バイトなんかで終わらせない 総務・人事の宇佐美さん(シンデレラFCグループ)中編~ナイトワーク『ピックアップ スタッフ』~

2025年07月29日

by松坂 治良松坂 治良編集者・ライター

――ダンスと出会い、早稲田大学を中退した青年宇佐美鉄二。やがて「超が付く」と自身語るほどのブラック企業に就職し、涙と自動車事故を起こすほどの激務の日々を送る。

その後は転職が続き、30歳を迎えた彼は今や無職だ。ときは2010年。なぜ『シンデレラFCグループ』に出会うことになったのだろう。

「“顔”が違うだろう。正社員やっちゃいなよ」……???

ライブチャットのプロダクションを辞め、私はまたもや無職に。30歳でしたか。まあでものんきと言えばのんきなんですよ(笑)。

「正社員の職が見つかるまで、何かバイトしないと」

それぐらいの気持ちでネット検索して見つけたのが、『シンデレラFC』のオペレーター業務でした。で、「あ、デリヘルか」と。

抵抗? ないですないです。それまでもライブチャットに関わっていましたし、なんというのかな……。早稲田を中退した時点で、一流企業がどうとか、“勝ち組負け組”みたいな意識は私から消えちゃったんですよ。

すべて投げうって、プロのダンサーを目指したぐらいですからね。興味で動いちゃう。むしろ日払いが嬉しかったし、「どんな世界なんだろう?」って、好奇心の方が強かったですよ。

現に面接官からしておもしろかった。初対面でいきなりこう言われたんです。

「君、顔がアルバイトっぽくないね。正社員やっちゃわない?」

立ち読みで総務を勉強。経費削減効果は、1,000万円?!

“バイトっぽい顔”ってなんなんですかね?(笑) 今でも意味はよくわかりませんが、「正社員に」というお誘いは、30代を迎えた自分にはやはりありがたい言葉でした。

しかも「もう営業には疲れて」という話をしたら、「バックヤードに行けばいい」って、総務・人事の部署に回してくれたんです。

2003年誕生の『シンデレラ』ですから、当時でも設立から12年とか13年というところですか。部署分けや役割分担が始まっていたんですね。今から振り返ると、さすがと言えばさすがです。先々や将来を見据えていたんでしょう。

とは言え総務なんて私、何1つわかりません(笑)。部の先輩2人に教わりつつ、暇さえあれば本屋に通って、立ち読みで勉強しまくりました。

ど素人でコワいもの知らずなのが良かったし、組織の「どんどんやれ」と背中を後押ししてくれる風土にも助けられた気がします。私が最初に目を付けたのは、“コストカット”。色々調べて実践したら、月に数百万円から、多い時で1,000万円近くの経費を削減できたんです。

それが評価されたのか、気がつけば責任者として色んなことを抱えるようになりましたけど、無我夢中。バリバリやりがいを感じていました。

「電話を鳴らさなきゃ」 “現場”で叩き込まれたリアル

会社にはほんとに感謝してますね。それからも“先回り”して、たくさんの助言をくれたんですよ。例えば「現場も学んどきな」って。

「ずっと総務と人事回してくれるにしても、ゼッタイその方がいい」

新宿や池袋の店で、2年弱でしたか。「お電話ありがとうございます」からやる完全な現場スタッフです。

実際良い経験になりました。「ウチのみんなすごいんだな」と思えましたもん。

女の子の出勤時間に合わせて、予約をコントロールする緻密な計算。お客様を待たせず、気持ちよくご案内するための頭の回転。何よりも現場のチームワークですね。「この仕事って難しいし、奥が深いんだ」って、皆さんをリスペクトするようになりました。

一番叩き込まれたのは“電話が鳴らなきゃ始まらない”という意識ですね。メルマガ1つ、告知文1つ、「これでお客様は利用したくなるか?」と常に考える。この感覚は、現在に至る私のすべての業務に活きています。

総務、SNS、英語SEOに動画。「飽きない」から15年

事実店舗から戻って以来、総務・人事のほかにも様々携わりましたが、頭には常に“電話を鳴らす=集客”がありました。

中でもコロナ前から始めた英語サイトのSEO対策が功を奏して、現在インバウンドだけで月々かなりの売上になっています。

最近はSNSチームのリーダーも。TikTokやYouTubeの動画を私自身が撮影し、編集までしています。リーダーが何も知らないんじゃメンバーもやりにくいし、響かないでしょう。

これも先ほど触れた現場での経験が活きていますよね。店舗を知る人事と、バックヤードしか知らない人事。どちらの言うことに耳を傾けてもらえるかと言ったら、おのずから明らかじゃいですか。新しい企画を進める時だって、一緒なんです。

裁量権は頑張りと実力の結果。“フェアな風土”が嬉しい

お伝えしてきたように、『シンデレラ』は、成果を出した人間には「じゃあこれも任せてみよう」って、新しい仕事を“くっつけてくれる”んですね。私飽き性なんで、最高の環境。10年どころか15年以上続けられているのは、会社が飽きる暇をくれないからですよ(笑)。

もちろん提案もOK。私なんて入社したての頃はガンガン提案してましたよ。コストカットからしてそうだし……。

ExcelやGoogleスプレッドシートで提案内容をリスト化し、却下されたら理由と改善案を書き留めて、また持っていく。それを繰り返していれば、よほどピントがズレていない限り、上もかわいがってくれるというか「こいつ頑張るな。やるな」って、認めてくれるんです。

確かに今となっては、長年の信頼関係で自由にやらせてもらえている部分もあるでしょう。でも裁量権だって“頑張りの結果”だし、身に付けた実力。すごくフェアな企業だと感じています。

――正社員採用の感謝を胸に仕事に燃え、次々と成果を出し続けた宇佐美さん。今や組織に不可欠な存在となったようだ。

そんな彼は“現場”も知っている。人事担当としてスタッフ採用にはどう向き合ってきたのだろう? また『シンデレラ』の未来についてはどう考えているのか。次回の後編で、最後に聞いてみよう。

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どうしても、踊りたかった 総務・人事の宇佐美さん(シンデレラFCグループ)前編~ナイトワーク『ピックアップ スタッフ』~

執筆者プロフィール

松坂 治良

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小さな出版社などを経て、”誠実に求人広告をつくろう“という姿勢に惹かれ、現職に就く。数年来クラシック音楽と仏教に傾倒中で、最近打たれた言葉は「芸者商売 仏の位 花と線香で 日をおくる(猷禅玄達)」。……向き合った相手の“人となり”や思いを、きちんと言葉にしたいと願う、今日このごろです。

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