「前年比100%!? 飛躍の核心」~なぜ“やれた”のか。プレジャーファクトリーグループ代表 斎藤義之#02

2020年01月21日

by松坂 治良松坂 治良編集者・ライター

――埼玉県と千葉県の2つをまたがり、15店舗を構える『プレジャーファクトリーグループ』。斎藤代表が入社したのは、21歳の時だ。

店長まで2年、3年と費やす者も多い中で、彼はすぐに頭角を現すのだが、話を聞けば聞くほど、「この方なら当たり前だろう」と思えてしまう。“初めから”実践的なのだ。

22歳で店長に。“このひとがいなきゃ”からの脱却

入社した時には『ドッチパイモミ』というお店がすでにあって、しばらくはそこで1スタッフとして働いていたんですが、兄から「人妻店を出す」と言われたんですね。そしてそこで、店長をやってみろと……。

それが2008年のことだから、11年前、22歳の時ですね。『内緒の関係 越谷店』がオープンしました。

差別化のために、周りの競合店よりも価格設定を高めに置いたんですが、立ち上げ当初は苦労しました。お客様が日に3本付けば良い方で。

その不安定さもあって、まず僕が考えたのは、キャストさんに依存しないお店づくりでした。

要は、“このひとがいなきゃ”“このひとで持っている”というお店づくりだと、極端な話、そのキャストさんが辞めてしまえばお店は潰れてしまうんです。そもそも新規オープンのお店に、“黙っていても人気が出るキャストさん”の応募を待っている余裕はありませんよね。

ならどうするか。

“お店のファン”をつくるんです。店そのものをブランドにする。

“ブランドづくり”。電話だけでは終わらない

早速僕はこの“ブランドづくり”を実践しました。まず電話口で「リピーターの方だな」とわかったら、「先日はどうも」とご挨拶するんですね。このために細かいことから何からデータベースに残しておくんです。

同時に僕の名前や連絡先も会話の中にさりげなく織り交ぜて、お客様との関係の密度を濃くします。自分がお客様の立場だったらと思えば、“覚えていてくれた”というのはありがたいことなんですね。嫌がられたことは1度もないですよ。

そしてここまでなら、他社でもやっていたかもしれません。実は僕はさらに、お客様1人ひとりに向けて、直筆で手紙を書いたんですよ。

「店長からです」と、キャストさんに“サンキューレター”を託したんですね。お客様は手紙ということにまず驚きますし、内容も“自分だけ”に宛てられた、利用に対するくわしいお礼なので、2度びっくりするんです。

「いや、ありがとう。初めてだよ」

キャストさんがお店に戻るか戻らないかで、逆にお礼の電話をいただいたこともありました(笑)。

看板キャストは構わなくて良い。なぜそう言えるのか

もう1つ僕が行ったのは、キャストマネジメントのシステム化です。誤解しているスタッフが多かったんですよ。

例えば、毎日出勤するキャストさんにばかり話しかけるスタッフがいる。日々顔を合わせるから、話しやすいんでしょうね。その後に久しぶりに「おはようございます」と来た子には目が入らなかったりして……。

皆勤賞の子は、すでにここの居心地が良いんです。“他に気を配らなきゃいけない子がいるだろう”というケースが、散見されたんですね。

かと思えば、いわゆる“人気嬢”にばかり気を遣うスタッフがいました。“お店の看板だから逃したらたいへん”ということなんでしょうが、繰り返しになりますけど、こうしたマンパワーに頼ったお店作りでは、安定は確保できないんです。

そもそも“できる子は黙っていたってできる”というのは、どの世界でも同じなんですね。こういう子はスタッフがああだこうだ気を遣うよりも、放っておいて写メ日記の更新や自分のケア、休息に時間を当ててもらった方が良いんです。

それこそ余裕があれば、他の子の相談に乗ってもらったって良いですよね。この辺りも、こちらが余計なお世話を焼かなくたって、キャストさん同士で勝手にお喋りしてくれるものなんですよ。

効率化・システム化で得られる最大のものは何か

そこで僕は、人ごと、ケースごとに、マニュアルをつくることにしました。

こういう子は優先的にお話を聞きましょう。この相談にはこう答え、じっくり向き合いましょう。逆にこんな子にはそれほど時間はかけなくて良いから、表情にだけきっちり目を配るようにしましょう……という感じですね。

