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専門学校を卒業後、人事・教育担当の職に。“共に考えた”日々

もともとは別分野の専門学校を出たんですが、何と言えばいいか……。当時から人と接することが好きで、在学中に徐々に興味が移っちゃったんですね。結局就職は、人事・教育担当というところに落ち着きました。

そこで4～5年。サービス業にありがちな“人が辞めてしまう”という課題の克服が、私の仕事でした。入る時のアドバイス、働く中でのお悩みのサポート。心がけたのは、指導というより“一緒に考える”ということです。

現に私もまだ20代前半でしたからね（笑）。振り返ると教えるというより、自分もそこで人間として社会人として、成長していけたような感覚があります。

仕事の達成感を経てキャストに。“きっかけ”は……

ただ、業務は日付が変わって夜中の2時3時までということも多かったんですね。それでもやれたのは若さでしょうか（笑）。キツいと感じたことはなかったんですが、目標通り早期退職者を大幅に減らせた、各店も軌道に乗ったという時に、ふっと達成感に浸ってしまって……。

おそらく別の世界を見たい気持ちもあったんでしょうね。退職願を書き、やがて2、3か月同様の職に就いた後は、高級クラブでキャバ嬢をして、『夢見る乙女』でキャストになりました。

お金？（笑） 確かに引っ越しを考えていて、まとまったものが必要ではありました。でもむしろ、今も言った“興味”という意識の方が強かった気がします。

思えばこの“きっかけ”の部分が大きいのかもしれません。実際私は、キャストという仕事を楽しむことができました。

働く環境に穴がない。スタッフの力＋キャストを支える体制

もちろんきっかけだけでは4年も続けられませんよね（笑）。私が今日まで、どちらかと言うと“明るく前向き”という毎日を送れているのは、やはり環境も良かったからだと思います。

入店時のくわしいレクチャー、プレイや接客についての学び、困ったお客様に当たった時のケア。……ざっと思い浮かべただけでも、何かでつまずいた記憶がありません。

ここは仕組みとしてキャストを支える体制が整っているし、ふだんからスタッフさんが声を掛けてくださるんですね。穴がないというか。

勉強もたくさんさせていただいて。例えばオフィスに戻った時に、私が「すみません」と謝ったことがありました。

「最後のお客様、次はないかもしれません」
「あれ？　そうですか。こちらこそ申し訳ないです。ご迷惑掛けちゃいました？」
「いえ、そうではなくて。私の問題です。何だか退屈そうで……」
「なんだ（笑）。たぶん大丈夫。近々またお呼びが掛かりますよ」

で、近々どころか翌々日にはご指名があったりして（笑）。当時は驚きでした。初めてのお客様で、スタッフさんはお電話でのやりとりと私からの少しの情報だけで、「どうしてそんなことがわかるんだろう？」って。

「ほんとにつまらなそうだったんですよ」
「シャイな方なんでしょう。逆にすごく気に入られたんです。だってほら」

言われてその方からのアンケートを読ませていただいたら、私へのお褒めの言葉がぎっしり（笑）。「ど、どうしよう」というぐらいだったのを覚えています。

その後月日が過ぎ、私もこの辺りの“男心”はしっかり読み取れ、かつ楽しめるようになりました。男性に「かわいい」と言ったら怒られちゃうかもしれませんが、かえって燃えます（笑）。

「いつかは」。店長とのやりとりの先で、スタッフの道が開けた

経験を活かして、と自分で言うのはちょっと照れますが（笑）、現在はキャストさんの“ケアチーム”でスタッフもさせていただいています。実は以前から「いつかは」という思いもあって。

というのも、先ほど「環境が良かった」と言った通りで、スタッフ・キャスト間のコミュニケーションがウチはバツグンで。それを良いことにと言ったらアレですけど（笑）、私はしょっちゅう店長とケンカしていたんです。

「店長間違ってますよ」
「いや、今日は譲りません。間違っているのはあなたです」

一見仲が悪そうでしょう？　私もそう誤解した時期もあったんですが（笑）、反対です。“何でも言い合える仲”と言ったらいいでしょうか。私も「こうだ」と決めたら動かないところがあるんですが、店長はそれを懐深く受け止めてくれていたように思います。

