「“夜の世界”は人がキーワード! 現場で向き合うなかで⾒えてきたもの」 ~一般社団法人GrowAsPeople代表理事・角間惇一郎さん#2~

2016年10月13日

by赤星 アキラ赤星 アキラ編集長
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――とある運命的な出会いから、風俗業界入りをした角間さん。連載第2回の今回は、スタッフとしての活躍とGAP設⽴までの歩みについて語っていただいた。

ゼネコン時代のスキルで信頼を勝ち取る

風俗店平面図

週5日、夕方6時から夜中の3時まで、風俗店の電話を取る仕事をしていました。

それを数か月続けていたら、事務所が手狭になったので引っ越しを検討しているという話が聞こえてきたんです。

元々ゼネコンで設計の仕事をしていたので、軽い気持ちで「良ければ図面を引きましょうか?」と提案させていただいたところ、「お願い」とあっさり担当を任されまして。

それで、使う人にとって使いやすい空間にしないと意味がないと思って、キャストの皆さんやスタッフさんに、「どうすれば使いやすいですか?」と丁寧にヒアリングしていったんですね。

携帯の充電しやすいコンセントの位置だったり、キャストさんの髪の毛の掃除がしやすい床の素材だったり……。折り畳んだタオルが入る隙間の寸法も決めました。

それから、キャストさんもスタッフさんも滞在時間が長くなりがちな環境なので、全体のデザインを居心地の良い、ちょっとオシャレな空間になるように配慮もしました。

「女性が多いから、とにかく細かい部分が重要なんだなぁ」って、思い知らされましたね。

風俗店平面図

あと、設計だけじゃなくて、実作業だったり事務所の解体もやったりしたんですよ。

風俗業界の仕事だからといって予算が多いわけではないので、職人さんに混じって電気取付工事とかやるんです。それから、友達数人に声をかけて、自分たちでハンマーを持って事務所を解体したりして。この時期は、とにかくドタバタしていましたね。

そうこう動き回っていたら、周りから“なんでも屋さん”として認識していただくようになっていったんです。それで、「行政関連の申請のやり方調べて」とか、「雇用保険加入するのはどうするの」とか。

建設業界というのは建物を作るだけじゃなく、申請系の仕事が多いんですよ……。気付けば、逃げたい気持ちで働いていたゼネコン時代の経験がすごく役に立ったという(笑)。

でも当時は、“できるかできないか”ではなく、“やるかやらないか”って感じで働いていました。すべて「やります!」って答えて。そうして、店長さんとかスタッフさんとかに、信頼されていった感じですね。

風俗店スタッフとしてハタラキながら見えてきたもの

初めは業界に対して、「ヤバいことがたくさんあるんじゃないか」というイメージをもっていたんです。でも、スタッフの立ち位置から⾒える世界は少し違っていて、それよりも「今、なにがあればマシか?」みたいな感覚を大事にしていると感じました。

ある日、スタッフが女の子にひたすら謝っている姿を見て、「なんで謝ってるんですか?」と聞いたんです。そうしたら、

「お客さんを付けることができなかったから。

理由はさておき、キャストさんは働きに来ている。でもその日にお客さんが付かないと、結局、お⾦を一銭も持って帰れない。

お客ゼロってことは、キャストさんからお店が時間を奪っただけになってしまう」

って教えてくれて。

“夜の仕事”というのは、是非やモラルではなく、「今、お金が欲しい」という需要に対しての機会提供の場ということですね。それまでの自分が、いかに一面からしか物事を考えられていなかったのかを思い知らされました。

もうひとつ、現場にいるとキャストさんの面接の声が聞こえてきます。気が付いたのは、一般の業界の面接と違って、「今までなにをしてたか?」をほとんど聞かないということでした。過去ではなく、とにかく“今”って概念が圧倒的に中心にあるってことです。

これはスタッフさんも同様で、過去はどうでもよくて、「今、なにが必要?」というのが、暗黙の了解になっています。こうした過去を問わない文化が、「居心地の良さ」を感じさせるのかもしれません。

実際、僕が長く続けることができたのも、この辺りに理由がある気がしています。

――自分の身に付けたスキルで目の前の人の役立っているという感覚。

街づくりNPO時代にはなかった地に足の付いた自信が、店舗をつくる人たちの信頼を集めていった。それと同時に⾒えてきた風俗業界のなかのリアル。

ここで再び、角間さんはあの人物と向き合うこととなる。

オーナーのひと言から決めた名前が“GrowAsPeople”

風俗店平面図

現場に入り込んで2年くらい経った時、オーナーさんに呼び出されて、「角間君って、そもそもなにをやりたくてここ来てるんだっけ?」って言われたんです。

それで、

「“夜の世界”でNPOができることがあるのでは?と思って、現場に身を置かせてもらっているのですが、単純な従来型の福祉が必要というわけではないと感じています。確かにNPOが必要な気はするけれど、どこから手を付けていったらいいか、まだ正直わかっていません」

と答えたところ、

「もう2年も現場いるのだから、とりあえず組織作っちゃいなよ」

と提案されまして……。それでGAPの名前を、その時にオーナーと考えたんですね。

初めは、『ナイト~』『ガール~』とか考えたのですが、オーナーからは、「そうじゃない」と言われまして。「この業界を考えるなら⼥の子とか夜とかは関係ないよ」って。

確かに、「そのとおりだ」と思って。

夜の業界って、世の中的には、“性的な場所”という先入観がとても強い。でも、見てきた現場、わかってきた現実が教えてくれたことは、夜の業界の中心にあるのは、性ではなく、“人”なんだってことです。それで、「“人”がキーワードだ」って、はっとさせられました。

そこから、「“People”って言葉は必要だね」って。

加えて、「よくわからない世界に反応してしまう“人”の性(さが)も変えていきたい」というのと、「略したときに2、3文字とか、読みやすいのがいいね」ってことで、今の組織名にたどり着いたんですね。

風俗店平面図

―目の前の人に向き合い、人に向き合う“夜の世界”を知った角間さん。その世界へと自分をいざなった人物と、人をキーワードに新しいNPOを⽴ち上げたその一連は、角間さん自身が“GrowAsPeople”したプロセスだったのかもしれない。

最終回となる次回は、なぜ角間さんが風俗でハタラク⼥性のセカンドキャリア支援を⾏うようになったのか、読者へのメッセージとともに語っていただく。

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「GrowAsPeople! 風俗店スタッフ=人間⼒が問われるシゴト」 ~一般社団法人GrowAsPeople代表理事・角間惇一郎さん#3~

角間惇一郎

角間惇一郎(かくまじゅんいちろう)

1983年、新潟県生まれ。建設業界で働いていたが、2010年の「大阪二児遺棄事件」に衝撃を受け、夜の世界で働く人の孤立を防ぐ事業を始めたいと思い、脱サラ。2012年、『一般社団法人GrowAsPeople』を設立。東京都荒川区を拠点に活動する。性風俗産業にかかわる女性たちのセカンドキャリア支援、のべ数千人に上る実態調査による統計算出などに取り組む。
一般社団法人GrowAsPeople:公式サイト

執筆者プロフィール

赤星 アキラ

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元証券マン。リーマンショックを経て、ハタラクとジンセイをひたすら考え続ける。昨春、縁あって風俗業界に転じ、FENIXプロジェクトを企画。Fenixzineを風俗でハタラク男性のプラットフォームにしていきたい。好きな音楽はV2。福岡市出身。

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