“遊園地”で“オモチャ箱”。 そんなお店のこれから ~『ロボットデリヘル』開発者 あき #4

2023年01月18日

by松坂 治良松坂 治良編集者・ライター

――2013(平成25)年に誕生した『ロボットデリヘル』は、早々にメディアに取り上げられ、売上もわずか1年という期間で、損益分岐点を越えた。

その後は事業の継続性を獲得し、この2023(令和5)年には10周年を迎える。“開発者”のあき氏(36)自身は、店舗に対してどんな思いを抱いているのか。そしてインバウンド需要が劇的に高まっているという現在の状況を、どう理解しているのだろう? 今後の展望も含めて話を聞いた。

ユーザーにとっての遊園地。僕にとっての“オモチャ箱”

(画像左)ロボットデリヘル的風俗漫画『FZ40:ナナセ』/(画像右)ロボットデリヘル漫画 『ロボットデリヘル×にったじゅん』

前回『ロボットデリヘル』は“ユーザーにとっての遊園地みたいなもの”と言いましたけど、僕にとってはここは、“オモチャ箱”でもあります。

女の子がロボットとして振る舞うというこの特異な形態を使って、色々と遊んでみたくなったんです。例えば僕がマンガ好きなのもあって、ウチをテーマに、プロの方に作品を描いてもらっています。

それも想像されるような、CMとしての“風俗体験漫画”とかじゃなくてですよ。設定が“喋らない”“ロボット”というだけ。僕が「こんな感じで」とお願いすることもありますが、基本的には作家さんの個性で自由に表現していただいています。

だから決してハッピーエンドで終わるとは限りません。かえって悲劇的な結末を迎える場合も多く、でもだからこそ読み進めたくなるんですよね。ウソがないし、刺さるものになる……。

「暗い結末は営業的にマイナスなんじゃないか」 普通に考えればそうでしょうが、事実は逆です。

と言うより、明るかろうが暗かろうが、“心に残る”のが最も大切なんですね。感情のフックに何かが引っ掛かるからこそ、興味が湧く。湧けば横にあるウチの営業サイトをクリックすることもあるでしょう。

実際もう5、6年前のにったじゅんさんの一番最初の作品が、急にバズったりするんですよ。で、バズるとお店のアクセス数も予約も現実に増えます(笑)。

在籍の子達にも好評ですよ。自分をモデルにした女の子が、同じ源氏名でヒロインになったりするので嬉しいんでしょう。

もちろん僕だって嬉しいし、何よりありがたいです。自分の家のオモチャ箱を開けて見せたら、みんなが触りたがって、遊んで喜んでくれた。そんな感覚です。

“普通に”やれば、月30万円40万円稼ぐのは難しくない

これで最終回ですか? そうですか。ならここでデリヘルのスタッフ論とか仕事術みたいな話もした方が良いんでしょうけど、それはGoogleで検索すればいっぱい出てくるでしょうし、僕なんかよりよっぽど的確なアドバイスなはずですから、そちらに譲ります。

そもそも今は営業媒体に一括更新ツールがあるし、電話対応だってマニュアルがあるし、『ロボデリ』も10年もやっていればノウハウの1つぐらいあります。業務は働いている内に慣れることばかりですよ。

強いて挙げれば、若いどこかの時期に、何かを“継続的に”一生懸命やってきた方は、スタッフをする上でも強いでしょうね。僕みたいに高校受験でも良いし、逆に僕が挫折した(笑)、大学受験でも構いません。体育会系の部活を一生懸命したとか、ピアノ教室にずっと通っていたとか……。

僕が言うと変に聞こえるかもですが、日本の教育ってバカにならないですよ。当たり前に遅刻しないとか、事務処理能力とかね。青少年時代に身に付けたことって、社会人になってから役立ちます。

現にウチで月給30万円とか40万円のスタッフを目指すのって、“普通に”サラリーマンをできる方にとっては、そうたいへんじゃないですから。すぐですよ。

女の子とのコミュニケーションを教えていないワケ

問題はその先ですよね。これが新店を出して店長になって、「月給100万円欲しい」となってくると、女の子とのコミュニケーション能力がカギになってくると思います。

そしてこれは僕の言い方だと、教えられない(笑)。と言うか、“教えていない”が正解かもしれません。

なぜなら友達にしたって目上の人に対してだって、コミュニケーションの取り方は人それぞれでしょう。自分らしく、やりやすい方法で試行錯誤して、店の子とやりとりしてくれれば良いかなと。聞かれればアドバイスはしますけどね。

