「セックスワークサミット行ってみた!」~SWSを作る人たち(後編)~

2016年09月01日

by赤星 アキラ赤星 アキラ編集者

――セックスワークサミットを作るキーパーソンへのインタビュー。第2回は、司会を担当する編集ライターの赤谷まりえさんと、受付をされている弁護士の徳田玲亜さんにお話を伺った。

坂爪くんとケンカして生まれたのが『セックスワークサミット』

赤谷まりえ

赤星:サミットに携わられるようになったきっかけを教えていただけませんか?
坂爪さんと最初ちょっとケンカされたって聞いたんですが……。

赤谷:そうなんですよ。

『ホワイトハンズ』っていう団体があるのを知って、HPを見たら、その当時は女が奉仕するみたいなイメージの写真が多く使われてて。それでちょうどタイミングよく坂爪くんのイベントがあったんで、ツッコミに行ったんですね。

「はじめまして。あなたの取り組みはおもしろいけど、結構足りない部分があるんじゃないの? なんか「女がアハンウフン」みたいな写真しか使ってないし、なにも考えずにHP作っちゃってんじゃないの?」って……。

赤星:いきなり初対面からズバッと(笑)

赤谷:超偉そうなんですけど、言っちゃったんです(笑)。そしたら坂爪くんはあの性格なので、「ふんふん、なるほど」みたいな感じで、聞いてくれて。

赤星:なんか包容力あるというか、受け入れてくださいますよね。

赤谷:そうなんですよ。

それで私は、さらに偉そうに、「もっと横のつながりを作ったほうがいいよ。自分の考えだけで突っ走らないで、当事者団体があるし、もっといろんな人たちの意見を知っていったほうがいいんじゃないの」って言ったんです。

そしたら連絡が来て、「“セックスワークサミット”っていうイベントを作ることにしたから、手伝って欲しい」って。

赤星:赤谷さんのコンセプトをそのまま形にするからと。

赤谷:そうそう。「じゃあ、私もできることは司会でもなんでもやります」と言って、その流れで携わるようになりました。後から、「赤谷さんがああやって突っ込んできたから、「じゃあ、やったろうじゃん」って思った」ということを聞きましたけどね(笑)。

是か非かではなく問題をテーブルに上げるのが大事

赤谷まりえ

赤星:企画・運営するうえで意識されているポイントはありますか?

赤谷:あくまでも「是か非か」というところ以外でやろうということを、サミットではすごく大事にしています。

細かいスタンスで言うと、私と坂爪くんの意見には違いがありますが、基本的なベースは、「とにかく問題をこのテーブルに上げよう」というところなんです。

今は議論自体が並んでない状態だから、とにかくトピックをテーブルに上げて、「こんな問題があるよ、ここにも問題があるよ。未熟なんだけどとにかく話そうじゃないか、言語化しようじゃないか」というところから始まっているんです。

たとえば、「最近、生中出しが流行っているんだけど」って私が言うと、坂爪くんが「それ今度サミットでやろうよ」という感じになって。文言とかキャスティングとか事務的なところは坂爪くんが進めていって、私は当日のライブ性というところを引き受けるっていう感じで行っています。

赤星:前回(2016年3月)、『俺の旅』の生駒編集長が登壇されていましたが、『俺の旅』って「生中出ししよう」っていう風俗情報誌でしたよね。あの時は気を遣われて司会をされたんじゃないかなと。

赤谷:風俗は欲望産業なので、「欲望あっていいじゃん」というスタンスでいます。

“あなたの合理、誰かの非合理(私の非合理、あなたの合理)”という赤谷の言葉があるんです。つまり、あなたにとっての正解がだれかにとっての不正解だし、逆もありますよね。その違いを考えることが重要だと思うんです。

男性スタッフの問題とサミットに来てほしい理由

赤谷まりえ

赤星:最後に、読者へメッセージを頂けますか。

赤谷:風俗業界には、男性スタッフさん特有の問題が放置されているような気がしているんです。キャストさんとの色恋問題ですとか、親戚や近しい人に言えないとか、古い体質の体育会系の店長がいて暴力を振るうとか。

