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20代で、勢いのままに会社を設立。待っていた厳しい現実

もともとは福岡で営業マンをしていたんです。高校を出て、18歳からずっとですね。

最初は食品、次にブライダルのご提案。人と話すのは好きだし、行動力もある方なんで、ツラいというのはなかったですよ。楽しく仕事していました。

27歳の時には、取引先の知人の勧めを受けて、勢いのままに独立もしたんです。ブライダル関係の貸衣装の会社。ところがこれが、なかなか厳しくて（笑）。

何と言うか、勤めていた頃の“大きな看板”と、新しく始める“小さな看板”の差を感じました。僕個人の魅力で付いていたお客様ばかりではない……。そのことに、独立して気づいた感じです。

結局まだ若かったんですね。でも会社は30歳まで持たせましたよ。20代のチャレンジに、後悔はないです。

女の子から学んだ謙虚さ。仕事は、1人でやるものではない

とは言え大きな借金を背負ってしまって（笑）、これを返さなきゃいけない。そして性格だと思うんですけど、僕、自己破産はイヤだったんですね。全部きっちり返したかった。

30歳から始めて「大きく稼ぎたい」となった時に、当然のように風俗業界が頭に浮かびました。初めは福岡のソープランド。頑張って稼いで、わずか5年で借金も返せたんです。

僕は他に店舗型ヘルスも経験しているんですけど、これから業界入りする若い方に言いたいのは、“女の子への感謝を忘れないで”ということ。

僕自身、最初に学んだのがそのことでした。単純に女の子は体張ってます。決してラクな仕事じゃない。その中で驚いたのは、基本的にみんな優しかったということなんですね。新人で入った当初は僕にだってミスはあったんですけど、責められるようなことがなかった。

「最初だし、仕方ないよ」

それまでは自分の力だけで頑張っているような気持ちもあったんですけど、彼女達との関わりの中で、謙虚さを学んだ気がします。仕事って、みんなでやるものだぞって。

こちらも人間。相手も人間。女の子は覚えていてくれる

だから僕は、女の子達に“無理矢理出勤させる”みたいなことは、ゼッタイにしなかったですよ。当欠（当日欠勤）も……、そう言えば怒ったことないですね。一度もないんじゃないかな。

それが体調の面にしろメンタルの面にしろ、当の本人がキツいと言っているんだから、信じてあげて良いじゃないですか。それに無理矢理出勤してもらっても、嫌々のサービスになってしまったら、お客様にとっても良くない。誰も得しないんですよ。

むしろ僕は当欠は当たり前だと最初から思うようにしていました。例えば6室あったとしたら、常時7人～9人出勤してもらえるようにしておくんですね。で、当欠が出ても補えるようにしておく。「休めたら休みたい」とか、「お休みは臨機応変で良いよ」という子も中にはいるんで、日々話し合って、うまく調整するんです。

それでも出勤が足りない時？（笑） もちろんあります。でもそういう時にこそ、“責めない”という姿勢が活きてくるんです。

「すみません。今日人数が足りなくて。出るの難しいですかね」
「良いですよ。この前無理言って休ませてもらったし」

こちらも人間、相手も人間ですからね。恩と言うと大げさですけど、大概の女の子は“あの時気持ち良く休ませてくれた”というのを覚えていてくれて、逆にピンチの時は助けてくれるものなんです。

さっきもちょっと触れましたけど、仕事は1人ではできない。最後は助け合いなんですよ。

15年以上続く『ナナカフェ』。リピーターが多い理由は？

今僕が勤めているのは“出会いカフェ”なので、“女の子の出勤”というのはありません。男性もお客様で、女性もお客様。僕らが行っているのは、双方の“出会いの場”の提供ですから。

でも実は“人同士だから”というのは、ここでも一緒なんですね。相手への気遣いが、お店の人気を左右します。

ちょっとしたことなんですよ。大きな声で「いらっしゃいませ！」とご挨拶する。雨が降っていたら「お足元の悪い中を」と一言添える。今みたいな冬は「お寒い中を」と枕詞に据えるだけで、お客様の印象は全然違います。

店内にご案内してからも同様です。上着を脱がずにいるお客様がいたら、「暖房強めにしましょうか？」とお声がけします。特に初めての方なんかは、自分からスタッフに声を掛けられなかったりしますから。

後は、これはもちろん慣れてからで良いんですけど、お顔を記憶しておくのも効果的です。フロントで「お久しぶりです！」とご挨拶すると、お客様は「覚えていてくれるんだ」と思うものなんですね。

おかげさまでウチは、名古屋で15年以上続く人気店ですけど、リピーターが多い理由は、こういった細かい気遣いの積み重ねなんですよ。

“出会いの場”としてのニーズ ＋ “ネットではない”という強み

実は僕『ナナカフェ』は出戻りなんですよ。以前ここで2年ほどお世話になった後、広島のヘルスにいたんですが、このコロナ禍で店を畳んでしまったんですね。

「これからどうしよう」

こう悩んだ時、いちばんに思い浮かんだのが、『ナナカフェ』だったんです。さっきも言いましたけど、まず“続いてきた”“コロナにも負けていない”という実績ですね。

もう1つは、こういう時代だからこそ、“出会い”というものに期待をする方は、男女を問わず多いんじゃないかと思ったんです。ここ数年の“マッチングアプリ”の隆盛を風俗の現場で眺めていても、それは如実に感じていました。

一方で、やっぱりアプリ上、ネット上でだけでは不安という方も、一定層いると思うんですね。その意味でも、こうした“場”というものは望まれていると感じるし、だからこその根強い人気だとも思うんです。

大切なのは、お客様への“気遣い”。頑張ればお給料だって上がる

業務内容に“難しい”ということもないですしね。これも繰り返しになっちゃいますけど、お客様への“気遣い”ですよ、いちばん大切なのは。その気持ちさえあれば、接客業務は自然に覚えていけますし、“初めて”という方でも、僕を始め先輩スタッフがイチからサポートします。

今だったらクリスマス。年が明ければお正月という形でイベントをみんなでつくるのも楽しいですよ。ここでも“どうやったらお客様に楽しんでいただけるか”がポイントです。「自分だったら何が嬉しいかな？」と考えてみると良いですよね。

もちろん頑張れば昇給していきます。40万円50万円という形で月給も上がるので、やりがいはありますよ。じゃなきゃ戻ってきません（笑）。マッチングアプリを日常で使っている若い方なんかは、特にアイデアも豊富だと思うんです。

「こんなことできたらいいのに」

もしそういうものがあったら、ぜひここで提案してほしいですよね。みんな聞く耳はあるし、嬉しいぐらいだと思います。

取材後記

執筆者

松坂 治良

とにかく前向きな溝田さん。抱えた借金に押しつぶされず、早々に返済して人生を立て直したのも、この“姿勢”によるところが大きいのだと感じます。数か月前に“コロナ”で職場を失ったショックを、微塵も感じさせない明るさ。『ナナカフェ』でも、多いに周りを盛り上げていることでしょう。取材中何度か中座される場面があり、お店の“活気”もたいへん印象的でした。