「PRこそ経営の要! “おもしろ”から“社会派”へのしたたかな転換」~デッドボールグループ総監督・篠原政見のリアリズム#2~
2016年08月22日
――連載第1回では、『デッドボール』の創業秘話を伺いつつ、篠原さんが業界の常識から自由でいられたことが勝因のひとつであるということをお伝えした。続く第2回では、『デッドボール』のもうひとつの勝因である独自のPR戦略について伺っていく。
みんなやることが一緒だからうちはマスコミ受けを狙う
当時は、都内最安店ってだけで目立ったんですよ。だから、広告費をかけるよりもメディアに取材に来てほしかったんですよね。
どんなSランクの広告ページを買い取っても、『東スポ』にバーンって取材に来てもらうのにはかなわないですからね。それがテレビだと何千万、下手すると何億って効果ですから。
そもそも、みんなやることが一緒じゃないですか。決まったサイトに載っけて、お客さんを待つ、求人を待つ。それで、繁盛店とそうじゃない店ができるってことは、そこで勝負しても頭ひとつ抜け出すのは難しい。広告サイトを否定はしませんし、その役割は大きなものですが。
それで、マスコミに向けてのFAX攻撃です。
取り上げられやすいように、キャッチコピーを12~3文字っていうのにこだわったんですよ。語呂がいいから。
- “レベルの低さ日本一”
- “プライドだけは高級店”
- “身分証有れば即採用”
覚えやすいじゃないですか。人の印象に残す。マスコミが食い付いたときに、それをポンって出すと、一発で人は覚えるんですよ。
――開業後半年、篠原さんのもくろみは見事に当たる。『週刊アサヒ芸能』での記事掲載を皮切りに、次々とマスコミが報道。『デッドボール』は瞬く間に、全国区の知名度を誇る人気店となった。
その後も、篠原さんは手綱を緩めることなく、毎年新手のPRを仕掛ける。『東スポ』での連載、著書の発売、そして風俗業界では不可能と言える地上波への登場。
知名度の上昇に比例して、店舗の数も増加の一途をたどり、『デッドボール』は“グループ”と呼ばれる規模にまで成長していった。
順風満帆だった“おもしろ路線”でのPR。しかし、ここでひとつの課題が生まれた。“飽き”による求人応募数の冷え込みだ。
Twitterが生んだ“社会派路線”の新しいPR
知名度があれば、女の子は来る。地上波であれば、女の子は当然目にする機会も多い。でも、それが停滞して、どうしようかなって。これ以上おもしろ路線で地上波に出て、なにがあるんだろうって。
そう思った時に、『ホワイトハンズ』の坂爪さんが私の本の書評を書いて、『デッドボール』をガンガン批判していたんです。そこで、坂爪さんにちょっと会ってみようと思って、Twitterでツイートしたんです。「来ませんか」って。そしたら、「来る」って言ってきて。
@whitehands_jp はじめまして、鶯谷デッドボール総監督です。書評も読ませて頂いており、坂爪様のお考えも何度かツイッター等で拝見して承知しております。否定も肯定も反論もするつもりもございません。
ただ雑誌やネット情報、書籍やテレビでは読み取れない部分が大半だと思います。— デッドボールグループ代表(初代総監督) (@udbsoukantoku) March 18, 2015
@whitehands_jp 突然で大変失礼は承知の上でご提案ですが、一度現場をじっくり観察されてはいかがでしょうか。
事務所や待機状況、在籍女性とも直接お話しながら。
お忙しいとは思いますが今後の研究材料にもなると思いますのでご検討頂けましたら幸いです。
宜しくお願い致します。— デッドボールグループ代表(初代総監督) (@udbsoukantoku) March 18, 2015
会ったら意外にいい人で(笑)。
坂爪さんは、鈴木明子さんっていうソーシャルワーカーの有名な人を連れて来てくれて、「鈴木さんの現場も風俗も扱ってる女性が一緒だね」ってことで話が合って。
だったら、風俗店が貧困女性を支援するのはどうかって話になって、出来たのが『風テラス』です。
