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テニスで拾われて高校に。でも、周囲の期待には応えなかった

こんにちは。今日はインタビューですよね。

はい。伺っていますが、正直僕で良いのかなという気持ちがあって。と言うのも、『ハピネス』に来るまでの自分はほんとにいい加減だったんですよ（笑）。

高校にはテニスで入ったんです。スポーツ推薦と言うと聞こえは良いですが、実際はそんなにカッコいいものじゃありません。学校の成績は悪いし、内申点もヒドい。僕には行くところがなかったんですね。

唯一テニスだけはそこそこウマかったので、「じゃあ部活一生懸命やるなら入れてやるよ」と。そのテニスだってでも、県大会で上位ぐらいの選手でしかなかったんですけどね。

ところが僕は恩知らずで（笑）、いざ入学すれば練習をサボってバイト三昧でした。朝は新聞配達、放課後はガソリンスタンド、休日はそのお金で遊ぶという感じで、周りの思いを裏切ってばかり。結局高校にはいられなくなって、17歳で中退してしまうんです。

“オラオラ”も“イケイケ”も全くなし。むしろあったのはプロ意識

その後新聞配達を続けたり、工場で期間工をしたりしていたんですが、20代も後半になると、今までの仕事にも飽きてきて。次第にこの世界に興味を持つようになったんです。

稼げるということより、単純に好奇心でしたね。「どんな人達が働いているんだろう？」という気持ちでした。

やがて幾つか応募する中でウチに決めたのは、こういう言い方はあれですけど“一番ちゃんとしていた”からなんです。

他の業界の方は驚くかもしれませんが、当時は社会保険がないどころか、交通費さえ出ないなんていうお店も少なくなかったんですね。『ハピネス』は違いました。昇給・昇格も含めて、制度が整えられていたんです。

そして入社後一番驚いたのは“人”でした。今興味本位と言った通りで、最初はスタッフはオラオラしたコワいお兄さん達だったり、キャストさんも軽いノリのイケイケの子達が働いていると思っていたんですね。

もう全く裏切られました（笑）。スタッフの先輩はみんな、もう背筋がピンと伸びてパリッとスーツを着て言葉遣いも丁寧。キャストさんもいわゆる“普通の”子達でした。

いやむしろ“普通”じゃ片付けられないですね。昼間はOLをして、夜とお休みにという子もいましたし、奨学金の返済という子もいました。シングルマザーでお子さんを養っている方もいて、何と言うか、皆さんプロ意識を持って仕事に向き合っている方々ばかりだったんです。

「こりゃオレも頑張らなきゃ、恥ずかしい」

今日まで続いているのは、この時の思いが大きいかもしれません。

部下の失敗は、自分の失敗。怒られ役を買う先輩に助けられた

先輩達の親切も忘れられません。特に当時僕がお世話になった店長が、「なんで？」というぐらい人が良くて。

昔の僕は少し突っ走っちゃうところがあって。お客様への対応であったり、キャストさんへのアドバイスというところで、まだ業務をよく呑み込んでいない内から、自己判断でやっちゃうところがあったんですね。

当然失敗します。店にクレームが来て、上から「どういうこと？」と問い合わせが来るじゃないですか。

店長はゼッタイ「すみません。自分が」とか「指導不足で勘違いさせて」と、矢面に立って“怒られ役”を買って出てくれました。それも一度や二度じゃないんです（笑）。

横で話を聞いている僕は「ああ。次は自分が怒られるな」と思いますよね。なのにもう全然。「ということだからさ。わかった？」って、店長はいつも一言でおしまいでした。

「同じ失敗はしないでね！」

そこだけですよね、念を押されたのは。同様のミスを繰り返さない。……入社後の日々を振り返ると、この店長を初め、先輩達みんなに“まともな社会人にしてもらった”という感覚があります。その意味で会社には感謝しかないですよ。

店長になったんじゃない。みんなに店長に“させてもらった”

人に恵まれたおかげで、僕は先月から福岡の店長になりました。ウチは“やったらやっただけ”ですからね。成果にはポストで応えてくれるし、先月もそうだったんですが、ボーナスもスタッフみんなに支給されます。

上に立つようになって変わったところ？　うーん、そうですね。主任、副店長と上がっていく中で、“頭ごなしに注意しない”というのは心掛けるようにしてきました。そこはやっぱり先ほどの先輩の影響ですよね。背中で語ってくれたというか……。

キャストさん達に対しても一緒です。とりわけ福岡はほんとにいい子達ばかりなので（笑）、僕らスタッフが一生懸命やっていると、すぐ「自分も」となってくれるんですね。

よく見てくれてもいますよ。「プロフのテキスト変えてくれたんだ」とか、「今フロントで推してくれたでしょう？　ありがとう」とかね。正直すごく仕事がしやすいし、そんな風に感謝されれば、僕らだってますます頑張るじゃないですか。

こうして話していると、自分がいかに幸せなのかよくわかります。さっきと似たようなこと言うようですけど、きっと僕は店長になったんじゃないんです。みんなに店長にさせてもらった。正直な実感です。

取材後記

執筆者

松坂 治良

「僕がやれたんだから、当たり前にやっていれば役職も収入も自然に付いてきます」と松田さん。何度も感謝の言葉を口にされていました。
でも恐らく、この謙虚さがあるからこそ上にも立てたのだと思います。普段の自分を振り返って、大いに反省させられた取材でした。