最強ユニットは、どこまでも~『かりんとグループ』角田健次が今思うこと #03

2019年10月21日

by松坂 治良松坂 治良編集者・ライター

――どんな業界であっても、転職には少なからず不安やためらいがあるはずだ。特に、給与は気になるところだろう。

だからこそ、入社わずか4年目の30歳が高収入を得ている。このことを記事にしたかったのだが、インタビューは思わぬ方向へ。『かりんとグループ』の今後へと話が及んだ。

そこで語られた“これから”は、“風俗企業の将来像”のワクを、越えるものだった。

30歳にしては良い給与だと思う。でも、もっともっと

お金の話をするのが好きな人っていうのは、そんなにいないと思います。僕だって、自分が「幾らもらっています」なんて言いたくないですよ(笑)。

でもFENIX JOBさんで『転職フェア』もやることだし、個人的には、高い収入を得ることができないなら、わざわざ風俗業界に来ることはないと思っています。なので『かりんと』での道筋と言うか、こんな感じで登っていけるんだというのは、僕を例に伝えられればなと思います。

……ウチは本当に色んな人がいるから、五味みたいに「お金はもらえるならもらっておきます」みたいな店長もいるんですけどね(笑)。

前回も言いましたけど、渋谷で初めに店を見ていた時は、月の給与で言うと35万円でした。売上目標があって、達成したら40万円、50万円という感じで、1年半の間にポンポンポンと上がっていったんです。

それから五反田のお店を立ち上げて、今9か月を経て、良い時だと160万円ぐらいかな? 平均すると130万円ぐらいの給与だと思います、月にすると。

30歳にしては悪くない(笑)。少なくとも夢はあるでしょう? もっともっと欲しいと思っています。

責任を選ぶのか、選ばないのか。最後には自分が決める

でも、これはその分だけ責任も伴っての130万円ですからね。忘れないでほしい。

今の自分の立場で言えば、“遊んでてもクビにならない限り35万円の固定給”っていうんじゃない。もしも五反田の立ち上げに失敗していたら、極端な話、月の給与なしっていうことだってありえました。位置づけ的には、自分が経営者なのと同じなんです。

ただこれは、渋谷でここまでの成功ができた、前回もお話しましたけど、運営も女の子との関わり方というのを確立して、さらに新店を立ち上げてもやれるというものをつくったから、上が僕の様子を見て任せてくれているという前提があります。“やれるからやっている”と言えばいいですかね。

それに選べもします。「そこまで責任を背負いたくない。固定給50万円の店長で良い」と思う方もいるかもしれない。『かりんと』に必要な人財とみんなが思えば、そこで強制されたりはしないですよ。

ただ僕は上を見たかった。見たくて業界に入る方は、多いはずだと思うんです。

自分の年収は確かに良い。でも、そんなことよりも

そしてね、これが難しいんですけど、26歳で『かりんと』に入って、30歳で年収1,500万円超という立場になった……。

それでハッピーかと言ったら、そうでもないですよ(笑)。悪くはないけど、悲しい出来事はやっぱり悲しいし、ツラいことにはツラいと感じるし。幸福は金だけで得られるものではなくて、その立場になったらなったなりの苦労があります。

これはきっと、実際にそれだけの収入を手に入れたからこそ、言えることなんですけどね。落とす気もないですし(笑)。

ただはっきりしているのは、“これくらいのめり込んでこそ仕事なんだ”というのは、自分の中にあります。今僕が強く考えているのは、自分の収入ということよりも、『かりんと』の今後ですね。

みんなこの先も食っていけるのかと。それくらい視野が変わってきました。

風俗は永遠なのか? 設立時からの課題。今後のこと

ウチには色んなイベントをやる企画力があるし、『かりんとVR』のような新しい試みにもチャレンジし続けるでしょう。木村やにしやまは、風俗をカウンターカルチャーの1つとして考えているようなところもあるだろうし、思想的にやれることもたくさんあると思います。

