「風俗はすでにマニアックな趣味となっている」~『kaku-butsu』の真髄教えます 金丸伸吾代表#1~
2017年08月03日
覆面調査という手法を使い関東圏の風俗店をランキングする斬新な切り口で、ユーザーから大きな信頼を得ている『kaku-butsu』。
これまで「ウソ」や「誇大広告」がまかり通っていた風俗業界をより健全な世界にするべく、2012年に立ち上げられたランキングサイトだ。運営するのはAV界の巨人ソフト・オン・デマンド。
今回の主人公は、立ち上げ当初から参画している代表の金丸伸吾さん。元フリーのコンサルタントで大手企業の経営にも携わってきたという、アダルト業界においては異色な経歴の持ち主だ。
立ち上げの経緯から、覆面調査のノウハウ、今後の展開、知られざる金丸代表の素顔まで、あらゆる角度から話を伺った。
AV市場の拡大が鈍化する中、次なる一手として生まれた『kaku-butsu』
『kaku-butsu』自体はもともとソフト・オン・デマンド(以下SOD)の新規事業としてスタートしました。AV業界自体が市場として大きくなったところで、「次の10年でアダルトを総合的にとらえよう」という考えがスタートです。
AV専門だった企業だけど、今後は手広くエロをやっていきましょうという発想があって、その中に『kaku-butsu』があったわけですが、女性向けAVがあったり、エロゲーがあったり、抜きなしエステみたいなことをやってみたり、アイドル事業をやってみたりと。
どれが当たるかわからない状況だったので、10、20と立ち上げた中の1つが『kaku-butsu』です。
風俗店を採点するというコンセプトはSODの代表、高橋(がなり)さんや僕とかが一緒になって形成していったものですね。もともと高橋さんには「店舗を調査すればいいんじゃないの?」みたいな考えがあって、それを具体的にどうやっていくかの戦略を僕たちが作ったという感じです。
よくいろんな人に話しているのが、20年ぐらい前のアダルトビデオ、特にセルビデオって、客をだまして当たり前だったんですよ。
1本1万円ぐらいの価格で、3本に1本当たりがあればいいような状況だったのを、すべて当たりにしようとしたのが、SODが最初にやったビジネスです。
同じような状況が風俗業界でも起きていて、今はだいぶ変わりましたけど、お客さんをダマせればいいやという発想がまかり通っていました。
そこで、実はSODが風俗店をやるということも考えたんですよ。自分たちがいいお店を出して、業界健全化というか、全体を変えていこうというプランです。
でも、当時からすでに優良な風俗店は存在していたので、我々が第三者機関の立場をとって業界の価値観というものを作ることができるのではないか。という思いで『kaku-butsu』をスタートさせました。
その思いはスタートから現在まで、途切れることなく続いています。
クレーム続出! 外部から評価されることに対する風俗店の反感
立ち上げ当初は店舗からのクレームも多かったですし、呼び出されたこともありましたよ(笑)。
理由としては、評価をされるという行為自体に対する抵抗感が一番多かったんだと思います。
我々は第三者機関だといっても、NPOでもなんでもないし、慈善事業でもないんです。店舗が客観的に評価されることによって、マッチングも含めて、「この女の子はこんな人に向いている」という情報を提供していく。
それを提灯記事ではない形で書いているということを、クレームを言ってくる風俗店には説明するわけです。
この調査機関としての形が、やっぱりお客さんが求めていたものだったんですよね。結果的に客足が増えることにつながっていったんです。お互いビジネスなので、そこを理解してくれる店舗は納得していただけましたね。
僕らはテレビの民放みたいなシステムにはしたくないんです。いい方は悪いですが、テレビの視聴者はスポンサーを獲得するための「餌」になってしまっている。我々がそれをやってしまうと、『kaku-butsu』の第三者機関としてのバランスが完全に崩れてしまうんです。
店舗を喜ばせるためにユーザーを使うのではなく、『kaku-butsu』はユーザーのためのサイトとして存在し、そこに店舗がプロモーションをかけるという関係性っていうのが私たちの目指してきたものなんです。
風俗がマニアックなものとされる時代、お店はPRとして『kaku-butsu』を利用してほしい
風俗店が『kaku-butsu』に情報を載せる最大のメリットって、自分たちがちゃんとした店であることを客観的に証明してもらう、PR的な部分にあると思うんです。
広告っていうのは自分たちが自分たちの言葉で、「僕らはいいお店ですよ」といっているだけですよね。
そうではなくって、PRっていうのは第三者が評価してくれるというのがすごく重要なんですよ。その価値を店舗のプロモーションとして使ってほしい、強いて言えば、もっと「根拠」に使ってほしいですよね。
たとえば、キャストさんのプロフィール欄に『kaku-butsu』のリンクを貼ってくれれば、その子の魅力を伝えられるわけです。
「『kaku-butsu』からの評価では彼女は85点です」とか。もしくは、コメント欄に『kaku-butsu』の文章を一部引用してくれても全然かまわないと思っています。
第三者の評価だからこそ、信頼性があり、PR効果が生まれるんです。
『kaku-butsu』では、頭が悪くないサイトを作ろうとしています。見た目も含めてですね。風俗ってそれなりにお金がないと行けないじゃないですか。
ということは、意外と高収入の方が多い。そういった方が日々読むのはエロ本やエロ漫画ではなくて、日経だったり、BSの番組だったり、そういう人たちが納得するサイトを心がけています。
もうひとつ重要なのは、あまり風俗のヘビーユーザーをターゲットにはしていないこと。一番狙っているのは、風俗に行かなくなった人、行ったことがない人。業界のパイを取り合う気はあまりないんですよね。
今の風俗は非常にマニアックになってきていて、すごくニッチなニーズに対応できるくらい多種多様のジャンルやサービスが乱立している状態だと思うんです。
そういった中で、風俗に行く人は行く、行かない人はまったく行かないという状況になってますよね。
昔みたいに飲んだ勢いで先輩が連れていくみたいなことも少なくなりましたし、風俗に行くのは個人の行為として存在しているけど、ネット以外では他者と共有しないものになってきている。
そうなると、どんどん行く人は限られちゃうんですよね。本来であれば、誰が行ってもいいはずなのに。
箱型の店舗がどんどんなくなっているがゆえに、人と行くという文化がなくなってきている。お客さんからお客さんへの口コミも減っています。
バーに行く人も減っているといわれているんですけど、その最大の要因はやっぱり連れていく人がいないということ。
そんな、人から人への口コミが少なくなった現代において、客観的なレポートでランキングを行う『kaku-butsu』がその役割を担いたいんです。
――いつの間にか風俗が「マニアック」な存在となってしまった現在。
そんな時代において『kaku-butsu』は、これまでノータッチだったソープランドの対象化、関西方面への進出など、意欲的な事業拡大を進めている。次回のインタビューでは『kaku-butsu』の新しい試みにフォーカスする。
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金丸 伸吾
1981年生まれ。五反田生まれ。新大久保育ち。大手企業のコンサルティングを勤め、多くの企業経営改善に携わる。2012年の『kaku-butsu』発足当初から調査団員として企画に参加。その後、運営や媒体戦略に携わり、現在は代表として、風俗業界の“健全化”と“新しいカルチャー確立”のために尽力する。好きになタイプは身長163cmの女性。尊敬する人物は高橋がなりとウィンストン・チャーチル。『kaku-butsu』:公式サイト
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