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レスリングに賭けた学生時代。ライガー選手に憧れていた

こんにちは。時間通りですね（笑）。お待ちしておりました。はい、記事は昔読んだことがあります。先輩のインタビューが載っていて……。

小さい頃からプロレスラーになりたかったんですよ。新日本プロレスのライガー選手が憧れでした。高校時代は練習に明け暮れ、大学にもスポーツ推薦で入学。キツい日々でしたね（笑）。レスリング部はゴリゴリの体育会系でしたから。

それでも夢があるから頑張れたんですけど、何度か大きなケガをしちゃったんですね。特に腰の骨をやっちゃったのがマズかった。芽が出るのは一握りという世界で、体に爆弾を抱えて弟子入りするのはムリだなと、プロ入りはあきらめたんです。

ただそんなだから、就職しても何をやっても続かないんですね。目標を失ってしまって、何のために働いているのかもわからなくて。

リフォーム営業から始まって、水道工事、とび職、産廃処理、キャバクラのボーイ、工場。どれもこれも1年続けば良い方でした。僕は今でも趣味でDJをしているんですが、音楽イベントに差しつかえたら会社に辞表を出しちゃったり（笑）。ほんと、いい加減なヤツだったと思います。

“高収入で安定した職”。接客の楽しさにも気づいたが……

でも真剣に交際している女性もいたし、将来を思えば、いつまでもそんな暮らしはできませんよね。“高収入で安定した職”ということで、この業界に入ったのが26歳の時でした。

今振り返ると、最初に入ったお店が良かったですね。人見知りでたいへんだったんですが、上司と同僚が親身に辛抱強く業務を教えてくれたおかげで、それを何とか克服できたんです。結果5年も続けることができて。

給与も良かったですし、接客の楽しさに気づけたのも大きいかもしれません。その間に結婚も果しました。順風満帆と言っても良いぐらいだったんですが……。

ところが結局は辞めちゃって。理由？　うーん、色々あるんですけど、一番は離婚したのが原因かなと。寂しいし、生活はすさんだし、昔と一緒ですよね。自分が何のために働いているのか、わからなくなっちゃったんです。

「ここでもう一度」。再び業界に戻った理由は、“人”

その後ウチのグループで働くことになったのは、また転職を繰り返して悩んでいた時期に、「そういうことなら」と店長から誘いを受けたんです。実は今言った初めに勤めたお店で、お世話になった先輩だったんですね。

僕の窮状を知って随分心配してくれました。話の流れで「一度食事でもしよう」と。お言葉に甘えてという感じで出かけていったら、先輩だけではなくて、お店のスタッフも何人か来てくれていたんです。

で、その雰囲気がすごく良かったんですよ。みんな笑顔だし、優しいしなごやかだし、「大丈夫ですよ」「歓迎しますよ」と口々に言ってくれて。

何より嬉しかったですよね。色んな業界と職場で働いてきましたけど、この仕事以外で僕を覚えていてくれて、働きぶりを評価してくれて、「ウチに来いよ」と言ってもらえたことなんて、まずなかったですから。

すぐに「ここでもう一度」とお世話になることを決めて、おかげさまで2月16日で丸1年になるんです。食事の時の印象通り、人間関係の良い職場でした。ありがたいですよね。辞める気なんて全くありません（笑）。

“ムダ”はない。やれば結果は出る。給与も立場も付いてくる

今はむしろ「もっと上に」とか、「いつかは店長に」という思いが強いですね。やれば結果が出る世界なので、自然と欲が出てきたというか。

例えばキャストさんに出勤をお願いするのにも、『写メ日記』を書いてもらうのにも、入社していきなりではなかなか動いてくれないんですね。信頼がない。

じゃあどうやってその信頼を勝ち取るか。自慢じゃないですけど、僕は決して頭が良い方じゃありません（笑）。なので何かに付けてメモを取るんですね。ホームページのプロフィール、お客様のアンケート、耳にする先輩との会話、気になったらとにかく書き留めておく。

「あの子のスタイルと性格はこうで、傾向としてこういうお客様が多くて……」

そして新規のお客様が入った時に「あ、ゼッタイ合う」と思ったら、その子をお勧めするんです。ぴったりハマることが続けば、キャストさんも「いいね、山下」となるもんですよ（笑）。

こうして努力して「ムダだった」と思った記憶がないんですね。さっきも言いましたけど、やれば結果が出るし、それによって給与も上がります。役職も付いてくるのは先行く先輩の“背中”で明らかですしね。すごく頑張り甲斐のある仕事、職場だと感じています。

僕にさえできた。“こういう道もある”と、知っておいてほしい

考えてみれば、こんな風に語れること自体、奇跡みたいなものですよね。僕が就職した頃はもう世の中景気が悪かったですし、最近はコロナだってありました。給与は上がらないのが普通みたいな感じじゃないですか。

なかなか「やれば結果が出て昇給する」とか、「キャリアアップして店長になったらこれをやろう」とか思えないでしょう。おまけに僕には転職癖が付いてしまっていたし……。

なのでこんな形でチャンスをくれた店長には感謝しかないですし、何と言うか、同じように僕みたいに仕事や人生に迷っている方がいたら、「こういう道だってあるよ」というのはお伝えしておきたいんです。

大丈夫ですよ。僕だってやれているんです（笑）。他の人にやれない理由なんて、どこにもありません。

（インタビュー：松坂治良）

取材後記

執筆者

藤野 りさ

レスリングの練習は、ここで語られた以上にキツいものだったはず。だからこそ夢を絶たれた時に、道を失った気がしたのでしょう。「人にも恵まれて、やっと落ち着いた気がする」と山下さん。まだ33歳。今後のご活躍が楽しみになる取材でした。