印象的だったのは、お話の後で必ず「言ってくれてありがとう」と付け加えるんですね。それは店長からキャリアアップされた今でも変わりません。いつのまにか深いやりとりもするようになって……。

「そんな風に意見を言ってくれる方ばかりじゃない。さくらさんの“気づき”は、キャストさんみんなの役に立ちます」

嬉しいことに「いつかこちら側の仕事もしてくれたら」とも常々仰ってくださって。私も「機会があればぜひ」と考えていました。

なので8か月前だったかな？　“ケアチームスタッフ募集”の案内を見て、喜んで手を挙げたんです。

入店時もその後も。チームワークでキャストさんをバックアップ

仕事内容は、文字通り入店後のキャストさんの“ケア”です。具体的に言うと、まず節目の初日、3日目、5日目、10日目にメールを送ります。「いかがですか？　お困りのことはないですか？」と。

入ったばかりでは特に、店舗の方や男性には言いづらいケースもあるでしょう。それを見越して「私達のような同性のケアチームがいますよ」と、寄り添う形ですね。その後もメールやチャットでご相談を受け付けます。

当然秘密は厳守です。ご相談は新人さんだけではなく、私より歴が長いベテランの方からも頂戴しますよ。お客様って千差万別で、またキャストさんによって受け止め方も様々。“想定外に対する戸惑い”というのは、誰にでも起こりうるんです。

「これはじかにお話を聞くべき」と感じたら、チームの誰かが面談に伺うことも多々あって。ときには私がお会いすることもあります。ふだんは主に全体を見ているんですが、“臨機応変に”ですね。

『夢見る乙女』はもう二十数年の組織です。この辺りのチームワークと役割分担、更に機転は、スタッフを始めてあらためて、「さすが」と私自身が実感したところです。

悩んでいる方が1人でもいる限り、“充分”はありえない

とは言えグループには千数百人のキャストさんがいるわけで、私が送る新人さんへのメールだけでも日に十数件、ご相談を受けるのも数件という現状なんですね。

なのでいずれは、各店舗に1人ケアスタッフを常駐させる計画です。これは夢ですが、私もぜひ実現したいなと……。

確かに『夢見る乙女』のケアは、「今でも充分」と仰ってくださる方も少なくありません。でもそれに対しては私は、あえて「いいえ」と答えたいんです。

「ありがとうございます。でも悩んでいるキャストさんは、ゼロではありません。その限り、まだまだできることがあるんです」

昼職が難しいからではない。あなたがここで、必要とされている

働き甲斐は、今が人生で最高です（笑）。

新卒で手にした人事と教育のスキルを活かせて、同時にこの4年間の経験さえ誰かの役に立てられている。しかも実働8時間で定時で上がれば、現役のキャストとしてお客様のもとに伺っているわけですからね（笑）。つくづく贅沢な、ありがたいことだと感じます。

基本的には“卒業”のある業界ですから、今後を考えているキャストさんは少なくないと思うんです。8か月やってみて、そんな方々にぜひ「スタッフというセカンドキャリアもあります」というのはお伝えしておきたいですね。

誤解しないでいただきたいのは、それは「今から昼職は難しいだろう」という意味ではありません。

特にお店でランキング上位にいた方は、どのフィールドでもきっとご活躍できるはずです。私もよくわかっているつもりですが、この世界でランカーを張るのって、伊達ではないですから（笑）。“おもてなし力”は、周りが放っておかないぐらいだと思います。

“キャスト後”として私がスタッフという選択肢を口にするのは、「ああ、もったいないな」ということだけなんです……。

「あなたを待つ女の子がいます。ご自身で思っている以上に、あなたの力は、彼女達の助けになるんです」

取材後記

執筆者

松坂 治良

「悩んでいるキャストさんはゼロではない。その限り、まだできることがある」
これは伊藤さんの言葉であると同時に、『夢見る乙女』という企業の精神でもあるのでしょう。個人を通して、組織を見る思いでした。