まず“相手”を知ろう マニュアル企画部のしおりさん(BBW)前編~ナイトワーク『ピックアップ スタッフ』~

2026年02月26日

by松坂 治良松坂 治良編集者・ライター

――“Big Beautiful Woman”

ぽっちゃりを“魅力”として捉え、従来のデリヘル、更には他のぽっちゃり店とも一線を画す店舗展開を続けてきた『BBW』。東京・横浜・埼玉・千葉ばかりか、既に札幌や名古屋にまでエリアを広げている。

今回のインタビューのお相手は、同社の相澤しおりさん(25)。事前に“マニュアル企画部”に所属と伺っていた。

「スタッフさんやキャストさんのために、マニュアルを作るお仕事、という理解でいいですか?」
「はい。合ってます」
「内勤業務の合間に、みたいなイメージでしょうか」
「? いえ、私ほかの仕事はしていません」

……すぐには意味がわからなかった。「アルバイトだから?」とも思ったが正社員。週休2日で実働も9時間というからなおさらだ。

「週5日ずっとその業務ですか?」
「ですです(笑)。ただひたすら“マニュアルだけ”を作ってます」

さすがは『BBW』と言うべきだろうか。ここまでの“適材適所”が進んでいるとは、想像もしなかった。

リモート講義だけの毎日。「いきなり社会人できる?」

大学は法学部に進みました。将来は警察関係の職に就きたくて。

ところがちょうどコロナ禍だったんですね。リモート講義だけで3年生まで進み、家にこもってパソコンに向かうだけの毎日。最後はもうイヤになっちゃたし、不安にもなりました。

「このままバイトもせず卒業して、いきなり社会人になれる?」

で、もういいかと(笑)。その気になれば大学は後からだって入りなおせるし、中退して就職しようと決めたんです。「世の中を知りたい」という気持ちが強かった気がします。

大学中退。ベンチャー企業で検証記事のWebライターに

最初に勤めた会社では、まずWebライターをしました。“検証記事”を書く仕事ですね。食品、コスメ、家電という形でテーマを与えられて、色んな商品を比較。「どれが一番おすすめか」をレビューするんです。

楽しかったですよ。もともと書くのは嫌いじゃないし、情報を集めて精査して、文章にしていく過程もおもしろくて。

やがて半年ほど経った頃でしたか。“事業推進部”という部署に異動になったことが、現在のキャリアに繋がるきっかけになりました。

「後輩や新入社員のために、“記事を書くためのマニュアル”を作ってほしい」

ちょうど会社がベンチャーから安定した企業に変わろうとしている時期で。組織の規模も大きくなり、「ノウハウを口で伝えるだけじゃなくて、文章で残したい」という機運になっていたんですね。人によって記事のクオリティがバラバラなのも問題になっていて……。

やりがいはすごくありました。教えることであらためて発見もあったし、何より“数字”ですね。

マニュアルを元にした記事がアップされて、それがアクセス数として結果に表れる。「見てくれたんだな」というのはすぐにわかるし、成果が認められて昇給もしました。検証記事だけではなく、他部署のマニュアル作りも担当するようになったぐらいです。

部署を跨いでのマニュアル作り。“相手を知る”大切さ

部署を跨ぐようになって心がけたのは、コミュニケーションですね。中には海外が拠点の部署もあったので、特に気を遣いました。

マニュアルの文章って、相手を知らないと書けないんです。

“こちらの意図”で良かれと思って書いても、向こうの得たい情報が載っていなかったり、理解のスキルが届いていないと伝わらない。読んでももらえません。

ほら、家電の説明書なんかでよく、「これ文章にしたら逆に伝わらなくない?」みたいなのあるでしょう(笑)。あれもユーザーのことを考えていないから起こっちゃうんですよね。

このミスマッチを解消するためには、とにかく話すしかない。少しでもわからないことがあったら、「バカな質問かな」と恥ずかしくても聞く。“何が求められているのか。どういうものが欲しいのか”を逐一確認しながら作っていきました。