でも風俗が永遠かと言ったら、そんなことは誰にもわかりませんよね。若年人口は減っていくし、彼らはさらに“草食化”するかもしれない。景気だってわからない……。

そもそもいわゆるソープランドやヘルスといった業態がある中、リーズナブルな価格を望む声や草食系男子のニーズに応える形で、『かりんと』のような手コキ店や『添い寝女子』のようなコンセプトエステが台頭した部分もあるわけですよね。

「さて、今後どうする?」は、店舗展開と同時に常にある課題です。

『かりラボ』始動。自分たちのメディアを持った

話し合いも持ちますよ、しょっちゅう。にしやま、木村を始め、みんなが集まって、会議をする。

最近で言えば『転職フェア』のプレゼンについてもそうだし、何よりも今は『かりラボ』ですよね。僕ら、自分たちでメディアを持つことにしたんです。法人化もしますよ。

ラジオに動画、記事もアップしていきたい。エンターテインメントとして風俗とエロを発信していきます。……いや、“ラボ”っていうぐらいだから、実験室ですよね。ジャンルにもとらわれなくていいぐらいに思っています。

「やめちまうか?!」。議論の果て、でも僕が言ったこと

初めに、僕らはチームじゃなくてユニットだと言ったでしょう? これは今回の『かりラボ』の件で、つくづく感じました。もうみんな、てんでバラバラのことを言いますから(笑)。話し合いの時には上も下もないんで、まさに喧々諤々ってやつですよ。

まず暇があるのかとか、軸はどこに置くんだとか、おもしろいことできんのかとかね。確かに数々の企画やイベントをやってきた『かりんと』だからこそ、周りの期待値だって、低くはないですよね。下手なことはできません。

僕は黙っていました。みんなが思いと意見をぶつけ合う中で、一言も話さなかった。ただじっと考え続けていただけなんですが、みんなには僕は「やりたくないんだ」と映っていたかもしれません。

議論に疲れきって朝、木村が「もういいよ! じゃあやめよう!」と言い出して(笑)。何でなのかな? 最後に一切しゃべっていなかった僕が、聞かれたんですよ。「角田、どう思う?」って……。

僕は言いました。もう腹は決まっていたんです。

「やろう。30年後の『かりんと』のために、この事業をやろうよ」

――青森から東京に来て、飢えていたと率直に語る青年。その彼は『かりんと』に入り、1,500万円超の年収を手に入れ、でも満たされず、まだ渇いていた。

その時に、“先”を提供できる企業がどれほどあるだろう。店舗展開ではなく、全く新しい事業を始めようとする風俗店は、多いとは言えないはずだ。

自分次第で高収入を得られるのは、この業界の“前提”だと角田氏は語る。30年後の夢を見据え、今ごろ彼らはまた集まって、好き放題に意見をぶつけ合い、怒鳴り、そして最後は笑っているのだろう。

『かりんと』は、ユニット。熱意のままにきっと、これからも走り続ける。

(インタビュー:新海亨)

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奈落に射した光~『かりんとグループ』角田健次が今思うこと #01

角田 健次(かくた けんじ)

青森県出身。業界歴は4年。進学のため18歳で上京するが、仕事の方に面白味を見出し、1年時に大学は中退。飲食から解体作業に至るまで、様々なアルバイトを経験する。25歳でバーの経営を始めるも、半年で挫折。ところが2015年、26歳で『かりんとグループ』に入社すると、経験を活かしてすぐに頭角を現し、現在は複数の店舗を見るスーパーエースとして活躍中。30歳。

執筆者プロフィール

松坂 治良

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小さな出版社などを経て、”誠実に求人広告をつくろう“という姿勢に惹かれ、現職に就く。数年来クラシック音楽と仏教に傾倒中で、最近打たれた言葉は「芸者商売 仏の位 花と線香で 日をおくる(猷禅玄達)」。……向き合った相手の“人となり”や思いを、きちんと言葉にしたいと願う、今日このごろです。

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