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航空カメラマンの職はもう危うい。そこで考えた次の仕事は……

「これはマズいな」

実は7年前まで航空カメラマンをしていたんです。ヘリコプターに乗って、上空から写真を撮る仕事。ただピンと来た読者の方もいると思うんですが、『ドローン』ができたでしょう？

あれが実用化されれば、人がいらなくなるのは目に見えていました。現に会社の首脳陣も「ヤバい」と頭を抱えていて……。

僕自身も次の仕事を考えなければという時に、この業界が浮かんだんです。

オフィシャルWebの魅力が決め手。6年前、既にSNS機能を実装

実は昔、4年ほど大手のグループでWeb周りを担当していたことがあったんですね。理由は給与。当時大学を出てWebデザイナーになりたかったんですが、一般企業とこの業界とでは、初任給が5万円以上違うことに気づいて。

内勤スタッフと兼任のお店だったんですが、それもおもしろそうだなと（笑）。若さもあって、単純に好奇心がありました。

で、戻るとなった時にどうして『椿』だったのかと言うと、オフィシャルサイトにすごく魅力を感じたんですよ。まず見やすいし、テキストも画像も練られている。既にSNS機能も実装されていて、「ネットに力を入れているな」というのがすごく伝わりました。

しかも面接でトップの会長に会うと、「実力が付いたら好きにしてくれて良いよ」と。願ったり叶ったりですよね。おかげさまで僕も、6年経った今ではグループの代表です。文字通り好きにやらせていただいています（笑）。

今や予約の8割がWebから。なぜ“電話ゼロ”を目指すのか

グループができて19年、『椿』も12年になります。僕が入って以降、かつてと今とで何が違うかと言ったら、“IT化の推進”ということに尽きると思います。

ウチはオフィシャルサイトに予約機能を持たせているんですが、今現在お客様の電話予約はわずか2割。8割がWeb予約なんです。もうリピーター様はほぼWebからという感じですね。

電話だとポイントが1％しか付かないんですが、Webでは2％還元しています。90分2万円だとしたら、電話なら200円、Web予約なら400円がバックされる。週末はポイント5倍デーなんかも行っているので、自ずと流れをつくれたんですね。

なぜそうまでしてWebに？（笑） “サービスが標準化”できるんですよ。電話だとどうしても“上手い人と下手な人”は出てきてしまうでしょう。確かにマニュアル化という手もあるんですが、それでも差は生まれちゃうんですね。

しかしWeb上のテンプレート化したメッセージであれば、誰でも同じやりとりができます。システムが自動で応答してくれるわけで、つまり“属人化”から逃れられるんですね。いずれは“電話ゼロ”まで進められたら良いなと。

送迎もシステム化。予約後瞬時に日時共有。終了の電話さえ不要

そしてウチは、中のこともITで管理しているんですね。例えば送迎もシステム化しています。

従来だとまずお客様からお店に指名が入って、次にスタッフはそれをドライバーさんに電話やLINEで伝えて、ドライバーさんはキャストさんを迎えに行き、最終的にホテルに着いたキャストさんが、電話かLINEでお店に折り返す……みたいな流れでしたよね。

地味に手間ではないかと。特にお部屋に着いてからのお店への電話は、キャストさんにとっても面倒なものです。忘れられるとこちらもヤキモキしたり（笑）。

でもここのシステムでは、お客様のWeb予約が完了した時点で、スタッフ、ドライバー、キャストさんに日時が通知・共有されるんですね。

お客様の元に着いたキャストさんも、電話連絡はいりません。“自動入室機能”というのがあって、「入室しました」を選択すると、オフィスのパソコンに通知が来るようになっています。サービス時間終了の“アウトコール”も、機会音声が自動的に050の番号から掛けてくれるんです。

しかもこれらはほんの一例なんですね。グループでは同じように様々なことがシステム化されているんです。

IT化推進の“嬉しい誤算”。スタッフの給与を下げず、経費削減

IT化のメリットは、もともとは業務効率化でした。サービスが標準化され、煩雑なやりとりも簡素化されれば、スピーディにものごとを運べます。

そして更に、これはこの“コロナ禍”で特に「やっていて良かった」と思ったことですが、組織の経費を削減できるんですね。他と同じで、ウチも昨年の今ごろはたいへん苦しかった。売上対前年比3割減というところまで行ったぐらいです。

「どうしよう。どこを削ろう」

だけどゼッタイにスタッフの給与は下げたくない。こう思った時に、ウチにはシステムがあるじゃないかと。何も全員がオフィスに来て家賃や通勤に経費を掛けなくても、既に自宅でもできる環境にあるだろうと。だから現在5人の内勤スタッフのうち、3人がテレワークなんです。

おかげで私達は危機を乗り越え、今またこうして成長軌道に乗ろうとしています。嬉しいと言えば、これほど嬉しすぎる誤算もありませんでした。

真の意味での“無店舗型”へ。「ピンチはチャンス」で全国を狙う

言ってみれば僕らは、IT化の推進によって、真の意味での“無店舗型”を実現しようとしているのかもしれません。もう20年が見え、グループは全部で7店舗。キャスト在籍数も約400人ですか。正直でも、まだまだです。このポテンシャルがあれば、僕らはきっと全国を狙える。いや、狙っていきます。

「ピンチはチャンス」とは、よく言ったものです。数年後に今を振り返った時、「グループの転機はあのコロナだった」。そんな風にみんなで語り合う気がしています。

（インタビュー：安部明）

取材後記

執筆者

松坂 治良

業界のWebデザイナーになった理由、航空カメラマンの職を辞した経緯、IT化の推進とテレワークへの気づき。いずれも塩見代表の“嗅覚の鋭さ”を感じさせるエピソードですね。「全国を狙う」という言葉が、不思議と大言壮語に聞こえないのもそのためでしょう。
そしてこの背後には、会長を始めとするグループの“懐の深さ”があり、だからこそテレワークもいち早く進んだのだという気がします。組織の“活気”を感じるインタビューでした。