“究極”の風俗店だからこそ、裾野は広かった。~『ロボットデリヘル』開発者 あき #3

2023年01月11日

by松坂 治良松坂 治良編集者・ライター

――筆者がここで記事を書き始めた4年半前には、既に“超”が付くほどの人気SM店だった『ロボットデリヘル』。

“開発者”であるあき氏(36)に、今回はその“始まり”についてお話を伺った。

「次は何をしよう?」で、デリヘル事業になった理由

インタビューはどこまで……そうか。僕が個人的に、風俗を遊び尽くしちゃったという話で終わっていたんでしたね。それが後の事業に役立ったというのは、繰り返しになってしまいますが、『ロボットデリヘル』のオープンのことです。

結局以前に僕が立ち上げた事業は、制度や法律が変わってウマ味がなくなるのが目に見えてきちゃったんですね。もともとニッチな業界、分野ではありましたし。

なので会社を畳んで、また芸人を目指しました。ええ(笑)、性懲りもなくね。でもやっぱり芽なんて出ないから、1年半できっぱりあきらめて。「じゃあ次は何をしよう?」となったわけです。

手元にかつての事業で得たお金がまだありました。それを資本に何か事業をしよう。そう考えた時に、よく利用していたこともあって「デリヘルでもやってみるか」となったんです。

“逆張り” + これから見たいはずの、“新たな世界”

で、試しに池袋だったかな? お店でスタッフをしてみたんですよ。そしたらたぶん経営者をしていたのが大きいんでしょうね。運営のキモはわりとすぐに体得できたので、「やるだけだな」と。そこは1週間で辞めて、新店の企画を考え始めたんです。

大事なのはむしろ、その“企画”の面です。2013(平成25)年当時ですから、デリヘルももう誕生して10年以上が過ぎている時期。まして僕がオープンを決めたのは、新宿歌舞伎町でした。大手を含めて既にお店が跋扈している状態の中、“普通”で勝てるわけがありません。

“今までにない”しか勝算はないと思いました。受験浪人した自分が、今更大学を目指すのではなくAV業界で働き始めたように、“逆張り”するしかない。

そして世のあらゆる風俗が、前回お話したように、僕にとっては今や“いつか来た道”だという気持ちもありました。だとすれば僕がこれから思いつくことは、“新しい”と共に、誰もが“これから行ってみたい世界”だと考えたんです。

こう考えた時、僕は本当に久しぶりにワクワクしました。食にも風俗にも飽いていた自分こそが、行ってみたい店。きっとこの世になかった場所。胸が躍らないわけないじゃないですか(笑)。

“女の子が喋らない”“ロボット”こそ、風俗店の“究極”

SM店にしたのは、まさに“逆張り”を狙ってのことですよね。ニッチなところで勝機を掴もうとした。

同時に再三述べてきた通り、僕自身あらゆる風俗に対して食傷気味になっていたわけですから、自分がやるとなればハードなSM店になるのは必然だったとも言えます。

ただ読者の方々はもうお気づきですよね。

「SM店だって東京にはいっぱいあるじゃないか。真の差別化にはならないんじゃないか」
「風俗は行き尽くしたというなら、SM店だって想像の範疇なんじゃないか」

仰る通りです。なので僕は企画に当たり、ここに“ロボット”という要素を持ち込んだんです。

“女の子は一言も発することがない”
“自由に扱えるロボット”

「どんなお店にしよう」と散々思案した末に、これこそが風俗の行き着く“究極”だと思いました。

“フリ”だからおもしろい。“もはやSMを超えたSM”

ほら、時間を止められるAVってあるでしょう? 周りの時が止まって、自分だけが動けて、女の子を自由にできるというシチュエーション。ああした作品がウケたのって実は、その“非現実性”だけが理由じゃないんですよね。

本当は動けるのを誰もが知っているのに、女優さんが動けない“フリ”をしているからおもしろい。反応の一挙手一投足が、視ている側の興奮を掻き立てるんです

『ロボットデリヘル』も同様です。ホームページのトップには、今もこう書いてあるでしょう。

“当店ではラブドールではなく生身の人間をロボットとして提供させて頂きます”

本当に自由に扱えるだけでいいなら、ラブドールで事足りるはずですよね。現に今は驚くほど精巧なラブドールが存在するし、レンタルしてくれるお店だってあります。

しかしウチが提供しているのは、ラブドールでもなくロボットでもないんですね。あくまで生身の女の子なんです。その女の子が、

“一言も発することがない(フリをする)”
“自由に扱えるロボット(として振る舞う)”

だからこそイケないことをしている気になるし、興奮もするし、想像だって掻き立てられる。デリバリー先のお部屋では、ときにはハプニングだって生まれるんです。

ユーザーの側は、女の子をロボットとして扱うというドキドキ、女の子の側はロボットとして扱われているというドキドキ。SMプレイと非現実性に加えて、この精神的な倒錯があるからこそ究極と言えるのかなと……。

