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“忙しいけどぬるま湯”。とある大衆店グループのリアル

39歳という年齢ですけど、業界歴は長いんですよね。もう14年になるのかな？

26歳の時に、地方のデリヘルで働き始めたのが最初です。送迎ドライバーから始めて、3年目に店長、8年ぐらいして、3店舗を見る統括になりました。ただその頃から少しずつ「辞めたいな」という思いが強くなっていって。

煮詰まったというか、先が見えなくなっちゃったんですよね。

と言うのも、そこは4～5店舗の大衆店を運営するグループだったんですが、“現状維持”で、お店を増やす予定はない。結果給与も頭打ちという状況だったんです。

「じゃあ自分が新店を企画すれば？」というご意見もあるでしょう。ところがまず、その余裕を作れなくて。そんなにキツい労働条件でもなかったと思うんですが（笑）、各店の離職率がとても高かったんですね。正直僕は、フォローだけで手一杯という感じだったんです。

10年以上同じ職場にいれば、業務も傾向も一通り見えてしまう。かと言って新しいことをやろうにも、上にその気が全くない。このまま“忙しいけどぬるま湯”みたいな人生で、40代を迎えるのは良くない気がして……。

“利益率が高い＝スタッフへのバックも高い”。すぐにピンと来た

そこで転職という時に、別の業界に行くことも考えました。実際僕は高校を中退していて、16歳から9年間、住宅リフォームの営業もしていたんですね。

ただ悩んでいた時に、たまたまWeb検索で『グランドオペラ』の求人を見つけて。“高級店”というカテゴリーに興味を持ちました。ここなら「これまでとは違った仕事ができるんじゃないか」と思えたんですね。

ホームページからしてカッコ良かったし（笑）、オフィスに訪れれば皆さんパリッとスーツだし、何よりサービス単価が高いのは、“強い”と感じました。

自分も同じ業界に長くいたので、すぐにピンと来たんですね。利益率が高いんだから、女の子だけではなくて、スタッフへのバックも高くなるだろうと。しかも面接で、社長から「ぜひウチに」という言葉も頂けました。これもご縁、「ここでお世話になろう」と決めたんです。

自立した女の子達。でもみんなが“プロ”かと言うと……

2年半勤めて強く感じるのは、たとえ高級店であっても、女の子のマネジメントは“必要”ということです。

確かにここにいる女の子達は、皆さんが自立しています。構ってもらいたがったり、いつまでもお店にいて話したがったりという子は、ほぼいません。何と言うか「自分にしっかりとプライドを持っている」と感じる方が多いです。

とは言え皆さんが“プロ”かというと、そこはまた違うんですね。だからサポートがいるし、それこそが僕らの一番の仕事だと思うんです。

“新人期間だけ”人気の子。何が足りず、どうアドバイスするのか

例えばここに、身長が高くて顔立ちが整っていて、スタイルも良い。なので“新人期間”は、もうそれこそ「電話がパンクするんじゃないか」というぐらい（笑）、ご予約の入る子がいたとします。

しかし中には、それが終わると“パタッ”とご指名のなくなる子もいるんですね。この子はどうするか？と言ったら、多くの場合別のお店に移ります。ルックスは素晴らしいんだから、きっと大人気ですよ。でもそれもそこでも、“最初だけ”なんですよね。

こういう子には僕は、こんな風に声を掛けてみるんです。

「そのままだったら、どこに行っても一緒です。辞める前に少しだけ、僕の言うこと試してみてくれませんか？」

で、「写メ日記の更新頻度を上げてみましょう」とか、最近だと「“キテネ”ボタン効果あるみたいですよ」とか、何より「どんな風にお客様と接していますか？」と話し合うんですね。

結局最後は接客だと思います。全部とは言わないですけど、新人期間しか稼げない女の子は、やっぱり取っつきにくかったり、こちらからはツンケンしているように見えたり、受け身で何もしないように感じられがちなんです。

僕がよく言うのは「お客様を異性として立てて」ということ。笑顔で礼儀正しくご挨拶して、洋服は丁寧にお畳みして、ご職業を聞いたら持ち上げる。そして少しの冗談にも、楽しそうに大笑い……。

“気遣い”が大切。最後には月100万円を稼ぐ人気キャストに成長

確かに内気な子もいますよ。ですがそんな子にも以前、こんなアドバイスをしたことがありました。

「不愛想なつもりはないんですけど、根が人見知りで。どうしたら良いかわからなくて」
「じゃあそれを、そのまま伝えてみましょう」

“私の態度どうですか？　冷たく感じられるみたいで”と伝えるだけで、相手の気持ちは和らぐものだし、わざとじゃないというか、「この子なりに一生懸命なんだな」というのは、わかっていただけるものなんです。

そう、要は“気遣い”なんですよね。「この子は僕を立てている」と感じられるのが重要で、その姿勢さえあれば、後は成功体験を重ねることで、結果は付いて来るという気がします。

実際この子は、最後には月100万円稼ぐようになりました。僕も嬉しかったですし、さっきもちょっと言いましたけど、このマネジメントこそが、他の高級店との差別化に繋がるんですね。女の子がヨソではなく、『グランドオペラ』に出勤しようと思ってくれる要因でもあるんです。

「大丈夫。僕らが支えますから」。後輩達の声を聞いた時……

エラそうなこと言ってますけど（笑）、僕実は店長になってまだ半年なんですよ。ずっと逃げていたんです。

「ムリです。責任重いです」

社長に「そろそろどう？」と聞かれる度に、「いやー」なんて言って誤魔化してました。覚悟が決まらなくて……。

でも横浜店の若いスタッフが、みんな言うんですね。

「大丈夫ですよ。僕らが支えますから」

それを聞いていたら、ある日僕も「あー」ってなっちゃって。「ここまで言ってくれるならやらなきゃ」というのもあるし、「僕が店長にならないと、この子達の給料上がらないよな」と。

どんどん上に行ってポストを作るのも、先輩の役目だと気づいて。思い切って考え方を変えました。もともとチャレンジしたくて転職したわけですしね。

店は“コロナ前超え”の過去最高益。自分の月給は70～80万円

結果？（笑） おかげさまでこの横浜店は、コロナ前も含めて“過去最高益”を毎月更新中なんです。

だからウチのスタッフは顔付きが明るいでしょう？（笑） 成果を出せば、歩合だ売上達成給だと付いて来るんで、頑張り甲斐があるんです。交通費に食事補助に家賃補助、携帯電話も貸与してもらえて、“その上に”ですからね。「稼ぎたい」という思いには、応えてくれる会社です。

おかげさまで僕も今、月に70～80万円頂いています。2年半にしては悪くないでしょう？（笑） 冗談言ってますけど、ほんとにあの時社長や下の子達の言葉を受け止めて、良かったと思っています。感謝ですね。

取材後記

執筆者

松坂 治良

16歳から飛び込み営業をしていたという秋川さん。ご本人は「勉強嫌いだったんで」と笑いますが、10代で社会の荒波に揉まれたご経験が、今のお仕事にもプラスになっていると感じます。
次は統括に？　社長とお若いスタッフさん達の説得の日も、近いのかもしれません。