『俺の旅』編集長 生駒明の『平成風俗史』~#12:平成から令和へ。風俗業界のこれから

2020年02月05日

by生駒 明生駒 明編集者・ライター

前回までの連載で平成時代における風俗業界の歴史を振り返った。

法改正によりデリヘルが隆興し、店舗型ヘルスが全国的に減退していった経緯や、働く女性、利用するユーザーの変遷、記憶に新しいリーマンショックや東日本大震災が業界に与えた影響などを考察してきた。

今回は、連載の締めとして“風俗業界のこれから”について考察していきたい。平成から令和に時代が移り、この業界はどのように変わっていくのか。風俗の近未来について見ていこう。

【ソープ】デフレからの脱却。大手グループや高級店が“風俗の王様”として劣勢挽回


これまで風俗の王様として業界に君臨してきたソープだが、昨今は多様な需要により、新サービスや業種が次々生まれる影響で客足の減退が進んでいる。

風営法や条例で新規出店ができない関係上、市場の縮小は避けられない。そんな中で気を吐くのは店舗展開をする大手グループだ。

『バニーコレクション』や、『秘書コレクション』『OLセレクション』は東京、大阪、名古屋などの大都市だけではなく、新潟、宇都宮、下関、宮崎などの地方都市にも店舗展開を続けている。

また、九州の『おねだり本店』グループは過激なサービスを売りにして、地元で店舗展開を続け確固たる地盤を固めている。このような流れはしばらく収まりそうにない。

グループ店以外では、高級店への回帰現象が起こっている。老舗と呼ばれる『ピカソ』(吉原)、『琥珀』(川崎)、『李白』(千葉)は豪華な店内、至れり尽くせりのサービスで非日常体験の演出を徹底している。

他業種では味わうことのできない、ソープならではの価値を提供する店舗が今後勢いを増すだろう。

【店舗型ヘルス・ピンサロ】地域に根をはる密着経営。人妻・熟女系店舗が勢いを増す


昭和から平成前半にかけて大流行した店舗型ヘルス店は、令和時代も現状維持が続くと見込まれる。

ホテル代がかからない、飛び込みですぐ遊べる、気軽に通えるといった店舗型の強みを生かし、地域に根を張った経営を続けていけば、常連客がお店を支えてくれるだろう。

高齢化が進む日本社会において、ネットを介さず実店舗をもって商売ができる利点は大きい。40代以上の利用ユーザーを囲い込むことができれば、むこう20年は安定した収益を上げられるはずだ。

そこで需要が重なりやすい人妻、熟女系に注力を注ぐべきだろう。現状でも新宿の『セレブショップ新宿』、名古屋の『ひとづまVIP錦店』などは見栄えのいい、美しいスタイルのミセスと遊ぶことができ、人気を博している。

ピンサロも同様に現状維持が続くだろう。理由は店舗型ヘルス店同様に地域に根付いた経営が可能だからだ。ファストフード感覚で短時間、低価格で遊ぶことができる利点は大きい。

ただ、『安全地帯』(巣鴨)、『ニューPM新宿』(新宿)などの昭和レトロな老舗が減少し、『ちょこぱ』(池袋)、『ドリームパラダイス』(新宿)といった新店がオープンし、新陳代謝が進んでいることも事実である。

デリヘルしか風俗を知らない世代が増える中で、あの異空間で遊ぶ新鮮さをアピールできれば再ブレイクする可能性は十分にあると思っている。

【ホテヘル・デリヘル】供給過多の飽和が続く中、いかに差別化を図るかが勝負


平成時代に風俗業界の最大勢力に上り詰めたデリヘルは令和時代においても成長を続ける市場だろう。

ただ、爆発的に店舗数が増えた影響で供給過多となっているのは事実。今後生き残るのは“量”で展開する大手グループと、独自性の“質”で勝負をする個人店になるはずだ。

関東では『夢見る乙女グループ』『シンデレラFCグループ』『秋コスグループ』、関西では『アインズグループ』『シグマグループ』『やんちゃな子猫グループ』、全国展開をする『スターグループ』などが最大勢力だろう。

現状で集客力、女性の求人力、運営の組織力でこれらのグループに太刀打ちすることはまず不可能である。令和時代においてもこれらのグループが中心となって大都市圏は回っていくはずだ。

しかし、総合商社的な大手グループではカバーしきれない“ニッチな需要”にはまだまだチャンスがあるはずだ。

女性がロボットという設定で一切しゃべらない『ロボットデリヘル』(新宿)や、大人のおもちゃのセールスレディが枕営業をしてくれる『Otocha』(五反田)はユニークな発想で固定ユーザーをつかんでいる。

圧倒的な資本と組織力をもつ大手グループと、個性的なユニークさをもつ個人店がこれからのデリヘル・ホテヘル業界を席巻していくはずだ。

【エステ・オナクラ】ソフトサービスの需要が急上昇。低コストと安心でユーザーの心を掴む


若者の草食化が叫ばれる昨今、以前の記事でも紹介したエステ・オナクラなどを筆頭としたソフトサービスの業態は盛り上がりを見せるだろう。

ソフトサービスゆえに働く女性の負担が比較的少なく、安定した求人が見込めることも成長を促進させる大きな要因だ。

デリヘルを運営する店舗が片手間で展開することが多かったエステやオナクラの業種はその需要の盛り上がりから、専門店が次々に誕生している。

オナクラでは『かりんとグループ』『ゴールドハンズ』『あんぷり亭』などが有名であり、エステでは『メンズエステ五反田』などが人気を博している。

エステ、オナクラともにソフトな“癒し”を与えるサービスである。領土拡大の戦争や高度経済成長といった激しい変化をともなった昭和世代の人々が望まない、いや望めない安定志向の令和時代に、最も親和性の高い業種と言えるだろう。

平成から令和へと時代が移り、各業種ともに新しい進化の段階に入ってきている。

客の趣向の細分化に合わせるかたちでサービスの多様化が進むのは、どの業種も避けられない。今後は各店ともに、少しでも集客を図るため、他店との差別化が最重要課題になるだろう。

また、紹介しきれなかったが、のぞき部屋やキャバレー、ストリップなど、昭和から平成にかけて流行した業種はさらに衰退が予想される。古きから学ぶことは非常に大きい。その姿がまだ残るうちに、ぜひ一度体験してみてほしい。

きっとこれからの時代を生き抜くヒントが隠されているはずだ

次回は、この連載の最後の締めくくりとして、『俺の旅』編集長の私から、読者の皆さまへのメッセージを紹介しよう。風俗に人生を救われた者として、風俗の素晴らしさと、仕事に打ち込むことの大切さを、ぜひ伝えたい。

【参考文献】
『俺の旅 vol.1~vol.125』ミリオン出版(vol.123から大洋図書)、2003~2019年
『ストリップパラダイス』星野竜太、新紀元社、1999年
『ザ•ストリップ 華麗なる裸の文化史』週刊実話別冊、日本ジャーナル出版、2008年
『ストリップ血風録』日名子暁、幻冬舎、1998年
『フーゾク進化論』岩永文夫、平凡社、2009年

このほか名前は挙げませんが、多数のネット媒体を参照しました。

執筆者プロフィール

生駒 明

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1973年生まれ。新潟大学人文学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、2004年にミリオン出版に入社。編集長として“風俗総合誌”『俺の旅』を、15年の長きに渡り世に問い続けた。2019年4月、同誌は惜しまれつつも紙媒体としての役割を終え、現在Webでの再起を図っている。

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