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業界入りを決めた、キャストさんの一言。「何か誤解してるよ」

もともと自分は口下手なうえに人見知りで、高校を出てからずっと工員をしていたんです。数か月だけマクドナルドでバイトしたこともありますけど、それを除けば工場勤務一筋という感じでした。

そんな僕が業界入りを決めたのは、実はあるキャストさんがきかっけなんです。利用したお店の子が、雑談の時にこう言ったんですね。

「何か誤解してる。スタッフさんは私達のために頑張ってくれてるんだよ」

続けてその子は、今の店にすごく感謝しているんだと。また実力社会なので、優秀なスタッフさんは出世が早くて、めちゃくちゃ稼いでいるとも聞きました。

今となっては恥ずかしいんですが（笑）、正直な話、僕は風俗スタッフに“女の子を騙して”みたいなイメージを抱いていたんですね。違うんだなと。

むしろマネジメントみたいな仕事だと知って、「楽しそう」と感じました。しかも稼げるらしいと……。

僕も30歳を過ぎていました。工場勤務は退屈だし、給与面でも将来の見通しは暗い。思い切ってこの世界に飛び込むことを決めたんです。

勤めたデリヘルが半年で消滅。「ちゃんとした店で働かなきゃ」

ところが函館で勤めたデリヘルは半年で潰れてしまって……。理由？　いや、単に売上不振です。今から振り返ると、「そりゃそうだろうな」ということが多々ありました。

とにかくユルいんですね。お客様から電話が掛かってきたら、ただ当日いる子を付ける感じ。相手のご要望を聞くわけでもないし、アンケートを取るわけでもない。キャストさんと深くコミュニケーションを取るスタッフも、全然いませんでした。

「こんなんで良いんだ。ずいぶんラクだな」

良い訳ないですよね（笑）。今だから笑えますけど、お店がなくなると聞いた時には背筋が凍りました。「ちゃんとしたところで働かなきゃ」と思って知人に相談したら、「名古屋に『OPERA』というお店があるよ」と。

「良いお店だから、興味があるなら覗いてみたら？　スタッフ募集してるかも」

ホームページからしてカッコいい。オフィスも“まるで一般企業”

すぐに電話して名古屋でご面接していただいて。お世話になることを決めたのは、文字通り“ちゃんとした店”だったからです（笑）。

まずアクセスしたホームページからしてカッコよくて。僕の無知もありますけど、「こんなところから力を入れているんだ」と。

そしてオフィスに伺ったら部屋がきれいだし、皆さんパリッとスーツだし（笑）、こういう言い方はあれですけど、一般企業のような印象でした。すぐに「ここで働きたい」と思えて……。

なので採用された時には、本当に嬉しかったです。

キャストさんだって稼ぎたい。「頑張って。仕事取ってきてね」

入社後先輩達から言われたのは、「べつに口下手でも良い」と。ただ「口下手なりにやってみようよ」ということでした。

例えば僕は女の子と深く接したことなんかなかったですから、何を話していいかわからない。なら「すみません。何話していいかわからないですけど、元気ですか？」で構わないじゃないかと（笑）。

「これだってコミュニケーションだよ」

一番良くないのは、話すのに苦手意識を持って、キャストさんから逃げることだと教わりました。当然ですよね。それだとお客様がフロントにいらした時に、容姿とホームページの情報でしかご案内できないわけですから。

で、正直キャストさんに助けられた部分もたくさんあります。ウチは高級店で、ウリは“恋人系接客”。まあほんとに、人が苦手な僕みたいなスタッフにも、皆さん優しくしてくれて。

たぶんそこは“プロ意識”だと思います。接客時に“恋人力”を発揮するためにも、ふだん人と接するところから気を付けているんじゃないかなと。ほら良い子って、どんな場面でも良い子じゃないですか。

もう一つは、“稼ぎたい”のは僕らも彼女達も一緒なわけですよね。スタッフを無下にしたところで、自分が損しちゃう。

だから下手なりにコミュニケーションを取ろうとしてきたスタッフがいたら（笑）、逆に「お。頑張って。仕事取ってきてよ」となっていたんだと思います。先輩達がつくってきた風土もあって、仲間意識も強いグループですしね。

ここを選んでくれた。だからこそ、みんなにお客様を付けたい

おかげさまで何とかやっています。徐々に意識も変わってきて。

例えば一生懸命やっている。毎日出勤してくれていて、スキルを磨いていて、『写メ日記』だって日々更新。なのに結果が出ないという子がいたとするじゃないですか。

そうするとフリーのお客様がいらした時に「あの子を付けてあげたい」と思いますよね。でもお客様のお好みとはちょっと違ったりする……。

この時にね、指名上位の黙っていても人気の子がたまたま空いていたら、その子にお願いした方がラクはラクなんですよ。お店の売上的には一緒だし、きっとリピーターになっていただけるし。

でも、なんですね。さっきの子だってせっかく『OPERA』を選んでくれた。しかも頑張ってくれている。ラクな道を行かずに、何とかこの子にも仕事を付けてあげるのだって、僕らの仕事だと思うんです。

「ちょっとスタイル的にはお客様のお好みとは違うんですが……」
「えええ。じゃあ他の子が良いな」
「でもとても気立ての良い子なんですよ。“癒され率”が高くて」
「何その“癒され率”って（笑）。おもしろいこと言うね」

経験から勘も働くようになるんですね。「いや、たぶんあの子でもイけるはずだ」って。繰り返しになりますけど、基本的にはみんな“良い子”ですしね。

やがてマッチングの結果、戻ってきたキャストさんが「リピートしてくれそう」と笑顔だったり、お客様のアンケートに良い感想が書かれた時には、もう一緒にハイタッチですよ（笑）。

「伊藤さんありがとう」

キャストさんにお礼を言われたりすると、すごく嬉しいですよね。「やってて良かった」と思う瞬間です。

結果を出せば歩合給に年2の賞与。“やりがい”という点では最高

いつもいつもこんな風にうまくいくわけじゃないんですけどね（笑）。ただこれで失敗しても、先輩達は怒りません。

「そういうこともあるよ。あの子のことを考えた結果だしさ」

むしろこんな風にフォローしてくれます。最近言われたのは「やっと店全体のことを見られるようになったね」と。やっぱり1人2人の子に依存するお店は弱いですから。当たり前ですけど、まんべんなくキャストさんにお客様の付くお店が、良店として生き残るのかなと……。

こうして話していて思いますけど、僕もこんなこと言えるようになったんですね（笑）。先輩とキャストさんのおかげという思いが、ますます強くなります。

「人見知りのこんな僕でも」と言いたいですよね。冗談抜きに、自分ほど接客に不向きな人に会ったことがありません。誰だってやれますよ。月並みですけど、気持ち次第だと思います。

結果を出せば報われますしね。ウチは売上目標を達成すると、歩合給が付きます。業績賞与も年2回。“やりがい”という意味では最高で、自分もだから頑張れているところも多分にあります。

自分に足りないものはまだたくさんありますけど、とにかく今言えるのは、ここに来て良かったなと。工員の時の“働かされている”感じがなくて、今はとにかく仕事がおもしろいんです。考えてみれば、それが一番ですよね。

取材後記

執筆者

松坂 治良

伊藤さんは確かに“よどみなく喋る”というタイプではありませんが、それだけに言葉に説得力があったのも事実。『OPERA』の先輩が仰るように、接客もキャストさんのマネジメントも“その人らしく”で良いんですよね。とにかくまず、気持ち。「自分も頑張ろう」と思えたお話でした。