「風俗は容姿じゃない。だから“イケる”と思った」 ~デッドボールグループ総監督・篠原政見のリアリズム#1~

2016年08月15日

by赤星 アキラ赤星 アキラ編集者

――鶯谷に“他店で不採用になるような女性”を集めた地雷専門店の第一人者がいる―『デッドボール』総監督・篠原政見(44)。

非常識と言えるコンセプトでマスコミに話題を提供し、超人気店を作り上げた。現在では、鶯谷・池袋・西川口の3店舗を展開。来年には、首都圏での新規出店も計画する。

また、昨年から弁護士・社会福祉士などと連携し、キャスト向け無料法律生活相談『風テラス』を展開。社会起業家としての顔も併せもつようになった。

風俗の経営者としては、まさに“異色尽くめ”と言える。

篠原さんは、なぜ前例のない道を切り拓き、結果を出し続けるのか。取材を通して見えてきたのは、「常識」を疑う透徹したリアリズムだ。

貧乏な生い立ちから憧れた“お金持ちのサラリーマン”

うち、地方ですごい貧乏だったんですよ。本当に貧乏だったので、金持ちいいなっていう。サラリーマン家庭が、もう金持ちに見えてたんですよ。

それで、高校卒業するって時に、あまりにも私がひどかったから、母方のおじさんに「ちゃんとした会社に入ったほうがいいぞ」って言われて。「なにやりたい?」って聞かれて、「サラリーマン」って答えて。ほんと世間知らずだったんで。

それで、無理やり東京で就職させられて、大手の会社にぶち込まれたって感じですね。

一部上場企業で見たチャンスと限界

会社に入った時、「なんか周りは大したことねえな」って思っちゃったんですよ。経営者みたいなものに憧れがあって、「結構いいとこまでいけんだろうな」って思ってて。

会社では、セールスの仕事をしてました。法人もやってましたけど、個人のほうが長かったです。営業は得意でしたよ。

でも、30代中盤になって、支社のマネージャーをやってましたが、高卒で執行役員は厳しいかなって思って。これから、さらに上にいったとしても年収1,000万が天井なんて、なんか夢がないなって思っていましたね。必死で働いて、社蓄みたいな。

会社って面倒くさいじゃないですか。自分でいいことを思いついても、稟議を通さなきゃならない。それが形になっても、どんだけ成果になったかわかりづらいし、給料に反映しづらいし。デカいとこって特にそうですよね。

だったら絶対自分でやったほうができるなっていう。

――2009年、篠原さんは「年収を3倍にする」と決めて脱サラを決意。

開業業種には、「資金が少なくて済む」「手っ取り早そう」という理由で、風俗業界を選んだ。割り切りの良さと、いい意味でのこだわりのなさは、今にも通じる篠原流だ。

篠原さんは、早速デリヘル店での修行を開始する。

風俗は容姿じゃない―だから“イケる”と思った

平戸大橋

風俗業界には友人も知人もいないですよ。だから、どんなもんかなって、飛び込みで。

当時、赤羽に住んでたんで、家から近い池袋のデリヘル店に入って、そこで3か月くらいやって。

その時、「風俗って、容姿は関係ないんだな」って思ったんですよ。私、風俗に行かないんで知らなかったんですけど。それまで、風俗ってキャバ嬢みたいなイメージだったんですよ。キラキラ着飾って、すっごいきれいなお姉さんがいて。

そしたら、とんでもないです。「マジか!?」って女性が、バンバン接客に行ってて、これでお客さん来るんだって驚いて。だったら、「不採用」って言っている人たちでも、もしかしたらいけるんじゃないかなって。

それで、鶯谷に「店出そう!」って決めたんです。

女性は修行したお店に、「(不採用の子がいたら)とりあえず連絡くださいよ」みたいな感じで、紹介してもらってました。

でも、それをやるには“激安店”という形で料金設定を抑えるのと、目立たなきゃいけないから、“地雷専門店”というわけです。

コンセプトは、私と広告屋さんで考えました。

私はサッカーが好きなんで、サッカーでやろうとしたんですけど、その人が、「野球でしょう! 篠原さん!」って言ってきて。結構年配の方だったんですけど、「日本人、私たち世代は野球がピンときますよ」って。「じゃあ、そうしましょう」ということで。

絶対目立つだろうなって思って。

デッドボールHP


――その後の『デッドボールグループ』の躍進は周知のとおりである。現在、旗艦である鶯谷店の実在籍数はおよそ160名。出勤率は業界平均とされる20%を大きく上回り、30%を超える。

『デッドボール』の勝因のひとつは、「風俗店はきれいな女性を集めなければ成功できない」という業界の常識にとらわれず、自由に発想できた点にあると言える。その背景には、なにがあったのか。篠原さんは語る。

自分自身、風俗を一回も利用したことがないんですけど、風俗の仕事をするにあたって、そこは重要じゃないんですよ。

風俗が好きでやってる経営者って、商売の幅を狭めてるんですよね。「風俗とはこういうものだ!」とか、そういう考えって、自分の幅でしか商売ができなくなってしまうんですよ。

それってすごく無駄なことだと思います。

――次回では、『デッドボール』のもうひとつの勝因である独自のPR戦略について明らかにしていく。

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「PRこそ経営の要! “おもしろ”から“社会派”へのしたたかな転換」~デッドボールグループ総監督・篠原政見のリアリズム#2~

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篠原 政見

1972年生まれ。高校卒業後、一部上場企業に就職。37歳の時、「年収を3倍にする」と決意し、風俗業界に参入した。好きな女性のタイプは、100人男がいたら100人いい女だという女性。最近、YouTubeにハマっている。著書に『なぜ「地雷専門店」は成功したのか?』(東邦出版、2014年)。
デッドボールグループ:公式サイト

執筆者プロフィール

赤星 アキラ

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元証券マン。リーマンショックを経て、ハタラクとジンセイをひたすら考え続ける。2015年春、縁あって風俗業界に転じ、FENIXプロジェクトを企画。Fenixzineを風俗でハタラク男性のプラットフォームにしていきたい。好きな音楽はV2。福岡市出身。

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