でもその意味でも、こう言ったらあれですけど、ウチはお勧めなんですよ(笑)。僕を入れてスタッフ7人のお店だから、みんなが女の子と話す様子を間近で見られるでしょう。

質問して真似してアレンジして、自分のやり方を見つけてくれたら良い。7年勤めてくれているスタッフもいます。彼なんか百戦錬磨だから、得られるものも大きいはずです。

後はもう結局この業界は、お金のところは自分の野心次第ですから。そこはご自身の思いに任せますというのが、正直な気持ちです。

大金を使う外国人。今やグローバルな注目を浴びる店に

むしろせっかくの遊園地でオモチャ箱なお店なので、「あれやりたいこれやりたい」とかね。そういうものがあるとより楽しめるかなと思います。

ユーザーや女の子と同じように、お店も僕も存分に利用してくれれば良いかなと。これからマンガだけじゃなくて、アニメでも実写でも、何でも取り入れられるなら入れたいですし、企画もコンセプトもガンガン持ち込んでくれて構いません。

おもしろくて利益が出る見込みがあれば、お金も出しますよ。いや、見込みは良いかな?(笑) 楽しそうなら乗ります。

今ちょうどウチは上り調子ですしね。コロナ禍をそれまでのリピーターの支えで乗り切って、ぶっちゃけ現在は元に戻ったどころか、コロナ前よりも更に儲かっています。インバウンド需要がバンバン伸びているんですよ。

訪日してからの観光客もそうですが、海外のサイトからの問い合わせもたくさん頂いています。円安の影響でしょうね。今はアメリカからが一番多い。なので今後、東京以外の主要都市にも、支店を出していけたらいいなと。

できなくもないと思うんですよね。当たり前のことを言うようですけど、世界は広い。お金ってほんとにあるところにはありますから。オーバーじゃなしに、ウチで1人で1日に3、400万円使ったアメリカ人もいるんです。驚くでしょう?(笑) スケールが違う。

おもしろいですよね。ニッチへの逆張り、最果ての風俗。そのつもりでつくった『ロボデリ』が、グローバルな注目を浴びている……。

FENIX JOBの方と違って、こちらの『Fenixzine』は、べつに求人目的の記事ではないんですよね? なので新年だし(笑)、ウチへのスタッフ応募がどうとか関係なく、僕よりお若い方々に、最後にあえて言いたいんです。

「何とかなりますよ」

お店も10年続いているし、今後の展望もあるから、そこだけ取り出すと順風満帆に見えるでしょうけど、聞いていただいたように、僕も挫折もいっぱいしているんですよ。特に芸人の時には、「自分なんて大したもんじゃない」と思い知りました。

逆なんですよね。そんな僕でも何とかお店1つぐらいはやりくりして、将来を思い描けるぐらいにはできるということなんです。運もあったと思うし。

なのでとにかく、めげないことですよ。もう一度だけ言いますけど、人生何とかなりますから(笑)。

――あき氏自身の風変わりな歩みから生まれた『ロボットデリヘル』だが、そんな彼は最後に「自分なんて大したもんじゃない」「運もあった」と語る。

本当にそうだろうか? 興味深いエピソードの数々を聞いて、筆者は率直にそう思う。額面通りには受け取れないと感じるが……。

判断は読者にゆだね、インタビューを終わろう。2023年を、良い年に。きっと何事も、“何とかなる”。

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19歳。“全員進学”の高校で、ただ1人 ~『ロボットデリヘル』開発者 あき #1

ロボデリ開発者 あき

埼玉県出身。県内有数の進学校を卒業したものの、大学受験を断念。19歳で上京し、養成所で芸人の道を志す。その後プログラマーとなり、やがて経営者の道へ。2013年にオープンした“女の子が一切喋らない”がコンセプトのSM店『ロボットデリヘル』は国籍を越えて大ヒット。2023年には丸10周年を迎える。36歳

執筆者プロフィール

松坂 治良

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小さな出版社などを経て、”誠実に求人広告をつくろう“という姿勢に惹かれ、現職に就く。数年来クラシック音楽と仏教に傾倒中で、最近打たれた言葉は「芸者商売 仏の位 花と線香で 日をおくる(猷禅玄達)」。……向き合った相手の“人となり”や思いを、きちんと言葉にしたいと願う、今日このごろです。

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