【一般職(内勤・スタッフ)】木原柾さんのインタビュー記事
2018年入社
木原柾 (40歳)
一般職(内勤・スタッフ)
前職:中学校教員
2018.12.28
中学校教師から、風俗へ。“あの日あの時”の感謝を支えに、僕は走り続ける
この記事のポイント!
- 衣・食・住そして仕事。ここにはすべてがあった
- 「大事にしてあげなきゃ」女の子に対する感覚は、妹、娘
- パネルが多ければ、電話の鳴りは良い。じゃあどうする?
中学校の体育教師。一生懸命なやつは、利用される
以前は公立の中学校で体育教師をしていました。辞めたのが33歳の時だから、10年ほどやったのかな。
傍から見ると、公務員だから将来も安定しているように見えるでしょう? でもね、実際はそうでもないんですよ。
給料とか出世は年功序列で決まっているから、歳を取ってだんだんうまいこと働けなくなる人も出てくるんです。それに、一生懸命頑張ってる先生って、子供からは信頼されるけど、職場では煙たがられたり、利用されたりで……。
たとえばやんちゃな子でもね、ちゃんと向き合って話を聞いてあげたりすれば、たいてい分かってくれる子ばっかりなんですよ。根気良く指導を続けていれば、子供も懐いてくるんです。
でもそれを見ている周りの先生方は、“面倒な子はこいつに任せればいい”みたいな感じになって来るんですね。次第に自分ばかりに負担が乗るようになって、持たなくなってしまった。
まあ、もともと教職を熱望してなったわけじゃなかったし、ちょうど10年という節目でもありました。プライベートでも離婚があったりで「こんなヒドい環境でやってられるか」と思って、辞めてしまったんです。
衣・食・住そして仕事。ここにはすべてがあった
教師を辞めた後は、知人の事業を手伝っていました。そこでそれなりに長くがんばったんですけど、最後はちょっと色々あって辞めて……。
当時働いていた福井から、大阪まで出ました。もうほんとの無一文ですよ。信じられないでしょうけど、大阪までは友だちから自転車を借りたり、歩いたりして辿り着いて。そうですね、今思うと、僕もどういうつもりだったのかなという気はしますね(笑)。
でもね、大阪まで来たところで、住むところもお金もないじゃないですか。「どうしよう」ってなった時に、知り合いのキャバクラのオーナーに、声を掛けていただいたんです。
「ちょうど今、すごく面倒見のいい社長さんが来てるから、話してみる?」
そこで紹介されたのが、今の社長。忘れもしません。その時にね、はじめ社長何にも言わないんですよ。黙って僕の顔を見つめるだけ。やがておもむろに千円くれたんです。
「とりあえずお風呂入っといで」
言われるままに近所で入ってきて、戻ったら今度は、テーブルにカツ丼が置いてありました。
「食べてなかったでしょう。ゆっくり噛んで」
食べ終わったら最後に「動けるか。働けるか」って聞いてくださって。うなずいたら「4時からやってみよう」って……。
このお店に連れてきていただいたんです。「とりあえず住む部屋が決まるまで、奥の待機室で寝ていいから」って、着るものもぜんぶ用意してくださいました。
ありがたい? ありがたいじゃ足りないかな。衣・食・住そして仕事をいただいて、僕が思ったのはたった1つのことです。
「この人を裏切っちゃいけない」
ここで恩返ししないで、いつするんだという感じですよ。あの日あの時の出会いが、今の僕の、仕事に対するモチベーションです。
「大事にしてあげなきゃ」女の子に対する感覚は、妹、娘
この仕事を始めて半年ですけど、業務に対しては特に抵抗もなく、わりとスムーズに入っていけました。でも女の子の管理、やり取りとなってくると、戸惑いがありましたね。男社会で生きて来たんで、女の子と接するのが、めっちゃ苦手だったんです。
とりあえず心がけたのは、LINEで大事なことは“ゼッタイに”伝えないということ。女の子同士で繋がりがあると「私にはこう言ったのに」「あの子には違うこと言ってる」という感じで、信頼関係が崩れちゃうんですよ。
もちろん1人ひとりに合った言い方とか、偏りがないようにというのはあります。それもあってこそ、“直接電話で話す”“会う”ということが大切になってくるんですね。
とにかくみんないい子たちなんですよ。平均年齢は27、8歳で、妹みたいな感覚がある。自分の娘くらいの歳の子もいるんで「気持ち良く働かせてあげなきゃ」っていうのは、すごくありますよね。自分が対面から逃げて、彼女たちに不安をつくっちゃいけないんです。
パネルが多ければ、電話の鳴りは良い。じゃあどうする?
女の子たちは男性と個室での接客になるわけだから、万が一何かあった時は、すぐに駆けつけたり、対応できるようにしてあげたいですよね。お客さんを付けるのも仕事ですけど、逆に盾になって守ってあげるのも、フロントの仕事だと思っています。
先生みたい?(笑) とんでもない。最初はいっぱい失敗してますから。新しく入ってきた子に対して、お客さんを付けてあげられなかったことが続いて、辞めていった子も何人かいたんです。収入を得たいと思ってここを選んでくれたのに、応えてあげられなかった。
自分は早番で、もともと朝は電話の鳴りが少なかったっていうのもありますけど、そうも言ってられない。女の子たちに何とか出勤してくれるように頼みました。単純にパネルが多ければ多いほど、電話の鳴りって良いんですよ。
とにかく話して、信頼関係を築いてというのを繰り返して。今は朝でも、1人平均2本3本と付けて上げられることが多くなりました。そう、増えたんですよ出勤。ありがたいことに、僕が朝いると安心してくれるみたいで……。
「木原さん朝いるよね?」っていうのが最高に嬉しくて。もう毎日出ちゃおうかなって(笑)。
必要なのは、女の子たちのやりがい。当面は現場で良い
今思うのは、もちろんお金を稼ぎたいっていうのもありますけど、それよりも“社長に認めてもらえるように”ですね。やっぱり「こいつ雇って良かった」って、思ってほしいもんです。
そのために今僕ができるのは、女の子に働きやすい環境をつくること。女の子自身が、ここで仕事をして“稼げる”ということに、やりがいや充実感を見出してくれたらと思っています。
さっきも少し触れましたけど、出勤数が増えれば、自ずと電話が鳴る。必然的にお店の売上も上がるんですよね。そして僕らフロントスタッフの対応が良ければ、待つお客様の気分も上がるはずだし、女の子はお仕事しやすい。結果リピーターに繋がって、今があると思うんです。
だから当面は現場で良い。いつかはバーとか経営したいなっていうのはあるんですけど……その時は新海さんがインタビューに来てくれます?(笑) 良いですね。何年も何年も後でしょうけど、また『VOICE』に載ったら嬉しいな(笑)。
(インタビュー:新海亨)
取材後記
プロフィール
木原柾
一般職(内勤・スタッフ)
(前職:中学校教員)