さっき言ったみたいな間違いがなぜ起こるかというと、状況に流されちゃうということと、個々の感覚に依っちゃうということなんですね。統一的なマニュアルがあれば、劇的に効果が上がるはずだと考えました。

そして、こうしてできた“時間”というのは、キャストマネジメントにだけ使えるわけではないんです。他のどの業務に使ったって良いし、休憩や休日にだって当てられる。効率化・システム化というのは、時間を生んでくれるんですね。

店長のキャパオーバー。組織化こそ、解決に有効

最後に僕が行ったのは、業務の合理化です。

僕が店長を始めた当時というのは、キャストさん対応に限らず、すごく非効率的だったんですね。各店に店長がいて、その各々がトップとして、電話応対からスタッフ教育、シフト管理にキャストマネジメント、予算管理、有料広告選定、競合調査まで、ぜんぶやるという感じだったんです。

これでは店長はキャパオーバーになってしまうか、お休みなしということになっちゃうんですね。業務量が多いということだけではないんです。それぞれに得意分野と苦手なことがあるはずなのに、がむしゃらに全部やらせることには、ムダが多いんですよ。

だからまだ若輩の店長だったわけですが(笑)、僕は提案したんです。「組織化しましょう」って。Web担当はWeb、お金の流れは総務・経理、広告には広報部を設けて、店長は店長として、お店のことに専念できる体制をつくりましょうよって……。

経営学の実践。“サンキューレター”は、他業界では当然

効果はすぐに表れました。『内緒の関係』は越谷ナンバー1の売上を誇るお店になりましたし、キャストの定着率も上がりました。

プレジャーファクトリーグループ全体で見ても、売上は前年から2,000万円近く上がりました。対前年比で100%以上売上が伸びたんです。

「こんなにも?!」というのは、正直自分自身でも驚きでした。なぜなら例えば、“サンキューレター”というのは、高級旅館とか外車のディーラーさんなんかは、昔から当たり前にやっていたことなんですね。裾野も広がっていて、不動産業や広告代理店さん、眼鏡屋さんでもやっていました。べつに僕の発明じゃないんですよ。

組織化だってそうですよね。部署ごとに分けた方が効率的なのは、企業はみんな知っています。だからこそ経理部があって、税理士さんという職業もあるわけですから。

僕はただ、経営を学んでいて、人より情報量が多かった。勝因は何だったのかというと、他では行われていることが、単にまだ埼玉の風俗業界では行われていなかったということ……。

そしてここが大事なんですが、思いつく人はこの業界にもいたかもしれないんです。ただ、思うこととやることの間には、実は大きな飛躍があるんですね。僕はまず“やってみた”んですよ。ここがすごく大きい。トライアンドエラーで、失敗だってたくさんしたんですから(笑)。

現にこの時期だって、想定外のことが起こりました。兄と共同経営をしていた代表から、僕はこう言われてしまうんです。

「斎藤、グループを引き受けてくれないか?」

――学んだ“経営学”の実践。『プレジャーファクトリー』が成長できたのは、「当時埼玉の風俗業界ではやられていなかっただけ」と、斎藤代表は冷静に分析する。

だが自分ではそう見えていたとしても、他人がそう判断するとは限らないのだ。前年売上比100%増という結果に、周りは否が応でも、彼が次のステージへ立つことを望んだ。

この時25歳。果して斎藤青年は、すぐに代表を引き受けたのだろうか……

(インタビュー:新海亨)

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「代表は、25歳。躓きと、成功と」~なぜ“やれた”のか。プレジャーファクトリーグループ代表 斎藤義之#03

斎藤 義之(さいとう よしゆき)

東京都出身。業界歴は11年。中高生時代から経営に興味を持ち、大学に進むものの、退屈さから18歳でバーの経営に携わる。その後21歳で『プレジャーファクトリーグループ』に入社すると、2011年、若干25歳で代表に。2019年現在FC含めて15店舗のデリバリーヘルスを運営するだけではなく、不動産ほか、多角的な事業展開をする企業体にまで、グループを育てている。33歳。

執筆者プロフィール

松坂 治良

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小さな出版社などを経て、”誠実に求人広告をつくろう“という姿勢に惹かれ、現職に就く。数年来クラシック音楽と仏教に傾倒中で、最近打たれた言葉は「芸者商売 仏の位 花と線香で 日をおくる(猷禅玄達)」。……向き合った相手の“人となり”や思いを、きちんと言葉にしたいと願う、今日このごろです。

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