「お客様にも女の子にも、誠実に。体当たりの仕事が、道を開いた」~走り続ける男。ミクシーグループ 佐藤代表#2
2019年03月20日
――全国31店舗の『ミクシーグループ』。現在代表を務める佐藤氏(43)は、中学校卒業後、まず大工としての道を歩む。将来を思い、その後、札幌の店舗型ヘルスに入店。そこで5年間を過ごしたという。
“元大工”のヘルススタッフは、いったいどんな接客をしたのだろうか?
業界に来て、驚いた。「何でウソばかりつくんだ?」
お店に入ってから、最初はフロントの仕事を必死に覚えたよね、掃除から始まって、挨拶に接客。当時の労働環境だからね。朝から晩までって感じだったけど、不思議とツラいと思ったことはないんだ。
その時初めて、「あ、大工ってわりと過酷だったのかな?」と思ったりしたよね(笑)。こっちも呼び込みで外に出たりはあるけど、基本的には中でできる仕事だもんな。この感覚は、2年でも1年でも北海道で過ごしてくれればわかるよ。
入って驚いたのはね、周りのお店も先輩スタッフも、みんなウソばっかりつくんだよな。
いもしないのに「かわいい子がいます」とか、待ち時間30分なのに「15分待ちです」って言ってみたりだとか……。
お店に入れちゃえば何とかなるって思ってるんだよね。でも僕から言わせたら、「ならないから! お客様逃げるから!」。
だけど23年前の札幌って、それが普通だったの。だからフロントに立たせてもらった時に、僕は正直を“徹底”することに決めたんだ。こんな感じにね。
「佐藤君いる? 遊びに来たよ」
「(笑)。どうも! いらっしゃいませ。いつもいます」
「今日かわいい子いる?」
「えっと、〇〇さんのお好みの子はいません。でも、おススメの子はいますよ」
「えー」
で、ここで写真を見せる。タイプじゃないから、お客様は「うーん」て渋るよね。
「でもサービスがいいし、すごく優しいんですよ。写真とちょっと、雰囲気も違いますから」
「……」
「今1時間待ちだから、ちょっと考えてみてくださいよ」
「え? しかも1時間も待つの?」
1つもウソを言わない。だから、お客様が帰ってくる
ここでお客様は出て行っちゃう。ところがおもしろいもので、何人かはコーヒーを飲んだりなんかして時間潰して、戻って来てくれるんだよね。
なぜって、僕は1つもウソを言ってないから。お客様を見て、「この子なら、気に入らないことはない」っていうのも、ふだんの付き合いでわかるんだよね、なんとなく。
もちろん、お客様が出ている間に、女の子にも耳打ちしとくわけ。
「お気に入りの子が休みで、今日代わりに付いてもらうかも。こうこうこうで、こういうサービスとか気遣いが好きな方だから」って。
ねらい通りにお客様が戻ってきたとするでしょう? 入って遊んでくれて「いや、確かにいい子だったよ。ありがとう」なんて言ってくれたら、フロントで「よし!」って1人ガッツポーズ……したいところなんだけど、それは置いて、とにかく女の子のところに行くんだ。ダッシュで。
「ありがとう! 気に入ってくれてたよ」
「こっちこそだよー。さとちゃんありがとう。次は指名してくれるって」
北海道の子は優しいからね。ハグぐらいしてくれたかもしれない(笑)。おかげさまで、良い雰囲気で仕事させてもらってたよ。
僕は逆の方法を選んだ。勝てると信じていた
周りがぜんぶウソついて接客してる時に、自分の店もウソつかなきゃバカだろう。
たぶん、これが僕が入った当時の、店の考え方だったんだ。でも僕は違うと思った。むしろ逆。
自分のとこだけ正直にやれば良いのさ。そうすれば勝てる。
もうそれは何だろうな、ゼッタイそうだと、僕は信じてたね。おそらく最初にフロントに立った時に、1つ2つそれで成功したり、喜ばれたりしたんじゃないかな。それが“経験則”になったんだと思うよ。
実際店の売上はバカバカ上がった。僕の給料も増えた。先にズラーって30代40代の上司がいてさ、なかなか出世できないグループだったけど、それでも店長までやれたからね。
ただ、その上司がね……。よくなかった。自分だけいい思いしててさ。
割り切れない思いが募り、退職。今、そのお店はない
20年以上前は、店の入り口にカメラもないし、こんなパソコンもなかった。よくやってたなって思うけど、シフトから売上から、ぜんぶ手書きなんだよね(笑)。
それを良いことに、好き放題とまでは言わないけど、上司はよからぬことをしてたわけだ。
最初はね、「そういうもんか」と思っちゃって。自分の給料さえきっちり上げてくれればいいやと思ってたの。
でも、やっぱり人間て、そんな風に割り切れないんだよな。だんだんと、「ちょっとなあ」と思うようになって、やる気が失せちゃってさ。
5年目に、転職することに決めた。辞めた後、4年でそこは潰れちゃったよ。7店ぜんぶ閉めてたね。
やっぱり、そんな風だと良い人財は育たないよな。馬鹿馬鹿しくなって、みんな辞めちゃうよ。
「入ったばかりのくせに」。ミクシーグループでの戦い
それで、18年前。25歳か。2001年の3月15日に、僕はミクシーグループに入社したんだ。
