『俺の旅』編集長 生駒明の『平成風俗史』~#7:“風俗=誰でも稼げる時代”の終焉。多様化する働く女性

2019年11月27日

by生駒 明生駒 明編集者・ライター

前回は度重なる浄化作戦により、店舗型風俗店が激減していった様子を紹介した。では、風俗のデリバリー化が進んだ平成時代に、風俗店で働く女性たちはどのように変わっていったのだろうか。

平成時代は日本人全体の寿命が伸び、平均年齢が上がるに連れて、風俗嬢も高齢化が進んだ。だからといって、若いコがいなくなったわけではない。風俗店に在籍する嬢たちの年齢層の幅が広くなったという方が適切だろう。

今回は、平成を通して多様化した風俗嬢の真相を、具体的な例を挙げながら掘り下げていきたい。

90年代は“フードル”としてもてはやされた風俗嬢たち

平成の前半期にあたる90年代~2000年代前半は、現在に比べ、風俗業界は活況を呈していた。前記事の歌舞伎町を筆頭とする大規模な浄化作戦が始まる前であり、まだまだ店舗型風俗店の数が多く、歓楽街ではソープやヘルスが人気を博していた。

最近はテレビで風俗嬢を見かけることはほとんど無くなったが、当時は深夜番組によく出演していた。“風俗嬢アイドル”の略語として、“フードル”という言葉も盛んに各マスコミに用いられていた。

盛り場には風俗情報誌が溢れ、表紙や巻頭カラーグラビアで旬なフードルが可愛らしい笑顔と見事な肢体をさらけ出していた。指名の多い人気嬢になると、“カリスマフードル”として、業界を超えて一般社会でも名を知られるちょっとした有名人であった。

 私も何度か人気絶頂のフードルを取材したことがあるが、オーラのようなものを放っていたのを覚えている。まさにプロフェッショナルと言えるだうろ。予約受付開始と同時に電話が殺到し、数分で一日のスケジュールが埋まる。それほどフードルは価値のある存在であったのだ。

デリヘルの急増により、素人女性が業界に大量流入。業界全体が供給過多に


平成11(1999)年の風営法改正施行以来、出張サービスをする無店舗型風俗店が急増していく。営業時間の規制がなく、自由出勤であり、自宅待機もできるデリヘルの主流化によって、一般の女性が大量に風俗業界で働きやすくなった。

平成後半以降、風俗店で働く女性たちのレベルが著しく向上していく。かつて最後の手段として、服を脱げば誰でも稼げると思われた“風俗嬢”という職業は、容姿や性格の優れた“選ばれた女性”しか、活躍ができない“狭き門”になっていった。

IT技術の発達により、高収入を謳う求人サイトが浸透し、それまで性風俗産業とは縁がなかったごく普通の女性たちが、情報を手軽に入手しやすくなった。それに伴い、“効率よく稼ぎたい”容姿に自信のある美女たちが業界に雪崩れ込んできたのである。

雑誌の減少、メディアのコンプライアンスが叫ばれる昨今では、平成前半に活躍していた、フードルのような存在は影を潜め、昼間は学校や会社で働きながら、こっそりアルバイトをして副収入を得る、“素人”の女性が急増したのである。

10代~70代まで広がる需要。女子大生、人妻、シルバー世代までが混在する今の風俗業界

昭和末期から平成初期にかけて、風俗で働く女性の年代は20~30代が最も大きなボリュームゾーンであった。風俗嬢は“永遠の28歳”という業界の定説があったほどだ。

平成初期では、借金などの特別な事情でやむなく働く女性が多かった。しかし、前項でも紹介した通り、インターネットの普及により、誰もが簡単に情報を得られるようになると、10~20代の若年層の女性を中心に広がりを見せる。

奨学金の返済を理由にソープで働いている新卒の女性や、ブラック企業から逃げ出して風俗店に勤務して救われたという女性にも会った。風俗産業が社会を映す鏡だということを痛切に思ったことを覚えている。

2000年(平成12年)以降は、メディアの影響からか人妻、熟女ブームがおこる。これまでは、年齢があがると稼げなくなる風潮があり、俗に言う吉原年齢のように40歳の女性を20歳と偽って表記することが多かった。しかし、若年層が業界に溢れこんだ結果、落ち着いた女性と遊びたいという需要を喚起、ブームの後押しもあり、人妻店を爆発的に発展させた。

さらには、2010年(平成22年)以降は超熟店と呼ばれる、60~70代の年代にまで、広がりをみせる。男性週刊誌が“死ぬまでセックス”特集を盛んに組むようになり、高齢者向けの風俗にスポットが当たったためである。

業界で働く女性の多様化よる格差。求められるキャストマネージメント

平成時代を通して、風俗で働く女性は確実に多様化した。素人化と年代の広域化というのが2大潮流だ。

一昔前から、風俗は女性のセーフティネットと盛んに言われていたが、それへの違和感も唱えられた。ネットの普及により働きたい女性の数が増える一方、風俗で遊ぶユーザーは比例するようには増えていないためである。風俗によってすべての女性が救われているわけではない。平成の中で、“風俗で働く”というものは多様化し、競争も激化している。

令和時代の風俗嬢は、さらにそれが進むだろう。細分化が行きつくところまでいき、多品種少量生産的なマニアな趣向のお店が注目を浴びるに違いない。

店舗運営においては、よりユーザーのニーズにマッチした女性を採用し、店舗のコンセプトに合わせたマネージメントが必要になる。

次回は、風俗で遊ぶユーザーの変化を見ていこう。草食系男子と呼ばれる若者たちの風俗離れや、高齢化が進む常連客の実態について、考察していきたい。

【参考文献】
『風俗で働いたら人生変わったwww』水嶋かおりん、コアマガジン、2015年
『日本の風俗嬢』中村淳彦、新潮社、2014年
『女子大生風俗嬢』中村淳彦、朝日新聞出版、2015年
『風俗嬢という生き方』中塩智恵子、光文社、2016年
『高齢者風俗嬢』中山美里、洋泉社、2016年
『風俗嬢の見えない孤立』角間焞一郎、光文社、2017年
『俺の旅 vol.1~vol.125』ミリオン出版(vol.123から大洋図書)、2003~2019年

※このほか名前は挙げませんが、多数のネット媒体を参照にしました。

執筆者プロフィール

生駒 明

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1973年生まれ。新潟大学人文学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、2004年にミリオン出版に入社。編集長として“風俗総合誌”『俺の旅』を、15年の長きに渡り世に問い続けた。2019年4月、同誌は惜しまれつつも紙媒体としての役割を終え、現在Webでの再起を図っている。

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