになって以降、色んな部署や、風俗以外の事業部ができていたんですけど、みんなやっぱり“言いたいこと”がいっぱいあったんですね。WebならWeb、求人部なら求人部というように、部署ならではで“見えていたもの”というのが、それぞれにあったみたいで。

「求人の窓口からすると、応募の女の子への返信、もう少し丁寧な方が」
「重くなるかもっていう心配もわかるんですけど、もっとWebのデザイン性高めたい」
「せっかく美容事業もはじめたんだから、女の子に講習やってもらうのもありかなって」

会議として集まってプレゼンしてもらうとね、予想外のことだって、たくさん出てきます。カタい改善案ばかりじゃないですよ。ときには「野球しましょう」とか「フットサル大会やりたい」とかね(笑)。

こんな案でも、僕にとっては色んな学びになるんです。「あ、こいつずっと野球部やったんや。だからこんなにガマン強いんか」とかね。みんなにも、良い刺激になっていると思います。

まず“人前でプレゼンする”というのが、大きな力になりますよね。ちょっとやそっとの野球への情熱じゃ、大会は開催できませんから(笑)。

ここで僕やスタッフに企画を通せるヤツは、お客様にだって女の子を上手におススメできますよ。日々のことって、ぜんぶ仕事に繋がっているんですよね。

メイク教室に『アインズ新聞』。スタッフ発案で、次々

メイク教室なんかは、僕も見ていて楽しかったな。やっぱりスタッフの発案で、時間割を決めてここに集まって、8回開催したんですよ。なかなか本格的にやってました。“魅せ方”というのは大事ですからね。女の子もスタッフも、すごく勉強になったんじゃないかな。

あとは、ウチにポップなんかつくるデザイン部があるんですけど、急に「『アインズ新聞』発行します!」って宣言してね。まあ立派なもんつくってきましたよ。

案が通ればプロジェクトリーダーになれます。時には賞金も賭けて、表彰式をやったりもします。僕、1回自分で賞取っちゃったんですよ。

初心忘れずじゃないですけど、こういう競争、切磋琢磨というのは、自分も元気にしてくれますよね。もちろん、僕は会議では、いつだって賞狙いです(笑)。

「それは誰のための発言?」。意見には2種類しかない

マニュアル化・ルール化で統一を図ったのもそうだし、こうした“自分で考える”という試みも、功を奏したのかな。気が付けば、僕が何か号令なんか掛けなくても、みんなに色んなことを任せられる組織になっています。

11月に『Maria Belle Aroma』をオープンしたのも、僕にとってはスタッフのみんなへの、信頼の現れなんです。2019年以降も、どんどん新店をオープンしていこうと思っています。大丈夫。みんなやってくれる。

ゼッタイに自分もアインズも、良い方向に変わっていますから。個人商店だった時の僕にはね、多少スタッフに対して押さえつけるようなところがあったと思いますよ。今みたいなマニュアル・ルールじゃなくて、力で同じ方向に向かせるようなところがあったと思う。

ムリもないんですよ。余裕がないし、まだみんなプロじゃなかったから。僕を筆頭に、全員がはじめてでこの業界に乗り込んできたわけですからね。僕だって20代だったんですよ?(笑)

でも今は違う。スタッフが何か言ってきたら、僕はまず聞けますよ。そしてそいつの言っていることに筋が通っていたら、折れます。

ジャッジの基準? これはもう明確です。意見というのは2種類ある。いや、2種類しかないんです。

要は自分の都合で言っているか、組織のために言っているか。僕たぶん、部下のためとかお店のためという理由で意見を持ってこられた場合は、ほぼ折れてるんじゃないかな。

結果なんていいんですよ。良かったにしろ悪かったにしろ、「そいつがそういう気持ちで仕事をしてくれた」っていうのが大切なんです。個人の失敗なんてそんなもん、すぐ取り返せますから。僕の頭下げて済むなら、いつでも下げに行ったりますよ。

