10代から建設現場に。鳶から始めて、何でもやった日々

地元は八王子です。高校を出てからずっと、建設系の現場仕事をしていました。

何でもやりましたよ。鳶職から始まって、大工仕事に内装のクロス貼り、外壁塗装まで。

あまりツラいという意識はなかったですね。友達や先輩がみんな同じ仕事をしていたので、自分も自然にという感じでしたし、最終的に“家”という形でゴールが見えるのも好きでした。2階から落ちて死にかけたようなこともあって、その意味ではキツい環境だった気もするんですけど（笑）、今でも「楽しかったな」と思い出すことの方が多いです。

ただ体力的なところで「ずっとは続けられないな」とは感じていました。また社長として経営に進む道もあったんですが、そこにも魅力を感じられなくて……。

建設系の中小零細企業経営者の仕事って、二次受け三次受けの会社や職人に、業務を分配することなんですね。そうすると結局は、“いかに自分の傘下に人を増やすか”というゲームになってきます。それならよっぽど現場の方が楽しいなって（笑）。利益の規模も見えちゃいましたね。

とは言え僕は、10代から1つの業界しか知りません。もうすぐ30代に入る。そこで“ゼロからでも収入の良い仕事”と考えた時に、この世界が頭に浮かんだんです。

「デリヘルなら自分でもやれるんじゃないか」

3年経っても月給30万円 ⇒ 2年も経たずに平均50万円

ところが世の中そうウマくはいきません（笑）。最初に勤めた高級店は、ずっと月給が変わりませんでした。オーナーがそのまま店長の小さいところで、スタッフも3人。仕方ないと言えば仕方ないんですが、3年間同じ月額30万円では、夢も持てなくて……。

そこで“次の店”と考えた時に『虎の穴』を選んだのは、知名度もそうですけど、何よりキャストさんの評価が高かったんですね。「今までいたお店でどこが一番良かった？」と聞いた時に、よく名前が挙がっていたんです。キャストさんが言うなら間違いなさそうじゃないですか（笑）。

実際入社後は順調に昇給しました。ドライバー勤務からスタートしたんですが、その時点で前職と同じ月給30万円。内勤になった2、3か月の時点で35万円。1年もすると、歩合給を併せて40万円頂けるようになりました。今は平均50万円ぐらいかな？

しかも僕は、特に役職が付いているわけではないですからね（笑）。ヒラでも歩合給を含めれば、それぐらいの月給になる。組織がしっかりしていて計画的に事業運営されているから、それが十分可能なんです。頑張りに応えてもらえるんですね。

4つの部署、“適材適所”で業務効率化。得意分野を活かせる

更に今は事業の効率化も進んでいます。1年ほどして一通りの業務を覚えたら、1人ひとりが“得意分野”を活かせる部署に配属されるんです。現在はキャストさんを担当するマネジメント部、お客様への窓口となる営業部、車の手配を担う運営部、予算も含めて全体をまとめる管理部の4つの部署があります。

急なお休みやシフトの変更ということはどうしてもあるので、“できない業務”があるのはマズいですよね。ただ不得意な分野をムリに続けるのは、自分にはストレスだし、サービス業という観点では、お客様にとってもマイナスです。“適材適所”こそ、誰にとってもハッピーな選択肢ということなんですね。

僕について言えば、運営部に配属されています。もう業界も長いのに恥ずかしいんですが（笑）、接客がちょっと苦手なんですね。道路には精通していたし、細かい時間配分には長けていたので、「それなら」ということで、役割を与えられた感じです。

押し付けない“自由出勤”。なのになぜ、キャスト数を保てるのか

さっき「キャストさんの評価が高かった」と言いましたけど、入ってからの印象も変わりません。僕が触れてきたこの2年間、どのキャストさんも「ここは働きやすい」と仰ってくれて。

なぜか？というのは、スタッフが“押し付けない”ということを徹底しているからだと感じます。例えば「休みたい」となっても、マネジメント部の方々が“怒る”ということはないです。基本的には自由出勤なんですね。

それでもキャストさんが「来たい」となるのは、僕らと同じで「稼ぎたい」という思いが彼女達にあるからだし、そのためにスタッフも頑張っているからですよね。だから例えば、営業ツールとして“写メ日記”があるという話は僕らもします。毎日更新すれば、必ずと言って良いほど効果があるよと。

その上でやっぱりやらないキャストさんはいて、それはそれで仕方がないというか、それで構わないんですよね。収入の目標額も各々でしょうし……。

でも「なかなか集客に結びつかない。どうしたら？」とキャストさんが相談してくれたら、そこはもう僕らは“全力”です。効果のある時間帯から、キャストさんの個性に合わせたテキストまで、一緒になって考えます。

押し付けないけど、請われれば労力は惜しまない。最後は人同士ですから、見てくれるキャストさんもちゃんといるんですね。だから在籍数も出勤数も確保できて、利益を生めているんだと思います。

誰もが“自分らしく”。みんなの“Win-Win”が目指されている

そして“押し付けない”は、スタッフについても同様なんですよね。だからこそ部署分けがあって、適材適所の方針がある。キャストさん、スタッフ、お客様、みんなの“Win-Win”が目指されているのが『虎の穴』なのかなと。

実際内勤だけではなくて、僕が今接しているドライバーさん達も、週に1日か2日の短日勤務という方から、送迎だけで月に60万円稼ぐという方まで、幅広い働き方が許されています。それぞれが“自分らしく”仕事できるんですね。

だからみんなのモチベーションが維持できて、組織的な事業運営ができる？　それは難しい質問ですね。逆に組織がしっかりしているからこそ、個々の自由が許されている気もするし……。案外どちらも正解なのかもしれません

（インタビュー：松坂治良）

取材後記

執筆者

藤野 りさ

建設業からサービス業へ。ご自身その点は多くを語りませんが、慣れるまでにはご苦労もあったと思います。現在はまさに“適所”を得て、のびのびと働いていらっしゃる伊藤さん。個性が尊重される職場は、羨ましいほどです。