コロナ禍で知った自社の強み。全国展開前夜~『ハピネスグループ』代表 小山健二の決意 #1
2023年05月02日
――コンセプトを明確にした広告戦略、数字に裏打ちされた店舗運営、そして何よりもホスピタリティ溢れるサービスで人気を博してきた『ハピネスグループ』。弊社のスタッフ求人媒体『FENIX JOB』でも、おなじみと言っても良い存在だ。
だが、“それにしても”である。当然求人のためだろう。昨年11月から年末にかけて、スタッフインタビューの取材依頼が相次ぎ、筆者は驚いた。しかも場所も五反田で、福岡で、札幌で、水戸でと、各地に及んだのだ。
「景気良いなあ」
聞けば札幌店は2021(令和3)年11月にオープンしたばかり。翌年同月には土浦に、今年2023年6月2日には、鳥取県の米子皆生温泉に新店が出るという。
業種を問わず未だコロナの“後遺症”に苦しむ企業も少なくない中で、この勢いと“地方都市”をも含めた店舗展開はどうだろう。背景には何があるのか。代表取締役の小山氏(53)にお話を伺うことができた。
緊急事態宣言下。土壇場で休業要請。頭をよぎったのは
お久しぶり、ということになるんでしょうね。以前インタビューを受けたのは……2018(平成30)年? なるほど。もう5年も前ですか。
そこからのお話ということであれば、まずコロナは避けて通れないでしょう。この業界に限らず、どこもしんどかったですよね。ウチだって例に漏れません。今だからこんな風に話せますけど、あの時は「あ、死んだな」と思ったものです(笑)。
ときの安倍総理から1回目の緊急事態宣言が出されたのが、2020(令和2)年の4月7日でしたね。ご承知のように、当初我々ソープランドは休業要請の対象に入っていませんでした。
ところが「そうか。開けておけるのかな」と思っていた矢先です。同月10日、小池都知事の定例記者会見で、『個室付浴場業に係る公衆浴場』は「基本的に休止を要請する施設」だと明確に言及されました。
経営者としてはショックもショック、大ショックですよ。
真っ先に思い浮かんだのは従業員達の顔です。当時のキャスト在籍数は約800名(現在1560名)、スタッフだって100名(同176名)はいたでしょう。みんな食べていかなきゃならない。幾ら心臓の強い私でも(笑)、「持ちこたえられるのか?」と恐怖がよぎりました。
逃げ出すスタッフは皆無。こちらから切る気もなかった
誰にも先が見えませんでしたからね。“いついつまで”というゴールがわからないというのはキツい。ただ今振り返ると、コロナは『ハピネスグループ』の強みというのかな、良さを再認識できるきっかけにもなりました。
第一は、スタッフが辞めなかったんですね。5月25日の宣言解除まで、1か月以上店を開けられなかった。普通なら「ここはもうヤバい」と逃げ出してもおかしくないじゃないですか。
でも彼らは耐えてくれた。だからこそ宣言解除後の立て直し、その後の通常営業、新たな将来計画の策定に繋げることができたんです。
同時に我々としても、あの時点で「誰かをクビにする」という発想は皆無でした。
会社設立以来の健全経営のおかげで、少なからずの内部留保はありましたからね。給与に補填するぐらいのことはできました。
そもそも今苦しいからと言って人を切っちゃったら、再開の時に困るでしょう。キャストさんはいる、お客様も戻ってきた、なのに店を回す人間がいないとなってしまう。スタッフ1人育てるのはたいへんなことですからね。
その意味では“先が見えない”という現実に直面しつつ、私は“この後”を考えてもいました。やまない雨はない。いつか必ず終わりは来るんだからと。
各地に店がある。それ自体がリスクヘッジになっていた
第二に感じた強みは、単店ではなかったということです。
東京、福岡中洲、茨城水戸とある時に、福岡はもう完全にアウトでした。もともと地元よりも観光と出張でのニーズが多いお店だったので、コロナで人の行き来が制限された時に、如実に影響を受けてしまったんです。
一方で吉原・五反田・池袋の東京各店は、休業が明けてみれば予想していたほどのダメージはなかった。やはりそれは人口の多さが理由でしょう。もとのキャパシティが大きいから、お客様の減少にも数か月こらえることができました。
また実は驚いたのが水戸なんですね。客数にほぼ変動がなかったんです。休業を挟んで増えもせず減りもせずという感じ。大都市と比べて相対的にコロナの感染者数が少なく、その分だけ外出自粛のムードも穏やかだったのかなと……。
例えば福岡だけだったら、我々は終わっていたでしょう。人の密集する東京と、出張や観光に影響されない地方都市に店舗を構えていたことで、グループ内の売上を補い合うことができたんです。
つまり2009年に誕生後、積極的な出店を続けていたこと、国内の各地に『ハピネス』が存在すること自体が、いざという時のリスクヘッジになっていたんですね。これは私自身、うれしい発見でした。
最大の支えは“会員”。営業再開を待ち望んでくれていた
そして何より我々には数多くの会員様が付いていたんです。11年の間にスキルを磨き、ノウハウを積み重ね、ご愛顧を受けてきたという事実は伊達ではありませんでした。
皆さんが待ってくれていたし、ご心配も頂いていたんですね。実際お店を閉じている間も、ホームページや各営業媒体へのアクセス数は減らなかった。キャストさんの『写メ日記』に多くの“いいね”が付いていたり、スタッフの更新するブログが読まれていたり。
やがてコロナ禍が好転の兆しを見せ始め、それに伴って少しずつお客様も戻ってきました。「お久しぶりです!」「お待ちしておりました!」……一昨年から昨年にかけて、各店でこんな声をずいぶん耳にしたものです。
ありがたいとしか言いようがないですよ。おかげさまで、売上もコロナ前同様右肩上がりで推移するようになりました。全国を視野に、再び出店を加速させられるまでになったんです。
――コロナ禍を耐え、乗り切れた要因は3つあり、中でも“会員”の支えこそが大きかったという。
だがここで疑問が湧く。なぜだろう? 他にも店はある中で、なぜ『ハピネス』の会員は営業の再開を待ち望んだのだろうか? 次回はこの点を明らかにしていこう。
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小山 健二(こやま けんじ)
東京都出身。風俗業界歴は21年。レンタルビデオチェーン店の店長10年を経て、ヘルス店で9年間店長を務め、『ハピネスグループ』へ。2013年よりグループ代表に就任。好きな言葉は『率先垂範』。尊敬する人物はジャッキー・チェン。一時期は映画館で年間230本程を見るほどの映画通。好きな映画は『パルプフィクション』。
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