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大学を中退してまで選んだ不動産業界。確かに稼げたが……

もともとは不動産業界にいたんです。講義がつまらなくて、21歳で大学を中退。“稼げる”という理由だけで選んだ就職先でした。

実際10年前、投資用マンションは稼げたんです。営業を掛け続ける根気と足があれば客が付いた時代。わずか半年で独立できたほどで……。

ただ経営者としては3年間でしたね。若さの勢いだけで、調子に乗っていたんだと思います。最後はよく知りもしないのに人材派遣業に出資して、全財産を騙し取られました。会社を整理しても1千万円の借金が残って。

やがて全部返し終わったのは、27歳の時でした。「ああやっと」と思ったら気力が飛んでしまって。誰にも会わず、家に引き籠ってゲームばかりしていました。

「ニートは飽きた。仕事を」。更に高収入も望んだ時

だけどニートってつまらない（笑）。半年もすると飽きちゃって、「やっぱり仕事したいな」と。

そうは言っても一度負債を抱えた身ですから、再び不動産の世界に戻っても、僕にはもう信用がありません。せいぜいまたヒラの営業であくせくするのが落ちでしょう。それでも高収入を望んだ時に、この業界を思いついたんです。

たくさんの企業がある中で、最終的に『かりんと』に入社を決めたのは、面接してくれた先輩の言葉が大きいと思います。

「まだ28歳でしょう？　やりなおせますよ。また成功すればいいじゃないですか」

要は将来を思い描けたんですね。キャリアアップについても詳細な説明があり、かつ何と言うのかな……誇大な表現がありませんでした（笑）。

成果次第、実力次第だなと。いつかは月給50万円、80万円、100万円という形で、高収入を手にできる“道筋”が見られたんです。

投資用物件は“モノ”。キャストさんは“人”。同列ではない

不動産の時のようにすぐ独立とは行きませんでしたが（笑）、実際半年で店長になれました。とは言え店を回せたかというと、キャストさん達とうまくいかず、売上を落としてしまったこともあります。

それなりに悩みました。「向いていないのかな」と。ですが続ける内に、そもそも僕は、かつての不動産と現在のキャストさんを、同列にしていたと気づいたんです。

だから言葉遣い1つとっても彼女達にキツかったり、よく相談に来る子の話は聞いても、“口に出さない子”は見なかったりしてしまったんじゃないか。不動産は“モノ”、一方でキャストさんは“人”なのに……。

当たり前のことですけど、投資用のマンションは笑顔なんて求められないでしょう？　日々キャストさんの喜怒哀楽に触れる中で、ふとそんなことも考えて。売上売上で行ってしまって、僕は彼女達の目線に立つことがなかったんだと思います。

売上＝個々の努力の集積。そして『かりんと』の大いなる特徴は

それからは、“まず相手なんだ”と強く思うようになりました。お店の売上って、キャストさん1人ひとりの頑張りの集積なんですよね。逆はない。

だから入店してくれた以上、誰1人おろそかにしちゃいけない。スタッフの一番の仕事は、キャストさん個々に寄り添うことだと気づいたんです。

そしてこれはただ“意識”の問題で、やってみれば難しいことではありません（笑）。彼女達の表情を見逃さないこと……。

幸い『かりんと』は、“少しの変化が一斉に伝わる”環境ですしね。ご覧いただいた通りで、ここはオフィスの机があって、地続きでキャストさんの席が6×2列の12あるんです。スタッフの一挙一動が、全員に見えている。

例えば言葉遣いを直して1人の子に向き合えば、それはフロアのみんなに伝わる。暗い顔した子の席で「大丈夫？」と1つアドバイスをすれば、それは両隣と向かいの子の耳にも入るんです。

「最近店長感じ良いね」
「うん。変わった。頑張ってるね」
「頑張ってる頑張ってる（笑）」
「……君達（笑）、聞こえてますよ」

後は“これを常に”という気持ちだけだと思っています。短期間の努力って、誰にでもできる。でもそれって気まぐれと一緒なんですよね。さっきも言いましたけど、気遣い自体は難しいことじゃない。それを続けるのが難しいんだと思います。

新店計画有。この世界に来た以上、天井知らずの収入が欲しい

おかげで今後の見通しは明るいですよ。特に昨年企画力のある新人が入ってくれたのもあって、この赤坂店は好調なんです。新店計画もあるので、早く自分も複数店舗見られる立場になりたいなと。

その方が給与も上がるんで（笑）。この世界に来た以上、やはり天井知らずで収入は欲しいですから。

で、これはあくまで個人の感じ方ですけど、僕はたぶんダメな方なんです。他の方ならもっと早く出世できたんじゃないかな。今言った僕の店長としての足踏みだって、「それじゃうまくいかないの当たり前じゃん」と感じる方も多い気がして。

でも開き直るわけじゃないですけど（笑）、これは僕には必要な勉強だったんです。二度同じ間違いをしない自信はあるので、新人さんには負けない……いえ、負けてられませんよね（笑）。

取材後記

執筆者

松坂 治良

体当たりで生きてきた、不器用な方という印象です。これまで誤解も多く、だからこそ現在謙虚にものを語られるのでしょう。
よく言われることですが、欠点も含めて自分を知った方は、強い。この先すっごくエラくなりそうな予感がします。