- 風テラス
- 無店舗型の性風俗店(デリバリーヘルス)の待機部屋に、弁護士・臨床心理士・社会福祉士(ソーシャルワーカー)を派遣して、在籍女性の生活・法律相談に無料で応じる事業
出所:一般社団法人ホワイトハンズHP
女性をこの方向性から支援する風俗店って初めてだろうし、マスコミの食い付きもいいだろうと思ったんですよ。地上波で風俗はやりづらいけど、貧困を救ったり社会復帰の方向性だったら扱いやすいじゃないですか。
テレビ局の人も「それはいけますね」ってことになって。
それで、月間20人以下に落ち込んでいた求人応募が、今では40人くらいに持ち直しました。
女性の社会復帰のための会社を持つ
今年度から来年度にかけて、次の大きな施策のひとつとして風俗店で使う備品の卸売会社が欲しいですね。
ローションとかいろんなの。従来、バラで送られてくるグッズをパッケージ化して、“お仕事セット”って形で販売したら、お店側ってすごく楽なんですよね。
運営スタッフは、うちに在籍している子の中から社会復帰を目指す子を織り交ぜて。
そこら辺の福祉作業所より、女性にマッチした社会復帰の場所が提供できると思うんですよ。福祉の人たちって押し付けがあるんですよね。「風俗はダメ」って決めつけがあったり、メンタルに問題を抱えている子に対して、朝九時出勤を大前提にしていたり。だから、女の子は続かずに逃げていくんですよ。
その辺の柔軟性は、福祉の人たちよりも、風俗店経営の私の方が長けていると思っています。
女性のメインの稼ぎは『デッドボール』でも構わないけど、朝起きて、仕事して、夕方帰るみたいな習慣付けをする会社を、風俗店がもっていますよっていう。それで、人間が変わるとは私は思ってないんですけど、社会復帰の第一歩としての手助けにはなるはず。
その会社は、もうからなくても大丈夫。そこで出る赤字は、私にとってはやっぱり広告宣伝費なんですよ。『風テラス』なんかも、意外と安上がりで運営できてますしね。それでマスコミが取り上げてくれたらウチとしては大成功。
それから、2020年の東京オリンピックに向けて、規制強化や摘発も厳しさを増すと予想されますが、そこまで真面目にやっているデッドボールをつつくと、ほかの風俗店全部摘発しなきゃいけないだろうみたいなお店に仕上げたいというのもありますね。対策はしていかなければいけないなと。
法令遵守は当たり前で、それプラスアルファが欲しいんです。
――“おもしろ路線”から、風俗とはおよそ縁のないと思われた“社会派路線”へのしたたかな転換。ここにも、篠原さんの透徹したリアリズムが浮かび上がってくる。篠原さんは語る。
風俗店が、ボランティアでそういうことをやってるってなると、ツッコミどころ多い気がするんですよね。
女性で商売をしている身分で、その女性を助けるなんて最初にもってくると矛盾してるじゃないですか。それなら宣伝の一環としてやってるってことを言ったほうが、潔いですよ。
続く第3回では、『デッドボール』の躍進を支える運営スタッフのマネジメントについて、2016年に直面した前年割れの危機をいかに乗り越えたのかというエピソードにも触れつつ、伺っていく。
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「年収3,000万円は余裕で可能! デッド流スタッフマネジメントのリアル」 ~デッドボールグループ総監督・篠原政見のリアリズム#3~
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篠原 政見
1972年生まれ。高校卒業後、一部上場企業に就職。37歳の時、「年収を3倍にする」と決意し、風俗業界に参入した。好きな女性のタイプは、100人男がいたら100人いい女だという女性。最近、YouTubeにハマっている。著書に『なぜ「地雷専門店」は成功したのか?』(東邦出版、2014年)。
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