「GrowAsPeople! 風俗店スタッフ=人間⼒が問われるシゴト」 ~一般社団法人GrowAsPeople代表理事・角間惇一郎さん#3~
2016年10月20日
――最終回となる今回は、なぜGAPが風俗で働く女性のセカンドキャリア支援を⾏うようになったのかを読者へのメッセージとともに語っていただいた。
試行錯誤して行き着いたのがセカンドキャリア支援
2012年にGAPを立ち上げてから、本当にいろんなことをやってきました。
始めは、メンタルケア系のカウンセリング、次に、「居場所が大事」と老朽化したビルを改修してシェアハウスをオープン。それからノンバンクと一緒に、“貯金セミナー”もしました。
まずはやってみて、駄目だったら手を引いて……、それで最終的に⾏き着いた答えが、“セカンドキャリア支援”という感じです。
ひとつのキッカケになったのが、15年くらい続いているとあるデリヘル店オーナーに話を聞いたことですね。その方が、こう言うんです。
「最初は若い子しかいなかったんだけど、オレに懐いてずっと付いてきてくれた女の子が、段々太っていくの。
年を取ると仕方がないことだろうけど。でも、太っていることを隠して営業するのは、お客さんにも女の子にも悪い。
だから最近、ポチャ店を作ったり、人妻店も作ったりした。今いる女の子と、これからも一緒にやってくしかないからね」
そのデリヘル店は、一戸建てを丸ごと事務所にしているんです。だから、キッチンでご飯作ってみんなでワイワイ食べて……、まるで共同生活みたいな感じで。マスコットで犬もいました(笑)。
そこで気が付くんですね。
風俗の仕事は、年を取ると、体力が落ちてきて、やりたくてもやれなくなってくる。一方、今の社会では、それまで積み上げた風俗業界での実績やスキルを次の仕事に応用できない。まるで野球のピッチャーと同じような構造があると。
引退はだれにとっても起こる共通の問題だから、世間で言われているように、辞めさせることを議論するのではなく、辞める時に備えることが大事なのだと。
社会経験を積んでもらう仕組みは待機時間がポイント
では、「なぜ、備えられないんだろう?」と考えました。
すると、他人に言えるような社会的な立場がないことが大きいと気付くんです。だから、履歴書が書けないし、ほかのスキルアップの機会があっても、どこかためらってしまう。「バレたらどうしよう」という不安もあります。
そこで考え出したのが、空いた時間に社会経験を積める機会をもってもらう仕組みです。
出勤していない時間もそうですが、待機所で空いている時間を有効活用してもらうのがポイントです。出勤日数を削ると収入が減りますし、収入が減ると、とにかく不安が強くなってしまうので。
例えば、「引退後にライティングをやりたい」と相談されたら、ライティングの枠を募集しているところを紹介します。「福祉をやりたい」って言われたら、福祉関連の組織を紹介します。それで、空いている時間に社会経験を積める機会を作るわけです。
GAPに相談に来る方のパターンは大きくふたつです。ひとつが、漠然とした不安があるが今具体的に困っているわけではない“もやもや型”、もうひとつは、彼氏からのDVや借金など、今まさに具体的な困難に直面している“今すぐ助けて型”です。
僕たちが主に行っているセカンドキャリア支援は、特に“もやもや型”の人に向けた仕組みです。もうひとつの“今すぐ助けて型”の相談に対しては、ほかのNPOと連携したサポートを行っています。
スタッフさんにこそGAPをどんどん使って欲しい
風俗で働く女性、キャストさんをサポートする仕組みはGAPで用意できたんですが、それをもっともっと活用してもらえるといいなと感じています。
でも、そのカギになるのは、店舗のスタッフさんだと僕は思うんです。スタッフさんは、どんなNPOよりも女性に近い位置にいるんですよ、構造的に。ただ、スタッフさんはスタッフさんで売上を上げなきゃいけないし、忙しくて女性に十分なケアができないことがある。
だから、女性がなにか困っていれば、それに気付いて、サポートが必要な時は、僕らみたいなNPOに相談してほしいんです。「必要があれば、いつでも一緒にお手伝いします」って感じです。キャストさんだけでなく、スタッフさんにも「社会から孤立しないでほしい」という思いもありますし。
それから僕たちは、“夜の仕事”と行政との仲介役になれるというのもあります。
半年くらい前に実際にあったことなんですが、スタッフさんから女性の相談を受けて、児童相談所と連携したことがありました。「役所の福祉課とやり取りするのが難しい」ということだったんですよ。
良くも悪くも行政は、どんなに想いがあっても、いわゆるアンダーグラウンドと呼ばれる人たちと積極的なやり取りがしにくい。それは、仕方がないと思うんです。だから、NPOみたいな仲介役が重要ですし、「GAPがその仲介役になれる可能性はあるなぁ」と感じています。
生きていればだれにでもトラブルはあります。
でも、ひとりではやっぱり乗り越えられなくて、だれかが支えてあげないといけない。そういう時、僕らのような組織を頼ってもらえればと思うんです。柔軟性があるのがGAPなので。
風俗店スタッフこそ人間力が問われるシゴト
僕自身の経験なんて知れているので、偉そうなことは言えないのですが……。
風俗が、ほんとうに人の役に立ってる仕事なのは間違いないです。それに、自分のことではなくて、相手のことを考えて働けば成果は出るし、お金にもなるわけですから……、誇りをもっていただきたいって思いますね。
それから、やっぱり人に向き合ってほしいということですね。
キャストさんのマネジメントは、だれでもやれる仕事じゃありません。小手先のテクニックではなく、人と向き合うという“人間力”が大きく問われると思うんです。そもそも、女性が風俗店で働くことは、一生を左右する大きな選択でもありますし。
風俗は、ものすごくITと親和性が高い産業ですけど、扱ってるモノは、性でもなく、エロでもなくて、人なんだっていう……。
それが大事なんじゃないかって思います。
――風俗店スタッフこそ人間力が問われるシゴト―。角間さんが、人に向き合うなかで見出した“GrowAsPeople”というコンセプトは、性別を問わず、すべての人たちをエンパワーメントするメッセージだった。角間さんの今後に注目したい。
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「前職は風俗店スタッフ! なぜNPO代表は風俗と出会ったのか」 ~一般社団法人GrowAsPeople代表理事・角間惇一郎さん#1~
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角間惇一郎(かくまじゅんいちろう)
1983年、新潟県生まれ。建設業界で働いていたが、2010年の「大阪二児遺棄事件」に衝撃を受け、夜の世界で働く人の孤立を防ぐ事業を始めたいと思い、脱サラ。2012年、『一般社団法人GrowAsPeople』を設立。東京都荒川区を拠点に活動する。性風俗産業にかかわる女性たちのセカンドキャリア支援、のべ数千人に上る実態調査による統計算出などに取り組む。
一般社団法人GrowAsPeople:公式サイト
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