今度はさらに大きいところで自分の力を試したいと思ったし、ミクシーももう10年以上続くグループだったからね。きちんとしてるだろうって思ったんだ。
実際きちんとしてた(笑)。既にパソコンが導入されてて、女の子のシフトも売上も、Excelでちゃんと管理されてたんだ。書式が決まっていて、不正なんてできないようになってるのね。ずいぶんと進んでた。
ただ、売上は全然だったんだ。後から聞いたら、一番売上が低い店だったらしくて……。
5年の経験があったから「お前早番見てくれ」って言われたんだけど、驚いたよね。まず女の子が4人しかいない。それでさらに、10本とか11本とかしか付かないんだ。
原因? それは単純さ。女の子にやる気がない。いや、違うな。やる気以前に、誰も稼がせ方を教えてあげてなかったんだね。
女の子は「こんなもんだろう」っていう感じで働いて「稼げないな」と思って、そしてその後、別のお店に行くんだ。
これはね、僕は罪だと思ってる。当時も思ってた。教えてないっていうのはお店の怠慢だし、熟女店なんかもあるだろうけど、女の子は永遠に若いわけじゃないんだ。知っていれば稼げたかもしれないのに、教えてあげないのはないよ。いちばんヒドいことだ。
だってこの子たち、次のお店に行ったって同じだよ。稼げない。もし借金とかあったら、この子たちどうなるの?
で、僕は「どうせ暇なんだし」って、笑顔から接客から何から、ぜんぶアドバイスしたの。不安? いっぱいあったよ。そんな風にしたら、女の子が1人すぐ辞めて、3人になったしさ。でも、任された以上はね。
「何で入ったばかりの佐藤君に、そこまで言われるの?」
「僕は任された。みんなを稼がせるのが僕の仕事だ」
「そんなのそっちの都合じゃん」
「そう言わないで。な。試しで良いから、僕の言うこと聞いてみてくれよ。暇じゃ困るのは、一緒じゃないか」
「……そうだけど」
「佐藤君、ありがとう」。女の子は生徒になった
接客って、意識するかしないかだと僕は思ってたから。1本1本反省すれば良いと思ってたの。
だから僕は、帰り際のお客様に直接感想をうかがって、「あ。これは直すべきだな」と思ったら、伝えた。その際に忘れちゃいけないのは、必ず女の子の言い分も聞くことなんだ。
女の子、機械じゃないから。感情がある。たいがい理由もあるものなんだ。楽な仕事か?って言ったら、サービスとしてはハードな職種なんだしね。しっかり女の子の思いを受け止めてから、アドバイスするわけ。
「わかる。ただ、男の立場で言うとさ」って。ちょっと男心を知れば解決するようなことも、たくさんあったからね。
女の子も、だんだん僕を信用してくれるようになった。要は、結果なんだ。帰り際、お客様の表情を見たら、満足してくれたかどうか、わかるじゃない? で、女の子に言うわけ。
「今の人、たぶんまた来るよ」
女の子は「ふーん」て顔でそっぽ向いてる。でも1人でも2人でもほんとに戻って来たら、「こいつの言うこと聞いてやろうかな」って、思ってくれるものなんだ。僕を見る目が変わってくる。
「佐藤君、ありがとう」
指名が付いて、お礼を言われるようになったら、こっちのものだよな。お互いのやる気とやる気が相乗効果になって、売上はぐんぐん上がっていく。2か月で、3人に20本付くようになったからね。
その年の7月1日、しっかり覚えてる。当時の最速記録で、僕は『教えてっ先生‼』の店長に、異動になったんだ。僕自身も認められたってことだよね。すごく嬉しかった。誇らしかったよな。
生徒たちのおかげ?(笑) うまいこと言うね。でもそうだね、あの子たちに会えたら、今何て言うかな。
……いや、ダメだな。先生も40歳越えちゃったからね。涙腺ゆるんでる。泣いちゃうよ、きっと(笑)。
――上司に嫌気が差し、当時すでに大手としての知名度を備えていた『ミクシーグループ』に移籍した、佐藤代表。女の子の信頼を得、売上にも貢献し、わずか4か月で店長に就任する。
そこから代表となるまでの道のりは、果して……。
(インタビュー:新海亨)
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「いつも結果で応えてきた。だからみんな、信じてくれた」~走り続ける男。ミクシーグループ 佐藤代表#3
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ミクシーグループ代表 佐藤
北海道出身。風俗業界歴は23年。20歳で店舗型ヘルスの店長を務め、25歳でミクシーグループに入社。わずか4か月で店長に就任し、その1年半後には札幌エリアのマネージャーとなる。要職を歴任後、2013年、35歳でミクシーグループ全エリアを統括する代表取締役に就任。気さくな人柄で交友範囲は幅広い。楽しみは従業員との飲み会。未だに新入社員とも食事に行くという。
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