大きい組織だからこそ、下の意見が必要になる

エラくなったら普通、部下の意見聞かない? 逆です逆。逆じゃないと、成長なんてすぐに頭打ちです。

みんなアインズグループが急に大きくなったように言うんですよ(笑)。気持ちはわかります。2019年でやっと13年目。それで今、35店舗ですからね。でもやってる方は日々失敗しながら、ちょっとずつちょっとずつなんですよ。

まだまだアインズは、“いちばんはじめの風俗”にはなれていない気もするんですね。玄人受けすると言えば聞こえは良いですけど、初心者には敷居が高く感じられているかもしれない。この辺も、WEBや新たなブランド展開で変えていければと思っています。当然今まで通り、きちんとブレないラインは引いてね。

全国の“普通”を突破してみせる。生きた証をつくる

べつにそんな急がなくてもいいんですよ。一気に色んなことしなくても、信念が間違っていなければ、勝手に大きくなる。それは人間も企業も一緒なんです。

これから僕らは関西を飛び越えていきます。まず大きなところからね。名古屋、博多、札幌、もちろん東京。その土地土地に色んな“これが普通”の壁が待っていると思いますよ。関西にあって、他にないわけがないんだから。

でも大丈夫。僕は16歳の時からいつもそれを突破してきた。どこに行ってもその姿勢は変わりません。そして僕の背中を見て、ここのみんなは変わってくれた。今も変わろうとしてくれているんです。

ときどきね、ピアノを弾きながら思うんですよ。何か残せたら良いなって。生きた証をね、何か……。

それは何なんだろう?って思った時に、少なくとも今の僕にはアインズなんです。

このあいだね、何年も前に辞めた女の子から、久しぶりに連絡があって。その子がまた、嬉しいこと言ってくれちゃって(笑)。

「アインズおっきなったなあ。社長、どこまで行くつもりなん?」

――「なぜこんなに愛されているのか」

ツイッターのフォロワー数は1万6千人超。繁華街に繰り出せば「北村さん、北村さん」と方々で声を掛けられるのが北村代表だ。

その理由はきっと、北村代表が常に丸裸だからなのだろう。彼は隠しごとをせず、常に全力でぶつかってくる。そして“何かで儲けよう”とするのではなく、“良いもので、見合った対価をもらおう”とする。それはウソのない価格、価値なのだ。だから彼は、関わった人間すべてに「誇りを持て」と言い続ける。

自分だけではない。みんなに価値があると、いちばんはじめに代表自身が信じ、戦った。だからこそ誰もが惹かれ、付いて行くのだろう。どの店舗も人気となるのだろう。

16歳で進学の“普通”を疑い、社会に飛び出した少年の冒険は、まだまだこれからだ。

(インタビュー:新海亨)

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「“普通”を疑い、“普通”を超えろ。常識に挑み続けた男の原点」~アインズグループ代表 北村一樹の冒険#1

北村 一樹(きたむら かずき)

大阪府堺市出身。風俗業界歴は13年を数える。18歳で水商売の世界に飛び込み、20歳で早くも店長に。2006年に風俗業界に身を転じると、代表として『ブレンダ』を中心に高級店を次々と成功させ、アインズを関西で押しも押されぬ大グループに成長させる。含蓄のあるツイートにはファンが多く、フォロワー数は1万6千人を超える。趣味はピアノで、目覚めには必ず鍵盤に向かう。

執筆者プロフィール

松坂 治良

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小さな出版社などを経て、”誠実に求人広告をつくろう“という姿勢に惹かれ、現職に就く。数年来クラシック音楽と仏教に傾倒中で、最近打たれた言葉は「芸者商売 仏の位 花と線香で 日をおくる(猷禅玄達)」。……向き合った相手の“人となり”や思いを、きちんと言葉にしたいと願う、今日このごろです。

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