たとえば、キャストさんが働きやすい環境を考えるときも、男性スタッフの労働問題との関係性ってすごく強いと思うんですよ。結局、全部がつながっていて。これから、もっと考えなくてはいけない問題だと思っています。

それからサミットですが、参加者からの質問を読み上げるときに、「そんな質問あるんだ」っていう驚きがあると思うんですよね。他人の視点を発見しに来てほしいです。

赤星:今日の『おかあさんグループ』齋藤代表のお話って、新しい視点が加わりますよね。世間的なデリヘルのスタンダードと、いい意味でかなり違うじゃないですか。

赤谷:そうですね。やはりビジネスとして成功している姿があると、説得力がありますよね。問題が起こる原因って、単純にコミュニケーション不足だったりするんです。「もっとそこを知っていればこういうことができた」とか、そのチャンネルを増やすために、サミットに来てほしいですね。

赤星:私自身、今日は目を開かされた思いです。ありがとうございました。

――風俗を是か非かありきで論じる方が多いなか、赤谷さんのバランスの良さは、とても新鮮なものに映る。男性スタッフにも強い関心をもつ赤谷さん。今後も坂爪さんの“(姉さん)女房役”として、男性スタッフの議論もリードしていっていただきたい。

最後にご登場いただくのは、会場で受付をしている弁護士の徳田玲亜さん。実は私、赤星とは学生時代の先輩後輩であり、10年ぶりの再会の場となったのが、他でもない『セックスワークサミット』なのだ。

“看板娘”から見たセックスワークサミットと読者へのメッセージ。Here we go!!

サミットでの出会いをもっともっと活用してほしい

徳田玲亜

赤星:サミットでの役割はどんな感じなんだっけ?

徳田:受付と書籍販売です。

赤星:いつもどんな想いで受付に立ってるの?

徳田:気軽な思い(笑)。

赤星:オレ、再会した時、かなりフクザツな思いだったよ(笑)。

徳田:(笑)

赤星:受付で名簿とか見てて、参加者の数とか傾向とかって、どんな感じなの?

徳田:やっぱり業界関係者が登壇される時は、店舗の方が多い気がします。参加者の数は、『デッドボール』の回とか、多分100人を超えていたと思います。

赤星:サミットをずっと見ていて、今後こうなっていってほしいって希望は?

徳田:もっとこの出会いをうまく活用してもらえるといいんじゃないかなって。

『風テラス』が実現したのも、坂爪さんと『デッドボール』さんと弁護士がうまくつながってできたものなので。本来は出会うことがない出会いが、ここにはあると思うんです。

風テラス
無店舗型の性風俗店(デリバリーヘルス)の待機部屋に、弁護士・臨床心理士・社会福祉士(ソーシャルワーカー)を派遣して、在籍女性の生活・法律相談に無料で応じる事業
出所:一般社団法人ホワイトハンズHP

ビジネスチャンスもあると思うんですよ。

以前、“大人のおもちゃ”の会社の人が来られていたことがあったんです。そういう風俗に密接な業種の人とお話できると、純粋におもしろいんじゃないかなって。

赤星:ほんとそうだよね。徳田ちゃんに(監修を)お願いしている『どMな風俗業界1年生が学ぶ法律講座』も、サミットでの出会いから始まっているよね。

徳田:ほんとそうですよね(笑)

赤星:今日はどうもありがとう。これからも宜しく(笑)

前編はこちら>>
「セックスワークサミット行ってみた!」~SWSを作る人たち(前編)~

セックスワークサミット

セックスワークサミット

これからの性風俗産業の進むべき方向性を議論するべく、2012年より全国で開催。毎回多彩なゲストと共に、セックスワークに関する熱い議論が繰り広げられている。主宰は、一般社団法人ホワイトハンズ(代表:坂爪真吾)
紹介ページ:セックスワークサミット:公式サイト

執筆者プロフィール

赤星 アキラ

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元証券マン。リーマンショックを経て、ハタラクとジンセイをひたすら考え続ける。2015年春、縁あって風俗業界に転じ、FENIXプロジェクトを企画。Fenixzineを風俗でハタラク男性のプラットフォームにしていきたい。好きな音楽はV2。福岡市出身。

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