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最初はキャストとして業界に。『かりんと』が長かった理由

この世界には初め、キャストとして関わりました。本業のお給料が低かったのが理由です。わずかな貯金もできなくて。

副業という事情も考えると、業態はソフトな方が良いなと思って、性感系のエステとオナクラを選びました。そちらで1年半ほど働いて、その後『かりんと』に出会ったのが……6年ぐらい前ですね。

そこから卒業まで4年近く。最初はまさかそんなに長くいるとは思わなかったんですけど（笑）、あまりにも居心地が良くて。

それまでのお店が結構ドライな感じだったんですね。苦手なプレイがあったり、“おイタ”をするお客様がいるという時に、なかなかスタッフに相談できませんでした。結果1人で抱え込んでしまって。

そもそもスタッフとの接点があまりなかったですよね。でもここは違って。ちょっと沈んでいると、「どうしたの？」と声を掛けてもらったり、逆に新しいイベントの相談をされることもあったり（笑）。

普段から話しやすい雰囲気がつくられていました。女の子同士の仲も良いから、働きやすかった。卒業後もお店と接点を持てたぐらいだったんです。

『キャストアドバイザー』＝マネージャー兼プロデューサー

なので事務職をしていた1年半前、『キャストアドバイザー』のお話を頂いた時には、二つ返事でOKしました。声を掛けてくれた先輩が、自分と同じ元キャストで、ごく親しかったのも大きいですね。「自分でお役に立てるなら」と。

アドバイザーの業務は大きく分けて2つです。1つはオフィスのパソコンで女の子個々の売上を見たり、シフト表で出勤状況をチェックする仕事。他にもWebサイトを更新したり、プレイのマニュアルをつくったりします。

こちらは主に午前中に終えて、午後は外出。赤坂、神田、秋葉原、上野、池袋、渋谷、五反田という形で、先輩と手分けしてグループ各店を回ります。女の子に会ってお悩みの相談に乗ったり、写メ日記のお手伝いをしたり……。ときにはプロフィール写真を撮ったりもしますよ。

役割としては女の子のマネージャーでもあり、プロデューサーでもありというところですね。お店のコンサル的な面もあるかもしれません。

スタッフと女の子の関係がフラット。職場風土から生まれた役割

もともとは先輩がキャストの時代に、当時の店長やスタッフに意見を求められたり、自分からも女の子に積極的にアプローチしたりというところから始まった感じですね。

ウチは当時からスタッフと女の子の関係がフラットで、自由な形で話をして、みんなでお店を盛り上げる風土があったんです。で、新人の女の子に効率良くプレイ内容を習得してもらう意味でも、いっそアドバイザーという職種が独立してあっても良いんじゃないかと。

もちろん本人のやる気があればですけど、先輩や私のように、元かりんとキャスト⇒アドバイザーという進路は、これからも続いていくと思います。

未経験者より経験者、男性より女性の方が良い場面がある

一番は、スタッフとの間で役割分担していければいいですよね。幾らここが壁のない環境だとは言っても、男性には言いにくいこともあります。そんな時に私達が寄り添えたらいい。

プレイマニュアルをつくるのがアドバイザーなのも、男性スタッフだとどうしても、ニュアンスのズレが生じてしまいがちなんですね。現実にお客様の前に立つのは女の子。だからこそ元キャストの私達がマニュアルをつくり、一緒にそれを見ながら実技指導するのがベストかなって。

店長以下みんながここを理解して任せてくれるのも、グループの強さであり、“らしさ”だと思います。……スタッフ業務の軽減？（笑） そうなっていたら嬉しいですね。

“その子の個性”を大事に。親切が“余計なお世話”になってない？

『キャストアドバイザー』の仕事で大事なのは、“それぞれなんだ”というのをしっかり意識することだと思います。

例えば先ほど触れたように、キャスト当時私は、あまりにもドライなのは寂しいと思っていました（笑）。だから「どう？」と聞かれるのは嬉しかった。でも女の子によっては「お店の人とは仲良くしたくない」という場合もあるんですよね。

良い悪いということではなくて、「1人で頑張っていきたい」というタイプ。こういう子に対しては、やはり踏み込み過ぎはよくありません。

こちらはフレンドリーなつもりでも、余計なお世話になっちゃう（笑）。この場合は焦らず、一旦距離を置きます。そっと見守る感じですね。

自分の“系”が全てじゃない。だからこそ“ニーズ”に応えられる

“タイプ”についての意識は、接客面のアドバイスをする際にも重要です。似た感じの子は全然良いんです。“素”で応えられるというか……。キャスト時代私は、どちらかと言うと“恋人系”の接客をする方だったので、そういう子にはハマるアドバイスをしてあげられます。

一方で“お仕事系”の子には「あ、私じゃないな」と思うこともあるんですね。こういう時はいい加減なことを言ったりせず、そっち系のスペシャリストだった先輩に振ります（笑）。「あ、それは〇〇さんに聞いた方が良いかも」って。自分も同席してお話を聞いてみたり。

何と言うか、ここで恋人系を“理想”にして押し付けちゃうのは絶対ダメなんですよね。向き不向きこそが大切で。

その子にあった形でご指名を増やしてあげるのが、私達の仕事だと思うんです。実際そんな風に1人ひとりが個性を伸ばせるからこそ、『かりんと』はたくさんのお客様のニーズに応えて来れたのかなって。

魅力があるからこそ戻った。更にどんな方が来てくれるだろう？

で、場の力っていうのかな？　最初はスタッフさんと女の子だけでスタートした『かりんと』で。みんなでお店を盛り上げていく過程で、『キャストアドバイザー』という役割も生まれて……。

なので私には、ここでは最後はみんながわかり合えるという気持ちがあります。さっき言ったフレンドリーを嫌がっちゃう子でも、ふとした瞬間から急に慕ってくれるようになったりして。「あれ？　何があったんだろう？　でも嬉しい」みたいな（笑）。

そうなった時、彼女はスタッフにもすごくにこやかに接していたりするんですね。ここは昔からスタッフさんも本当に一生懸命だから、自然に信頼関係が生まれるのかなって。恐らくこの子の接客だって、ツンケンしていた頃より（笑）、良い方向に変化していると思うんです。

そしてこの信頼は、私自身にもあります。1年半前にお誘いを受けた時、まず私が思ったのは「またあそこで働ける」ということでした。昼職夜職という言い方がありますけど、そういうことではなくて、それくらい『かりんと』って魅力的なんですよね。仕事としても職場としても。

だからこそ「ここに更にどんなスタッフさんが加わるんだろう？」って、私は今からワクワクしているんです。ご面接にいらしたら、覗きに行っちゃうかもしれません（笑）。

（インタビュー：新海亨）

取材後記

執筆者

松坂 治良

新海とのお話を伺っていて、自分の娘達との接し方を思う場面が多くありました。「間違ってなかった」と感じる点もあれば、反省する点も……。人にどう関わるのか、どう成果の手助けをするのか。親の課題と似ていると感じたインタビューでした。