“女の子ファースト”に共感。前職に興味も示してくれた

ただ2年ほど経った頃でしたか。なんとなく物足りなさを感じるようになったんですね。

どの部署の方もマニュアルを喜んでくれる。社のためになっているのはわかる。でも「もっと多くの人に」と願うようになりました。

たぶん“誰かの役に立つ”というのが私が働く一番のモチベーションなんですね。決まった人、1つの会社という“枠組み”が飽き足らなくなっていたんだと思います。もう少し仕事の幅を広げたくなって……。

それでなぜこの業界に、というのは、実は私自身にキャスト経験があったんですね。学生時代に3年ほど続けて、おかげで奨学金を全額返済。本当にお世話になりました。

恩返しと言うと大げさですけど、「人のために」という希望もあったからこそ、「今度は自分がスタッフとして、キャストさんを支えたい」という思いになったのかなと。

中でも『BBW』だった理由は、社長の面接でした。

「ウチはとにかく女の子ファースト」という言葉が響いたし、私の前職にも意外なほど興味を持ってくれたんです。

「マニュアルか。いいね。いつかウチでも作ってよ」

元キャストだからこそ見えた「スタッフさんのおかげ」

……どこまで本気だったのか?(笑) わかりません。

実際最初の1年は普通に店舗スタッフをしました。電話を取り、Webサイトを更新し、キャストさんのサポートをしてという過程で感じたのは、「スタッフさんてたいへんだったんだな」ということ。

キャストの時って、たぶん何も考えてなかったんですよね。自分がどうサイトで表示されるかとか、お電話口でどんなアピールがされているかとか、くわしいことは知ろうともしていなくて。

自分がそれをやるようになって初めて、「こんなに重要なことしてくれてたんだ」「スタッフさんのおかげが随分あったんだ」と思うようになりました。

“良い方向”への導きが重要。無愛想な子とも話をした

もう1つ強く思ったのは、「色んなキャストさんがいるんだな」と。最初は戸惑うぐらいだったんです。

例えば昔の私はけっこうマジメなキャストだったみたいで(笑)。時間も守ったし、当日の欠勤もしたことがありません。

だから「こんなに遅刻するんだ」「直前に欠勤の連絡が来ちゃうのか」とびっくりしてしまって……。

イライラとは違いますね。「なんでだろう?」と。責めるのも“私の常識”を押しつけるのも、きっと逆効果でしょう。積極的に話を聞きに行き、1人ひとりのことを知り、その上で一緒に対策を練りました。

「どうして遅れちゃうの?」
「めんどくさくなっちゃったかな」

やっぱり社長の言葉が大きいですよね。ビシバシ厳しくするのはゼッタイ“女の子ファースト”じゃない。せっかく『BBW』を選んでくれたんだから、良い方向に、稼げるように導くのがスタッフの役割だと感じたんです。

それに接してみると、待機室で無言の子もほんとは言い出せないだけで、背中でSOSを出していたりしたんですよね。話してみたらめちゃくちゃ笑う子だったとか、おもしろい子だったというのもいっぱいあって。

根っから無愛想な子なんてほとんどいなくて、“みんなどこかで話すきっかけを探している”というのが、正直な実感なんです。

――前職で“相手を知る大切さ”を学び、今また“1人ひとりを知るところから”と語るしおりさん。マニュアル作りと店舗運営の“共通点”には驚かされる思いだ。

さてだが、こうして現場で活躍していながら、なぜ彼女は『BBW』でも再び“マニュアル専任”となったのだろう? 次回くわしく話を聞いた。

執筆者プロフィール

松坂 治良

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小さな出版社などを経て、”誠実に求人広告をつくろう“という姿勢に惹かれ、現職に就く。数年来クラシック音楽と仏教に傾倒中で、最近打たれた言葉は「芸者商売 仏の位 花と線香で 日をおくる(猷禅玄達)」。……向き合った相手の“人となり”や思いを、きちんと言葉にしたいと願う、今日このごろです。

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