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18歳のシングルマザー。でも、業界入りに悲壮感はなかった

この世界には、もう18歳から関わっています。高校卒業後に出産したは良いんですが、すぐにシングルマザーになってしまって。セクキャバで働き始めた時は、「この子を食べさせなきゃ」の一心でした。

とは言えそんな悲壮感とかないんですよ（笑）。と言うのも、私にはこの仕事がおもしろいと感じられたんです。異性をもてなし、お楽しみいただくことに喜びもありました。「あ、向いているかも」と。

その後キャバクラでもデリヘルでもお店のNo.1になると、この気持ちは更に強くなりました。実際キャスト時代の10年を、今も良い思い出として振り返れます。「この仕事は私の天職」と考えていたぐらいです（笑）。

「スタッフになろう」で、お店を偵察。すぐに働きたくなった

卒業を見据え、“セカンドキャリア”を考えた時にも、業界を去ることは全く考えませんでした。「スタッフになろう」と。

ほんとはキャストを続けたかったんですが、末の子がまだ小さくて、夜家にいてあげたくなったんです。またこれから30代を迎えるとなった時に、将来的には体力や収入の面でキツくなってくるのかなと。子供は3人ですしね。

お店探しをする中で、一番魅力的に映ったのが『梅田ムチぽよ女学院』の広告でした。

“キャストだけではなく、スタッフもみんな女性”

店長も元キャストということで、興味が湧いたんですね。「現実にはどんなところなんだろう？」と、キャスト応募してみることにしました。そう（笑）、偵察です。

そしたら店長の森川が……生意気だって怒られちゃうかな（笑）、すごく感じが良かったんですよ。何と言うか、“自分がキャスト時代にスタッフからほしかった言葉”を、自然に私やみんなに掛けてくれていて。一番は「とにかく抱え込まないでね」と。

あとは自分もキャストだったので、店長の顔を見ていると、視線や表情で本気で周りに目配り気配りしてくれているのがわかるんですね。「ここで働きたい」と強く思って、最後オフィスに送迎していただく時に、運転する店長に告白しちゃったんです。

「あの、実はお伝えしなきゃいけないことがあって」
「何？　なんでも言って」
「すみません。私ほんとはスタッフになりたいんです」
「えええっ?!」

怒られた？（笑） いいえ、逆です。何しろ当時、お店は店長1人で回してましたから。こちらも嬉しくなるぐらい喜んでくれたんです。

思いも考え方も、キャストさんそれぞれ。自分を押しつけない

ただ始めてみると、スタッフの仕事には最初戸惑いもあって。業務の流れは熟知できていたんですが、マネジメントの部分ですね。「こんなにみんな考え方が違うんだな」と驚きました。

わかりやすく言うと、私は1番になりたかったし、ポジティブかつこの仕事が好き。だけどキャストさんがみんなそうかと言ったら、それはゼッタイ違うわけですよね。

他の子との競争はしんどい、どちらかと言うとネガティブになりがち、本音を言えば仕事は好きじゃない……。

こんな子に対して、「そんなんじゃダメだよ。私なんてね」と自分のキャスト時代を自慢話みたいに押しつけても、相手はますます苦しくなっちゃう。それに何より、これではせっかく森川が“ぜんぶ女の子だけのお店”をつくった意味がなくなってしまいます。

とにかく気遣い心遣い。個々に寄り添うこと。結果的には大正解

なので「聞くことだな」と。そして個性を認めることだと思いました。ここでのキャストさんの“共通の”目的は、“稼ぐ”ということ。そこだけは動かないんだから、目標額に沿ってシフトをアドバイスし、“1人ひとりのプロデュース”に努めることにしたんです。

「うーんと。休むのは全然良いんだけど、それだと先月より収入減っちゃうかも」
「そっかあ。ご指名がもう結構あるから、出られたら良かったねえ」
「大丈夫。過激な写真じゃなくても、〇〇さんなら自分らしくで押せるよ」
「アンケート見ると、キレイじゃなくかわいいっていうお客様が多いのね。路線変えてみる？」

実は大したことはしていないし、言ってもいないと思うんです。とにかく気遣い心遣いしかなくて、「これで良いんだろうか。遠回りなんじゃないだろうか」と悩むことも多々ありました。

でもこれで良かったんですね。ある時キャストさんに「まりあさんのおかげで助かってます」と声を掛けられて。そう言われてみれば、みんなの信頼が集まってきているような気もして……。

結局スタッフは、寄り添うぐらいのことしかできないのかなとも思います。そしてだからこそ、全力で相手に向き合うべきなのかなと。やがて自信も付いて、9か月目に副店長、1年で店長に抜擢していただいて。結果的にはスピード出世でした。

立場が上になると“ランカーだった経験”が、より活きてくる

「まりあさんは常に明るいから。周りも楽しくなる。それが一番だよ。私にはないもの」

自信を付けられたのは、ちょうど店長になる時に、森川にこう言われたのも大きいと思います。キャストさん各々で性格も考え方も違うように、私と森川とだって同じじゃない。自分を評価していただけたんだから、誰かのマネをしようとかじゃなくて、私は私らしくで良いんだなと。

褒められると調子に乗るタイプなので（笑）、おかげさまでこの2年充実した日々を送らせていただいています。

責任者として全体を見るようになると、やはりより“ランカーだった経験”が活きてきますね。自分がその位置にいたからこそ、「もっと稼ぎたい」という子に、“私は何をしたか”を伝えられるというか……。

だから私と同じように“セカンドキャリア”を考えているキャストの方がいたら、「スタッフという道もありますよ」とアドバイスしたくはなります。おこがましい気もしますが、経験をダイレクトに役立たせられる、同じ立場の子の助けになるというのは、すごく気持ちも良いですよ。

卒業を考えた時、真っ先に思い浮かぶ。そんな職場になれたら

で、最後はちょっとCMみたいになっちゃうんですけど（笑）、特にウチは森川も元キャスト、私も3人の子のシングルマザーということで、時間とかお休みについては寛大で、女性にはすごく働きやすい職場です。

私自身がとても助けられているんですね。勤務は10:00～17:00で実働6時間。完全週休2日です。しかも私は店長ですからね（笑）。それでもみんなで協力し合って、きちんとお店を回せているんです。

キャストさんに限らず、スタッフの場合でも子供の急病等には対応できる体制です。私の末の子もまだ6歳。熱が出て保育園に呼ばれてなんてことも、しょっちゅうありました。

だからって給与が低いということもないですよ。今私の月給は、歩合給を合わせて45～50万円。労働条件を思えば、これより上はないぐらいじゃないかなと……。

現在の店舗は『梅田ムチぽよ女学院』と『梅田ムチSpa女学院』の2つですが、これからどんどん増えていく予定です。キャストさんが卒業を考えた時に、“次の職場”として真っ先に思い浮かぶ。ここがそんなグループになれたら、ほんとにステキですよね。

取材後記

執筆者

松坂 治良

「自分がやってみて初めて、スタッフさんの苦労もわかりました」と森さん。その意味でも、卒業後業界に残って良かったとのことです。3店舗目4店舗目は、どの地に誕生するのでしょう？　次回はぜひ、後輩の店長の方とご一緒に。またお話を伺えるのを、今から楽しみにしています。