若手経営者が考える風俗業界のいまとは? セックスワークサミット2018レポート

2018年10月26日

by徳山 央樹徳山 央樹編集者

こんにちは、Fenixzine編集部です。

皆様、セックスワークサミットというイベントはご存じでしょうか?

セックスワークサミットは一般社団法人『ホワイトハンズ』が主催する、世の中の人と風俗業界をつなぐイベント。2012年から開催されており、様々なゲストを招き風俗業界についてトーク・討論してもらう、業界関係者必見のイベントとなっております。

2018年10月8日(月)に開催されました『セックスワークサミット2018秋の大会@渋谷』にFenixzine編集部も参加致しましたので、レポートをお届けしたいと思います!

今回のSWSは次世代風俗経営者ふたりの対談!

「これからの風俗をつくる仲間たちへ」ということで、若手の風俗経営者二人に業界のこれからを語って頂きます。

ゲストはこちらのお二人!!

業界の中でも特に強い発信力を持つこのお二人。

果たして、気鋭の若手経営者はどういう視点で風俗業界をみつめているのでしょうか?

当日の様子

当日は60名以上のお客さんが会場に集合。こういったイベントだと普通は1番前の席が空いてしまうものですが、バッチリ埋まっている所を見ると、参加者様の意識の高さが伺えます!

 

▲司会進行のホワイトハンズ代表 坂爪真吾さん

坂爪さんの趣旨説明があり、お二人の登場となりました。いつにもまして、気合いが入っている様子です!

にしやま:「よろしくお願い致します! 実はまりな店長とは今回が初対面ではないんです。たまに会っては意見交換会などをしている仲なんですけど」
まりな店長:「そうですね、にしやまさんは池袋サイドラインのTwitterが出来た時から追っていただいて」
にしやま:「そう言うとストーカーみたいですけど(笑) 実際そうで、コンセプトに非常に同意できる所があったんですよ! 気持ちにフォーカスしてる部分とか。『やさしい気持ちになれる店』ってサイドラインのキャッチコピーを見た時に『それだよ!!』ってなりましたもん!」

と、語るにしやまさん。お二人のやり取りを見るに、業界内でのスタンスや視点は共通するものがあるようです。

「大手サイトに依存するのやめません?」

最初のテーマはお二人の視点から風俗業界の現状。業界には古い慣習など、時代にそぐわないものがあると二人は指摘します。

にしやま:「僕の考えなんですけど、風俗の経営者は3つのタイプに分けられると思っていて。ジェネレーションギャップみたいなもんで、風俗業に対する捉え方が違うと思うんですよね」

そういって、にしやまさんが挙げた3タイプはこちら。

にしやま:「言い方が悪くなるんですけど『女性はお店の所有物』みたいな考え方で、儲けてきたのがヤンキー層。これはちょっと古い考え方で減ってきていますね」
にしやま:「次に、風営法の改正で参入障壁が低くなって現れた『風俗=ビジネス』と捉えているのがビジネス層。これが今の業界のメインですよね。この2つの層はかなりのシェアを持っているので、このまま風俗業だけで勝ち逃げ出来ると思っています」
まりな店長:「私達は一番下の層ですね。大手がすでに多くの顧客を握っていますし、ユーザーのニーズも多様化しています。なので、アクションを多くして仕掛けて、大手と差別化をしないと生き延びられないですよ!」
にしやま:「そもそも、小さい店は広告費にあまりお金を掛けられないので、露出量で大手には絶対勝てないですしね」
まりな店長:「どんないいお店を作っても知ってもらう機会がないとつぶれてしまいます。風俗を利用するお客さんって、まずシティヘブンで情報を見るんです。なのでシティヘブンありきのビジネスになっていて。そこに載らないと新規のお客さんはまず来ないんですよ!」
にしやま:「風俗はもう広告依存型のビジネスになっちゃってますよね。シティヘブンに載っていない店=存在しないみたいな」

▲業界の依存型ビジネスを指摘するにしやまさん

Googleの検索で上位を取らないとPVが増えない……。一般業界も、風俗業界も全く同じ現象だなと、お二人のトークを聞いてて思いました。

にしやま:「だから小さいお店は、シティヘブンは上手く利用しつつも広告に依存しないお店作りをこれからしていかないと、生き残れないと思っています。」
にしやま:「なのでかりんとは自前のオフィシャルサイトでの集客を強めていくという方針をとりました。業界全体が広告に依存してしまうと、均一化して業界自体も面白くならないんじゃないかと思うんですよ!」
まりな店長:「確かにそうですね……。でも、それで言うとサイドラインは思いっきり広告依存型です(笑)」

お二人の業界に対する考え方は似ていても、戦い方は異なります。そこでお二人には各々の生存戦略を解説して頂きました。

▲お二人に解説してもらった生存戦略

まりな店長さんは“言い値チャレンジ”などのプロモーションによる知名度を武器に集客

にしやまさんはVR技術導入などコンテンツを武器に集客

手法は違いますが、どちらも店舗のファンを作るというゴールは共通していますね。

▲サイドラインの戦略を語るまりな店長さん

生存戦略を語る中で、にしやまさんが業界に警鐘を鳴らしていたのも忘れられません。

にしやま:「小さい店が一番やっちゃいけないのは価格で勝負することですよね。低価格をウリにしちゃうと、回転率回転率のビジネスになって、経営のブラック化が免れなくなってくると思うんですよ。だから一番安い店じゃないけどココがいいっていう心の理由があるお店づくりを各々がしていかないと」
価格で選ばれるのではなく、コンセプトで選ばれる店に。お二人からはその意志がハッキリ伝わりました。

プロ店長っていう存在がいてもいいんじゃないか?