オープン当初から“もはやSMではない。SMを超えたSM”という言い方をしているのも、このためなんです。

ポップで何より楽し気。言わば“オトナの遊園地”

もちろん“サービス”ですからね(笑)。数年前にウチのTwitterで炎上騒ぎもありましたけど、お店の女の子に同意や対価や拒む権利がないはずはなく、“そういう世界観が共有された空間”ということです。

だからホームページからバナーからキャッチコピーまで含めて、打ち出し方もポップでかわいいものにしました。これこそAVっぽいですが(笑)、女の子がリモコンで動くオプションを付けたりと、コミカルな要素もふんだんに盛り込んでいます。

女の子も好奇心を持ってここで働けるようにしたかったんですね。これは後の話になりますが、とあるハードSM店の店長から「女の子が集まらない」と相談を受けたことがあります。ウチが女の子の在籍数に困っていないのが、不思議だったんでしょう。

ところがそのお店の営業ホームページを見てみたら、女の子が露骨に行為を強制されているような画像と動画ばかり。これではコワいですよ。応募する気になれないと思います。

先ほど世界観と言った通りで、こうしたお店には、その映像を見て「いいな」と思ったお客様が来るものなんですね。応募する女の子だってバカじゃないから、それぐらいわかりますよ。

一方で『ロボデリ』のサイトはどうかと言えば、暴力的なネガティブな要素は感じられないつくりになっているはずです。その世界観は、ウチにはない。ポップで何より楽し気ですよね。そこに魅力を感じるお客様が来てくれる。

この意味では、僕自身が昔からマンガやアニメなどのサブカルチャーが好きで良かったと感じます。出だしからお店づくりに活かせたかなと……。

まあちょっと陳腐な言い方になりますけど、“オトナの遊園地”ですね。「女の子がロボット? 何だこれは?」「うわ、おもしろそう」と、興味を引くものになればと思っていました。

実際には広かった裾野。「当たる!」と確信した瞬間

開業当時、どこだったかな? 何かおもしろい風俗店が扶桑社の『週刊SPA!』に取り上げられていたんですよね。同誌がまだサブカルチャー・ポップカルチャーの発信力を持っていた頃です。なので「ウチも載ったらいいな」なんて考えていて……。

そしたら何と、2か月後にはほんとのほんとに『SPA!』に掲載されたんですよ(笑)。「やった。見ろ見ろ」という思いでした。

ただ売上には全然結びつかなかったんです。なのでそれからは僕も必死。覚えているのは、骨折しても病院のベッドからオペレーションしていました(笑)。当時は「この1日休んだら潰れてしまう」というぐらいの危機感があって。

ただ海千山千の記者さんから話題性を買ってもらって、雑誌に載るぐらいです。世間から好奇の目で眺められていたのは、ゼッタイ確かなんですね。また当初からSM愛好者やベテランの風俗利用者だけではなく、“ここが初めて”という方のお電話も取ることがあって。

要は未経験で中二病チックだったりもして、女性と触れること、話しかけられること自体がコワいんでしょう。幸いウチの子は喋らない。何せロボット(を演じている)わけですからね(笑)。

「なるほど」

ニッチな分野への“逆張り”だったはずが、こんなに裾野広くユーザーを獲得できるのかと。「大丈夫。ゼッタイ当たる」と確信した瞬間です。

――この確信の通り、実際『ロボットデリヘル』の売上は、1年で損益分岐点を越えたという。その後はコロナ禍にも耐え、今年2023(令和5)年には丸10周年を迎える。次回は最終回。あき氏に現在のインバウンド需要に対する思いや、今後の展望を聞いた。

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“遊園地”で“オモチャ箱”。 そんなお店のこれから ~『ロボットデリヘル』開発者 あき #4

ロボデリ開発者 あき

埼玉県出身。県内有数の進学校を卒業したものの、大学受験を断念。19歳で上京し、養成所で芸人の道を志す。その後プログラマーとなり、やがて経営者の道へ。2013年にオープンした“女の子が一切喋らない”がコンセプトのSM店『ロボットデリヘル』は国籍を越えて大ヒット。2023年には丸10周年を迎える。36歳

執筆者プロフィール

松坂 治良

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小さな出版社などを経て、”誠実に求人広告をつくろう“という姿勢に惹かれ、現職に就く。数年来クラシック音楽と仏教に傾倒中で、最近打たれた言葉は「芸者商売 仏の位 花と線香で 日をおくる(猷禅玄達)」。……向き合った相手の“人となり”や思いを、きちんと言葉にしたいと願う、今日このごろです。

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