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“働きぶり”を認められて、デリヘルの正社員に

『グランドオペラ』に入社したのは……、もうかなり前ですよ。僕が30歳になった頃なので、16年前になりますね。

大学卒業後に不動産営業をしたのが、社会人としての初めです。5、6年後に勤めるのを辞めて、株やFXで暮らしていたんですが、リーマンショックってあったでしょう？　この先投資で食べていくのは難しいと思ったんですね。

「そろそろちゃんと働くか」

年齢も年齢でしたしね。「手始めに」と都内のレンタルルームで働き始めたんですが、1年した頃、そこのオーナーに声を掛けられたんです。

「ウチはデリヘルも経営してるんだけど、高井君、やってみないか？」

感想？　いやビックリですよ（笑）。こっちからしたらただのバイトっていう感覚ですから。でも理由を聞くと、“仕事ぶりが良い”と仰るんですね。

これも本音を言うと、どうということはなくて。無遅刻無欠勤で、最初の内は上からの指示に従ってというだけでした。その頃にはバイトリーダーみたいな形にはなっていたんですが、自分は30代で、新しく入る子は学生さんとかでしたからね（笑）。“当たり前”という感覚だったんです。

「いや、その当たり前が大事なんだ」

「そこまで仰ってくれるなら」と思って入社を決めたんですが、社長のこの言葉の意味は、すぐにわかりました。

2か月で店長に。“難しいこと”“理解できないこと”のない職場

「あ、やれる」というのは、入ってすぐに感じましたよ。デリヘルの仕事って、内容的に難しいとか理解できないことというのはないですから。

ドライバー業務は道を知るのにちょっと苦労しましたけど、これも覚えるか覚えないかだけで、すぐに慣れます。電話を取ってお客様をご案内して、メールをチェックして女の子のシフトを管理してというのも、1つひとつきちんとやりさえすれば良い。何か特別な才能が必要なわけではないですよね。

だから2か月で名古屋店の店長になったんですが、自分をスゴいとは全然感じませんでした。“普通に”やっていただけですから。

“立て直し”の請負人。人気店に育て上げるのが仕事だった

「じゃあみんなが普通にやっていて、売上も普通に良いのか」と言ったら、そうはいかないのが厄介なところなんです（笑）。

その後僕は4年間名古屋、6年福岡、1年横浜、また2年名古屋という形でお店を行ったり来たりしているんですが、いつも“立て直し”の仕事なんですね。思えばお店の借金を返して軌道に乗せて、人気店に育て上げたら“次のお店”という16年間でした。

人が育たなかったのか、というと、そんなことはないんです。名古屋も福岡も横浜も、今は後任の店長がしっかりとやっています。ただそこに至るまでに、“なぜ僕が行かなければならなかったのか”というと、少なくとも当時は、相手の話を聞けない人が多かったですね。

“やるかやらないか”だけ。まずは指示を受け止めてみてほしい

要は、例えば“電話が鳴らない”となった時に、原因はどこかにあるんですよ。Webサイトや写メ日記を覗いてみたら、案の定写真があまり良くなかったりする。

お店を1つ2つと再建してきたら、当然僕にもノウハウができます。「こんな写真に変えてみて」「もう少し更新頻度上げよう。飽きられるから」と指示を出すんですが、みんな腰が重かったですね。

恐らく店長クラスの仕事をした方はわかると思うんですが、人ってなかなか自分のやり方を変えたがらないものなんです（笑）。

我流のこだわりがあるのか、変えるのがコワいのか、単にめんどくさいのか……。利益が上がらないことに慣れてしまうと、「そんなことで簡単に売上変わらないよ」みたいな反発心も起きちゃうのかもしれません。

でも、それだと本当に売上は伸びないし、それが続けばお店はなくなってしまいます。これから業界入りする若い方に言いたいのは、「まずやってみて」ということなんですね。

これまでの結果や実績があっての方法論なので、大概売上は付いてきます。それにさっきも言ったように、難しいことはない。指示を受け止めて、“やるかやらないか”だけのことなんですよ。

アルバイト勤務⇒代表取締役。なぜ僕に、それができたのか

最初の話に戻ると、オーナーがアルバイトでしかなかった僕に見ていたものも、ここなんですね。“素直に当たり前に仕事をするヤツ”と感じてくれたんだと思います。

でも僕からすると、それこそ当たり前。だって僕はレンタルルームの仕事を何も知らなかったわけですよね。最初くらい先輩の言うことを受け入れて当然じゃないですか。その方が業務も早く覚えられます。

そしてバイトから始めた僕が、今や代表取締役ですよ（笑）。これほどわかりやすい成功例もないと思うんです。

「個性の発揮は、業務を覚えてから」

この意識を持つだけで、業界での出世も成功も、グンと早くなるはずです。

一番は収入なのか、プライベートなのか。考え方は色々で良い

今は横浜と東京のお店を中心に見ているんですが、『グランドオペラ』は高級店な分、仕事もしやすいと思いますよ。お客様単価が低いと、どうしても時間に追われ売上に追われとなりがちでしょう。その意味で言えば、ここは真逆です。1人ひとりのお客様に、じっくりと向き合えますから。

働き方もね、もちろん「仕事を愛して出世して代取に」というのを目指す方もいるでしょうけど（笑）、プライベートの時間を大切に、お休みはしっかり欲しいという方もいるはずです。話し合って決めて良いと思うんですね。ウチにはアルバイトという働き方もありますし……。

バイトで続けるうちに、僕みたいに「正社員やってみるか」と思うこともあるかもしれない。僕だって16年前、「社長になろう」なんて夢にも思いませんでしたよ。ただただ仕事が楽しかっただけです。

頑張れば収入も立場も後から付いてくる。それはここの本当に良いところだと思います。正直、かつていた不動産業界以上ですよ。

取材後記

執筆者

松坂 治良

「“稼ぎたい”だけだとキツイかな」
取材の締めくくりに高井社長が仰ったのは、この言葉でした。“お金のため”だけだと、仕事は頑張れない。それは投資家だった時代に、つくづく感じたそうです。女の子、お客様、仲間。感謝されることも多い職場なので、何か1つ給与以外の“やりがい”も見つけてほしいとのことでした。