次に話題は『人材』の話へ。業界は、どのお店もスタッフ不足に悩まされているとお二人は話します。

にしやま:「店舗スタッフでいうとこれは結構難しい問題で……。すぐ辞めてしまう人や『お金をこれだけ貰えるから現状で満足』みたいな人が多くて。店長・経営者になりたいって人の不足は非常に感じています。確かにいわゆるフツーの職業に比べると、給料が魅力的な業界ではあるんですけど……」

にしやまさんは時代に合った雇用システムを業界は採用してはどうかという提案をします。

にしやま:「業界で働いていると、仕事が出来る店長とかスタッフって別の店舗の人でもすぐ分かるんですよ。現状、それの奪い合いになってるんですね。なのでオーナーと店長の分離が出来たらいいんじゃないかなと考えているんです。プロ店長ですよ! フリーランスの風俗店舗スタッフチームがいてもいいんじゃないですか?」

▲「プロ店長ってどうですかね?」と、にしやまさん

にしやまさんは風俗業界にもアウトソーシング化を進めるべきと語ります。雑誌などにもフリーの編集チームがあるので、そういった未来も遠くはない気がします。

業界全体がクローズドな雰囲気を作っているから進歩しない

イベントも終盤。お二人には風俗業界が進むべき道について語ります。

まりな店長:「現状、業界って横のつながりが希薄ですよね。競合店=敵だと思っている人が意外といて。古い考えが横行していますよね」
にしやま:「若いオーナーも増えているので、横のつながりは増やしていきたいんです。SNSを見ていても『この人に会ってみたいな~』って思う人は何人かいて。組んで仕事が出来ればとは思っているんです。お互いの店舗が許せばですけど(笑)」
まりな店長:「ちょこちょこ同じ業界の人からは『なんかやろうよ!』って話は頂くんですけど、外部からはほとんど来ないんです。イメージが悪いんですよね、業界全体が(笑)」
にしやま:「業界内と外でイメージの乖離が激しいのもこの業界の特徴ですよね。もちろん、そこから学ぶことも多いんですけど……」
まりな店長:「それって業界自体がクローズドな雰囲気を作っているのが原因だと思っています! 確かにお互いは競合店ですけど、同じ業界という点ではチームじゃないですか? 面白い人が入ってきやすくなるよう、オープンに活動していきたいですね!」
まりな店長:「個人的にはずっとサイドラインの経営を奪うくらいの面白い女性が現われろ!!って思っているんですよ! 入って来て下さい! 是非待ってます(笑)」

▲「私から経営の座を奪え!」と、まりな店長さん

エロは共通言語。もっと世界を『なめらか』に

イベントのラストはまりな店長、にしやまさん個人の野望について。

まりな店長:「私はもともとキャストを経ての経営者なんですけど。風俗嬢として働いている時が年収のピークって夢がないと思っているんですよ。『セカンドキャリアとして、経営者への道もある』っていうケースの成功例になれたら、いま働いているキャストにも夢が与えられるなって」
にしやま:「僕の野望で言うと業界イメージの是正ですね。僕がいま大事にしているキーワードは『なめらか』なんです。エロって老若男女みんな持っているものじゃないですか? 誰にでもある欲求なのに、風俗業界に偏見があるのはおかしいと思っていて。なので、世の中をもう少し『なめらか』になるよう仕掛けていきたいですね」
まりな店長:「就活の際に『公務員か商社かIT業界か風俗か……』って感じで、将来の選択肢の中の一つにこの業界が入るよう『なめらか』にしていきましょう!」

▲お二人の握手でイベントは終了! ありがとうございました!

筆者の感想

筆者は初めてのセックスワークサミット参加だったのですが、とても楽しめました。

新世代が業界のイメージを是正すべく、新しいことにチャレンジして業界を盛り上げようとしている感じは働き方 2.0ならぬ風俗 2.0を作っている感じで「この業界……今がアツいのでは?」と感じてしまいました。

今後もこのお二人に目が離せませんね!アツい話をありがとうございました!!

Fenixzineは今後もセックスワークサミット、ひいては業界全体を応援していきたいと思います!

執筆者プロフィール

徳山 央樹

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FENIX ZINEではライターと編集を担当。インターネット好きが高じて、WEBメディアへの転職を決意。平日も休日もインターネットをしています。

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