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営業職 ⇒『ハレ系』。“繋ぎ”のつもりで入ったはずなのに……

繋ぎのつもりでこの業界に入って19年。長い、ですよね。ここまで続けられるとは思っていなかったので、自分でも驚いています（笑）。

ここにお世話になる前は、営業1本でした。大学を卒業してリフォーム会社に入った後、机や椅子のルート営業をしていたんですが、そこの上司と合わなかったり、体を壊したりで、辞めてしまったんです。

その後もずっと営業畑で行くつもりだったんですが、なかなか見つからなくて……。失業保険が切れかかっちゃったんですよ。生活もひっ迫してきましたし、「とりあえず」のつもりで、情報誌に載っていた『ハレ系グループ』に勤め始めたんです。

最初は女性が苦手だった。そんな自分でも、努力で成長できた

働いてみて気づいたこと、変われたことはたくさんあります。

「自分は人好きなんだな」

実は、まず自覚したのはそこなんです。営業だったのに、と思われるかもしれないんですが（笑）、それまでは無意識だったんですね。そういうことを思ったことがなくて……。

ここのスタッフとワイワイ仕事をしたり、店舗でたくさんのお客様と接するうちに、「楽しいな」と思うことが多くなっていました。

ただ、同時にキャストさんと話すのは苦手だったんですよ。つい緊張してしまって。僕は独身だし、恋愛経験も豊富じゃなかったですから（笑）。

でもこのお仕事はキャストさんあってのもですよね。苦手なんて言ってられない。なので僕、共通の話題を持てるように、エンタメ系の情報は逐一チェックするようになったんです。

効果はわりとすぐに出た、というか、キャストさんも気づいてくれたんだと思うんですね。「こいつ苦手なりに頑張ってるな」って（笑）。当時は僕も若かったですから。

次第に笑って冗談も言い合えるようになって、コミュニケーションの量が多くなると、自然に気も配れるようになりました。

「どうしました？　元気ない？」

少しずつの歩みでしたけど、やがてキャストさんのちょっとした変化にも、気づけるようになったんです。

「一スタッフに戻してください」。なぜそんなことを言ったのか

こんなカッコイイこと言ってますけど（笑）、ここ最近は色々あって、実は1度、店長を降りたりもしているんです。

今福岡で9年目ぐらいになります。1年半ほど前に、店長からスタッフになったんですけど、普通は1回その立場になったら、降格ということはないものなんですよ。ただ僕は店の売上を下げてしまったことが自分自身で許せなくて、一旦“一スタッフ”に戻してくださいって、こちらから上にお願いしたんです。

で、基本に戻りました。結局お店の売上というのは、キャストさんの在籍数に比例するんだということ。だからこそ、コミュニケーションが大事なんだということ。お客様にとっては、賑わいと豊富な選択肢というのは、それだけで魅力なんですよね。

店長になって調子に乗っていたつもりはないんですけど、キャストさんに気を配る努力がおろそかになっていたのかなと。身軽なスタッフの立場で、あらためてよく声を掛けるようにしてみたんです。

結果在籍数もまた伸びて、売上も戻ってきました。昨年からもう1度副店長をやらせていただいているんですが、でもまだ満足はしていません。今度は逆に「店長をさせてください」って、自分から言えるようになりたいですね。

“人同士”の思いが大切な仕事。だからこそ奥が深い。おもしろい

人が人にサービスをするお仕事ですから、やっぱりモノを売るのとは違って、単純ではないです。ふとした僕の行動がキャストさんの欠勤に繋がったり、結果それがお客様のクレームに結びついたり……。若い頃は僕にだって、そういう失敗がありました。

「向いてないのかなあ」

19年の中で1度も思ったことがないって言ったら、その方がウソっぽいでしょう（笑）。悩んだこと、あります。

でもだからこそなんですよ。人同士の気持ちが大切なお仕事だからこそ、奥が深くておもしろい。頑張ったことが結果として現れると、喜びも大きいんです。

スキルなんている？　“生涯現役”を目指す自分の、正直な気持ち

パッと思い浮かべるだけでも、そういう瞬間ていっぱいありますよ。

スタッフ一丸で売上を意識して、月末にプラス数千円で目標を達成した時。面接から自分に任された子が、すごく稼げるようになった時。何よりお客様とキャストさんの両方から「ありがとう」と聞けた時は、本当に嬉しいですね。「やってて良かった」ってなります（笑）。

だから僕の最終目標は実は、店長でも統括部長でもないんです。“生涯現役”こそが目標で、ずっと現場で店舗運営に携わっていたいなと。もちろん『ハレ系』でですよ（笑）。

さっきからの僕の話でも、ここの雰囲気を見ていただいても、風通しが良いのを感じて頂けるでしょう？　現場の意見も店長が吸い上げて、良いと思ったらちゃんと本部に提案してくれますからね。スッタフ同士もあんまり不満を溜め込んだりとかなくて、だからこそ僕も、こんなに長く続けられているんでしょうね。

「必要なスキルって、何ですか？」

たまにこの業界で働きたいと思っている子に聞かれるんですけど、逆に僕が聞きたいです。「そんなのいる？」って（笑）。

僕もゼロからのスタートでしたし、コミュニケーション能力なんて、その人の仕事に対する熱意で変わってくると思うんですよ。キャストさんの在籍数って、言葉のテクニックで変わるわけじゃないですから。

やる気と頑張り次第で、役職も上がっていくし、給料もどんどん上がる。実際統括部長は、僕よりもずっと年下の方です！（笑）

そんなに難しく考えなくていいと思うんです。対人の仕事だから、いかに人を大事にできるか。そこを突き詰めていけば自ずと道は開けます。シンプルで良い。シンプルが良い。そんな仕事です。

（インタビュー：風間祐介）

取材後記

執筆者

藤野 りさ

“繋ぎ”のつもりが、なんと19年！　しかも女性が苦手だったと語り、辞めたいことだってあったと振り返る前澤さん。この率直さこそが、“生涯現役”の秘訣なのでしょう。やる気次第で苦手は克服できる。幾らでも自分は変われるし、道も開けてくる。30代の自分も、大いに励まされたインタビューでした。