「新生サンキュー! 新しい風と新しい法令遵守が導くV字回復」 ~サンキューグループ創業者・平井学の回顧録#3~
2017年10月16日
――フランチャイズ(以下FC)展開の導入で、瞬く間にグループの全国化に成功した平井さん。
しかし2015年1月、平井さんとサンキューグループを、ある大きな試練が襲うことになる。初めて語られる当事者の想い―。意外にも平井さんは軽快に語り始めた。
導火線は五反田FCグループの本番推奨
きっかけは五反田グループというフランチャイズ(以下FC)のグループが当時あってですね、そこが売春に対してすごく寛容だったんですよ。
彼らは、やっていたのを知っていたし、むしろやれという……。もう違法なレベルで、悪どくやっていたんです。
それで本部としては、内容証明で契約解除を申し入れていたんですよ。「そういう商売を続けるなら、契約解除しますよ」というように。
でもそこで決着が付く前に、五反田から警察の捜査が入って、結果的に本部も巻き込んだ事件になってしまったんです。
やっぱり五反田グループが酷かったのと、『サンキュー』は全国的に店があるから、そういう大手をやって、警告を与えたかったというのがあるんでしょう。
けれど、実際は違うんですよ。
まずその当時の本部・直営店では、売春については厳しく止めていたんです。
具体的には、お客様に伝えたり、女の子に言ったり、誓約書も含めて、書類でもやっていました。それでも、もしやっている女の子がいたら、やらないでということを注意して。
要は、本部・直営店は、当時のルールで大きな間違いを犯したんじゃないってことですね。
因みに、当時一部報道にあった、替え玉の女性を派遣していたというのも事実とは違います。確かにうちのグループの写真は、修正が強めだったというのは認めますけど(笑)
半ば強引とも思われた法解釈のシフトと有罪判決
業界の人ならみんなそうですけど、警察からは、「(本番については)部屋の中のことまではわからないから、女の子にはよく注意するように」という指導をずっと受けていたんですよ。
「店が『本番ありますよ』みたいなことを言ったら大変なことになるよ」というのは、届出書を出すときには必ず指導されるポイントですからね。
ところが今回、それではセーフじゃないという話になったんです。
この事件のイチバンのポイントは、「店側は、売春を止めているだけで、実際に止めるための“行動”をしていないよね?」という法解釈にシフトしたことなんです。
行動というのは、極端にいえば、本番をやっていた女の子を全員クビにしちゃうとかです。
でも、実際は出来ないですよね。今だってみんな出来ない。
だからまあ、半ば強引だなって気持ちにはなりますよね(笑)
僕は法廷で争えば、問題提起は出来たかもしれないです。でも、本番を止める指導が徹底出来ていなかったというのは、それはそうでやっぱり問題だったんですよね。
それに、もう年もとっていましたし、矛盾があるように思えても、あまりその辺りは、こんなもんかなっていう諦めの気持ちが先立ちましたね。
若い頃は、学生運動をやったりして、闘っていましたけど(笑)
――あっけらかんと語られる一部始終からは、やっていたことに一点の曇りもないという平井さんの胸のうちが感じられた。
結局、平井さんは、売春防止法違反で有罪となり、そのまま経営の一線を退く。それから2年―。サンキューはいま、どのように変わっだのか。
新生サンキュー! 新しい風と新しい法令遵守が導くV字回復
事件から営業を再開するのに、3カ月ぐらいかかりましたかね。直営店をなくして、全部FCにしましたから、時間がかかりました。
お客様はやっぱり減りました。まだ回復はしていません。当時と同じ数の店が全部出ていませんからね。
でも今、上がってきている最中なんですよ。店ももうすぐ増えてきますし。
戻ってきているのは、固定客のお客様です。都内だけでも、多分数千人はいると思います。やっぱりサンキューの知名度は大きいですね。
女の子は、メインの子たちはそんなに変わっていないと思いますけど、スタッフは直営店を止めたのもありますし、事件の影響もあったので、だいぶ入れ替わりましたね。
ただ、スタッフもそうだし、新しいFCオーナーも増えてきていますから、グループ全体に“新しい風”が入ってきているのは、凄く感じていますね。
事件になった本番のところですけど、今は新しいルールに対応して徹底的にやっています。
これまでもサンキューは、他店より厳しくやっていたんですよ。カードを女の子に持たせて、プレイする前に、「本番強要したら、もう帰りますよ」みたいな取り組みをやったりとか。
でも、それだけではダメ、やったことに対して店が対処していないとアウトって、法解釈が変わったので、もうみんなで対処するようにやっていますよね。
具体的には、現場のスタッフたちが一生懸命考えたやり方なので、ここではちょっとオープンには出来ないんですけど(笑)
――新しい法解釈に即した管理手法を開発し、再び成長路線を歩み始めた新生サンキュー。
平井さんはその新手法について、自身のグループに留まらず、同業者にも、講演などのかたちで伝えていきたい希望があるそうだ。
最後に、名経営者の眼には、いまの風俗業界がどのように映っているのか、質問をぶつけてみた。
生き残りのカギは一般のサラリーマンレベルの人材獲得
どこの社会も一緒だよねってところまで、デリヘルは来ちゃってますよね。
大手と呼ばれるところだけが集客して、ダメなところは淘汰されていくわけじゃないですか。昔の流通とまったく同じで、風俗もそこまでレベルが上がっちゃったんですよ。
でも、リスクがある商売ということは変わりません。だから、一部上場企業のような大資本は絶対参入出来ないし、してこないですよね。
そこがメリットといえばメリット。そこだけはまだ幸いですよね。
今後の業界として必要な人材ですけど、風俗ってもう、一般のビジネスなんですよ。
昔のようなビジネス以前の風俗なんてもうないので、一般のビジネスとして捉えられる人がやっぱりいいですね。もう一般の会社のつもりでやらないとアウトです。
だから、帳簿読めますかとか、経理的なものも含めて出来るようになっていないと、もうそろそろダメなんじゃないですかね。
そういう意味で、一般のサラリーマンを辞めてきましたという人は、やっぱり希望がありますね。うちもそういう人が欲しいですから、そこのところ宜しくお願いします(笑)
――風俗ビジネスに流通の考え方を持ち込んで成功した平井さん。その眼には、かつて大資本による流通の近代化が進んだように、いま風俗の近代化が進んでいるように見えるのかもしれない。
数多の荒波を乗り越え、現在は一線を退いている平井さん。その厳しい助言の裏には、新しい世代への新たなる希望が込められていた。
(インタビュー:新海亨)
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平井 学(ひらい まなぶ)
1964年、横浜市出身。大学院中退後、流通系一部上場企業に就職。45歳のときに、父の会社を継ぐ形で事業家となる。その後、現在のサンキューグループの前身に関わるようになり、同グループのデリヘルシフトに合わせて代表に就任。現在は一線を退き、業界発の社会貢献活動について模索している。尊敬する経営者はなし、座右の銘もなし。サンキューグループ:公式サイト
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