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掛け持ちで始めた“すすきの”時代。ワクワクは今も忘れない

「今では許されないのかな？」とも思うんですが、僕は実は18歳、高校3年生の時からこの世界にいるんです。

校舎が幸か不幸か、“すすきの”のそばにあったんですね（笑）。もう18年前の“すすきの”と言ったら、ネオンがキラキラして、華やかで賑わって楽し気で、単純に憧れてしまったんです。放課後に働き始めました。

それからはマックとか、パン工場にも5年という形で土地も職も転々としたんです。でも10代で最初に選んだ仕事だけあって、結局キャバクラ・セクキャバが一番長いんですね。

どうして？（笑）……何と言うか、人同士の触れ合いで成り立つこの空間が、やっぱり好きなんだと思います。昔感じたワクワクも、今も忘れていないんですね。

「まだできるだろうか」。迷う背中を、社長が押してくれた

ただ、3年前ここには系列のホテヘルで応募したんです。自信がなかったんですね。これから30代の後半に入るという時に、スタッフにしろ女の子にしろ、もう若い子達には混ざれない気がしました。ところが面接で社長に笑われちゃって……。

「おいおい萩本君、33歳ってまだまだ若いよ。怒られちゃうぞ（笑）」

お店には30代のスタッフも多いというお話で、それに社長としては、ゼロからホテヘルを学ぶよりも、セクキャバでの店長経験を活かしてほしいということだったんですね。

「ウチの若いスタッフの勉強になるし、萩本君にとっても、出世が早くて良いと思うよ」

正直「できるかな」という思いはまだあったんですが、ここまで勧めていただけるって、なかなかないじゃないですか。なら最後のつもりでやってみようと決意したんです。

パワハラどころか大声“ゼロ”。働きやすさ、仲の良さに驚いた

実際に入店して強く感じたのは、とにかく働きやすいということ。時代もあるんでしょうけど、はるか昔僕が札幌で仕事を始めた頃なんて、裏で怒号は飛び交うし、先輩には気に入らないどころか八つ当たりで殴られるし、もうほんとにロクなもんじゃなかったんです（笑）。

勤務も残業は当然、オーナーが好き勝手に使ったお金のせいで給与の遅配も当たり前という世界でした。特にヒドかった時なんて、僕お店のつまみの『柿ピー』で飢えをしのいでましたからね（笑）。1円も持ってなくて。

それに比べて……というか、比べたら怒られちゃいますね（笑）。ここはまずパワハラはゼロです。業務がわからなければ、先輩は「何回でも聞いてください。教えます」というスタイルでいてくれましたし、大声なんて誰も出しません。

最初驚いたんですが、1人ひとりにノルマや罰金もないんです。

「1人で売上が伸ばせるわけじゃないから。チームワーク、お店みんなの力だから」

なのでスタッフ同士、女の子同士もすごく仲が良いんです。労働環境の良さは、お昼の仕事も含めて、今までで一番ですね。

「決めて大正解」。2年も経たず店長。今では平均月給100万円

勤務時間も、深夜営業がないお店なので、実働9時間ぐらいです。もちろん休憩はあります。メリハリがないと、忙しい時に対応できないですから。

社長の「出世が早いよ」も、ほんとのほんとでした。最初のスタッフ時代は額面で月給35万円、半年で主任になったんですが、ここからは歩合給や大入手当が付けられるようになるので、40万円、10か月目の副店長の頃には、50～60万円頂けるようになりました。

経験が活きたのもありますけど、入社から店長になるまでに、2年も掛からなかったんです。今では良い時で月120～130万円、悪い時でも70～80万円、平均でも100万円頂けるようになりました。正直あの時セクキャバにして良かったというのは、すごく感じます（笑）。

で、さっきも少し触れましたけど、歩合給や大入手当も、個人プレイに対してじゃなくて、お店全体の売上に応じて支給されるんですね。

こうなると、自然にみんなで頑張るようになります。人が良いだけじゃなくて、打算もあってチームで動くようになるんですね（笑）。パワハラなんかで後輩のやる気削いじゃったら、自分達が大損しちゃいますから。

“真っ当な、当たり前の、フツーに頑張れるお店”。全員の思い

店長の今下の子を見て思うのは、「いや、焦らないで」ということですね。最初は清掃や備品の管理、ホールでのご案内、席へのドリンクのお届けというところから始まると思うんですが、その後お客様に女の子を付けるところも含めて、いきなり上手にはできません。

でもこの仕事は、1つひとつの業務を振り返れば、“難しいこと”というのはないんです。「あ、あそこがマズかったな」と反省ができる。僕らもサポートしますしね。

フロアの空気を読む力だって、慣れがあるだけです。例えばコンビニのアルバイトをコツコツマジメにやってきたとか、僕みたいにパン工場でもくもくと5年とか（笑）、“仕事に仕事としてフツーに”向き合ってきた方は、必ずここで花を咲かせられますよ。

繰り返しになりますけど、ここは本当に雰囲気も良いですから。下のスタッフも含めて、僕らはかつて“ヒドいお店”にいたことがありました。不条理に暴力を振るわれて何を思ったかって言ったら、「ゼッタイに自分の下には、こんなイヤな思いはさせないぞ」って。

だから社の方針だけじゃないんです。僕ら1人ひとりが、真っ当な、当たり前の、フツーに頑張れるお店をつくっていきたい。おかげさまでウチは人気店ですけど、その理由の第一は、みんなが本気でそう思っているからだと感じます。

（インタビュー：松坂治良）

取材後記

執筆者

藤野 りさ

キャストさんも自由出勤というキャンパスグループ。「強制して人を働かせる時代じゃない」と、萩本さんは語ります。「自分が人にされて嫌だったことは、しない」。私もこうありたいと感じたインタビューでした。