「SWASH、風俗店スタッフ向けの研修やってます!」~ストーカー対策編~

2016年09月08日

by要 友紀子要 友紀子SWASH

みなさん、はじめまして。私は、セックスワーカーの安全と健康のために活動するグループ『SWASH』の要友紀子です。

『SWASH』では、2013年よりほかの支援団体と協力をしながら、風俗店スタッフ向けの研修を年に一度行っています。

今回は、2014年と2015年に開催した「ストーカー対策」と「在籍数アップ」の研修の様子を2回に渡り、連載させていただきます。

第一回の今回は、2014年に開催した「ストーカー対策」研修の様子をお伝えします。

講師には、『RC-NET(レイプクライシス・ネットワーク)』の岡田実穂さん、宇佐美翔子さんを迎え、風俗店店長や男性スタッフ約90人の方に参加していただきました。

以下、岡田さんと宇佐美さんに研修を振り返ってもらい、研修内容を伺いました。

ストーカー対策をするメリット

セックスワーカーたちは、多くのリスクを抱えながら働いています。そのリスクのひとつが“ストーカー被害”ではないでしょうか。

このストーカー被害に対して予防や事後対応などの対策がとられていれば、セックスワーカーは安心して働くことができます。

安心できることで出勤率は上がりますし、対策がしっかりとれているという認知が周りに広がれば、求人効果につながるかもしれません。

セックスワーカーにとっても風俗店スタッフにとっても、大きなメリットですよね。

ストーカーとは?

研修の冒頭ではまず、「ストーカーとはなにか?」「法律ではどのような行為が犯罪になるのか」の説明から始まります。

ストーカー行為の8パターン
①つきまとい、待ち伏せ、押し掛け ⑤無言電話、連続した電話、メール、FAX
②監視していると告げる ⑥汚物等の送付
③面会、交際の要求 ⑦名誉を傷つける
④乱暴な言動 ⑧性的羞恥心の侵害

上記の8パターンに沿って、実際に起こったストーカー行為を説明しました。

表のようなストーカー被害があった場合、警察や専門機関に相談をすれば対応してもらうことができます。

ストーカー被害に遭わないためには? -予防

ストーカー被害に遭わないためにどんなことが必要なのでしょうか。研修ではストーカー化しやすいお客さんとストーカー被害に遭いやすいセックスワーカーを紹介するとともに、その対処法を紹介しました。

ストーカー対策

「彼女は、自分のことが好きだ!」とすぐに思ってしまったり、店外デートの要求を繰り返すお客さんはセックスワーカーの営業トークが通用しません。

こういったお客さんは相手を支配下に置きたいという欲求が強く、関わりが深くなると危険性が高くなります。コミュニケーションの取り方には注意が必要です。

また、セックスワーカーについて差別的な見方をもっている人というのは、要するに「本当は、この仕事をしたくないはずだ」「セックスが好きで働いているんだ」などの考えをもっているお客さんです。

正義感からくる行動になるので、自分の誤りに気づかず段々とエスカレートしていく可能性があります。

ストーカー対策

そこで、セックスワーカーがお客さんと1対1になる前に、風俗店スタッフの方が誓約書を交わすというのが最も手っ取り早い方法です。

このワンクッションがあるだけで、かなりのセックスワーカーたちが助かりますし、被害は少なくなります。

ストーカー対策

より誤解を与えてしまいがちなプレイとしては、恋人プレイのような、より“個人的な対応”という空気感を与えやすいサービスがあります。

相手を乗せるために、「好き」などとささやくことは指名につながるかもしれませんが、被害の可能性もぐんと高まります。

また、セックスワーカーによっては、はっきりと「これは仕事だから」とお客さんに伝えられない人や、風俗店スタッフとコミュニケーションが少なく、悩みの相談をしない人も被害の可能性が高いと言えます。

ストーカー対策

お仕事を始める前、講習の段階で“恋人感覚”でサービスをするように教えられるセックスワーカーが多いようです。

風俗店スタッフ側は、この“恋人感覚”に対するリスクマネージメントをしっかりとる必要があります。

また、セックスワーカーたちはなにか問題が生じたとき、「お店に悪いな」「言ったら怒られる」と思い、なかなか風俗店スタッフに話をしないことが多いようです。

みなさんは可能な限り、「怖いお客さんはいなかった?」「しつこくされなかった?」など話を聞いてあげるようにしてください。

ストーカー被害に遭ってしまったら? -事後対策

もし、みなさんのお店で働いているセックスワーカーがストーカーの被害に遭ってしまったら……。店舗の方々だけで対応をするのは無理な場合があります。

研修ではストーカーに対する法律や警察の対応フローの説明にとどまらず、地元の支援団体や相談機関、一時的に保護をするシェルターの情報を伝えました。

ストーカー対策
(ご参考)配偶者からの暴力全般に関する相談窓口一覧

被害後のアフターケアも大切

「被害に対応しました。はい、終わり」ではありません。被害に遭ったセックスワーカーは心的な外傷を負っています。

仕事を休むことができるのであれば十分な休養を与えるべきですし、必要であれば心療内科を始めとする医療機関の受診を勧めてください。

また、ストーカー被害がなくなったとしても、トラウマで仕事を休んでしまうケースは少なくありません。被害後のアフターケアまでしっかり行ってください。

最後に

会場では、みなさんが一生懸命メモをとりながら、熱心に研修を受けていただきました! 研修の最後には、風俗業界関係者のみなさんから幅広く日ごろの悩みの相談を受ける時間を設けました。

そこではストーカー対策に対する相談はもとより、「メンタルの調子が良くないセックスワーカーへの対応はどうすればいいか?」「シフトどおりにしっかり出勤してもらうためにはどうしたらいいのか?」といった悩みが数多く寄せられました。

多忙な風俗店スタッフの方が、セックスワーカーのメンタルケアを十分に行っていくには限界があると思います。

そこで、このような風俗店スタッフ向けの研修を通じて、対処法や協力できる第三者機関を伝えることにより、その負担を軽くできればうれしいです。

(講師・取材協力:『RC-NET』代表・岡田実穂さん、副代表・宇佐美翔子さん)

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執筆者プロフィール

要 友紀子

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1976年、大阪府出身。セックスワーカーとして働く人たちが安全・健康に働けることを目指して活動するグループSWASH(Sex Work And Sexual Health:スウォッシュ)メンバーとして、活動。

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