「セックスワークサミット行ってみた!」~SWSを作る人たち(前編)~

2016年08月25日

by赤星 アキラ赤星 アキラ編集長
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――今回からは2回シリーズで、サミットを作ってきたキーパーソンへのインタビューをお届けする。第1回は、『セックスワークサミット』の責任者で、一般社団法人『ホワイトハンズ』代表の坂爪真吾さん。サミットの黎明期やコンセプト、男性スタッフへの問題関心について、お話を伺ってきた。

コンセプトは「もっと社会とつながっていこうぜ!」

坂爪真吾

赤星:もともとサミット的な構想というのは坂爪さんの中にあったんですか?
坂爪:自分はもともと風俗側に興味がある人間だったので、なにかやりたいとは思っていたんですね。風俗で事業をする前に、人が集まる場を作って、議論をして、ニーズを集めたほうが、成功に近づくのではないかと。それで2012年の4月に。

赤星:第1回は、福岡の中洲でされたんですよね?

坂爪:4月に中洲で、5月に歌舞伎町ですね。

赤星:当初は何名くらいの規模だったんですか?

坂爪:第1回は、自分とデリヘルの店長、風俗雑誌のカメラマン、それから当事者支援団体の方。合計4名しか来なくて。「なに!?」って思ったんですけど、それがスタートでしたね。風俗店が入ってる雑居ビルの一室を借りて、4人で話し合いました。

赤星:一番最初の回のテーマはなんだったんですか?

坂爪:“セックスワーク3.0”というテーマですね。

これは自分が作った区分なんです。セックスワーク1.0は社会から隔離された売春、2.0は社会から見えなくなったデリヘル的な風俗、そして3.0が社会性のある風俗じゃないかと思うんです。

赤星:社会性のある風俗とは?

坂爪:人と人とのつながりだったり、地域や他業種との連携だったり、社会的な信頼の向上っていうことを組み込んでいこうぜ!ってことですね。抽象的なテーマだったので、よく集まってくれたなと今にしてみれば思います。

風俗を守るため社会とつながれる場所が必要

坂爪真吾

赤星:HPのサミットの紹介文に「風俗産業のこれからを議論する場」という説明がありますが、これから業界がどうなっていくべきか、ビジョンなどはありますか?

坂爪:最近のAV出演強要はすごく参考になると思っています。

ああいう事件が起こったとき、業界側から社会に向かってきちんと発言できる人が、ほぼ皆無だった。あれだけ大きなマーケットで、いろんな人が業界内で食ってるのに、社会とつながるための情報発信や提言をする力を誰も持っていなかったという証拠ですよね。反面教師にすべきなんじゃないかと思います。

デリヘルで同じような問題が起こったときに、誰も発言する人がいないとどんどん悪い方向になって、業界自体が潰されてしまうはず。

社会とつながっていたり、かつ大手メディアで発言できる人が集まったりする場所は、絶対必要だと思うんです。今、風俗界隈で、きちんと業界内部とコミュニケーションを取りつつ、中立的な立場で大手メディアに発言できる人って、自分と『GAP』の角間さんくらいしかいないんですよね。それってヤバいし、良くないと思うんです。

仮に経営者が表立って発言しても、一種のポジショントークとしてとらえられるので、社会に届かないんですよね。

赤星:やっぱり、ワンクッションが必要ですね。

坂爪:そうですね、やはりNPOですね。

赤星:信用が全然違うと思います。

坂爪:そうですね。一種の中間的な役割が、風俗に関してはすごく大事だと思います。

赤星:そういう文脈で、『Fenixzine』で連載中の『どMな風俗業界1年生が学ぶ法律講座』をご監修いただいているというのは、本当にありがたいなと思っています。

風俗業界の求人サイトも行き詰まってきていて。それを打破するポイントって、やっぱり“ソーシャル”だと思うんです。いろんな分野の専門家の方たちとどんどんつながって、問題解決の窓口として紹介していくとか。お互いウィンウィンですし。

坂爪:同感ですね。

男性にとっても風俗はセーフティネット

赤星: 私は、男性スタッフって3つの世代で分けられると思っていまして。

1.0が暴力団や前科のあるような方、2.0が学歴や職歴がない方、3.0は一般企業から色んな理由で業界に転じられた方。男性求人サイト『FENIX JOB』がターゲットにしているのが3.0の方で、新しい動きかと思っています。

これから企業はもっと経営が厳しくなって、労働環境が厳しくなって、雇用そのものが厳しくなる。そういうなかで、風俗が、男性にとってもセーフティネットになる可能性って、どんどん高まってくるだろうと思うんですね。

坂爪:それは確実にありますね。

冒頭の中州のデリヘルの店長も、もともと国立大の出身で。初めは大手企業に勤めて、そこを辞めて教育機関に勤めて、それから風俗に来たという。ぐるぐる回ってきているんですね。そんな方は少なくないと思うんです。『おかあさん』の齋藤さんも国立大ですよね。

そうした3.0の人は増えてくると思うので、業界を引っ張っていってもらいたいですね。彼らは、社会性があるし、視野も広いし、1.0や2.0の人たちとはまったく違った世界観があるので。

その人の社会的背景まで視野を広げて見ることが大事

坂爪真吾

坂爪:風俗って基本的に、「自己責任」「自助努力でなんとかしろよ」という世界だなという印象があります。若い従業員の人と話していても、なにか問題があったら「自分のせい」と言うんですね。なんでもかんでも個人化している。

それはいい部分でもあるんですけど、もっと視野を広げて、社会という視点を持って、目の前で起こっていることを見てほしいですね。

たとえば、管理が面倒な女の子がいた場合、「困った奴だな」で終わるのではなくて、その人がどういう背景で生きてきて、どんな環境、どんな支援を必要としているのか、視野を広げて考えてほしいです。

赤星:男性スタッフもいろいろ抱えて流れ着いている部分がありますもんね。

坂爪:一歩引くと視野が広がって楽になると思いますよ。

赤星:そうした視点を得るためのサミットでもありますよね。今日はどうもありがとうございました。

――坂爪さんの口から繰り返し語られる“社会”というキーワード―。

風俗業界は、世の中とのつながりが希薄なうえ、業界内のつながりも乏しいという現状がある。『セックスワークサミット』が、そうした問題を解決する“豊かな交流の場”として発展していくことを、いち業界関係者として祈らずにはいられない。

続く後編では、会場で司会をされている編集ライターの赤谷まりえさんと、受付をされている弁護士の徳田玲亜さんにお話を伺う。

後編はこちら>>
「セックスワークサミット行ってみた!」~SWSを作る人たち(後編)~

セックスワークサミット

セックスワークサミット

これからの性風俗産業の進むべき方向性を議論するべく、2012年より全国で開催。毎回多彩なゲストと共に、セックスワークに関する熱い議論が繰り広げられている。主宰は、一般社団法人ホワイトハンズ(代表:坂爪真吾)
紹介ページ:セックスワークサミット:公式サイト

執筆者プロフィール

赤星 アキラ

赤星 アキラ編集長記事一覧

元証券マン。リーマンショックを経て、ハタラクとジンセイをひたすら考え続ける。昨春、縁あって風俗業界に転じ、FENIXプロジェクトを企画。Fenixzineを風俗でハタラク男性のプラットフォームにしていきたい。好きな音楽はV2。福岡市出身。

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